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狭くても

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

布団からの起き上がりや立ち上がりがしにくくなってベッドが必要・・・となったり、
階段の上がり下りができなくなって、1階に生活の場を移したほうが・・・という時、
「狭いから」ということが、もうどうにも動かせない“正当な理由”となって
不自由なことを我慢したり、場合によっては自宅で暮らすこと自体をあきらめたり
ということがよくある。

先日訪問したAさん(95歳、男性、要介護2、奥さんと二人暮らし)
上記の状況にあるような人全員集めて、この暮らしぶりを見せたいっ!!
と思うお部屋だった。

この部屋のこれだけのスペースにもベッドは入るのだ!!
玄関上り框をあがれば、3畳ほどの前室。
(ここには、これでもかというぐらい物がぎっしり壁際に積み上げられている)
隣の部屋との境のガラス障子を開けると、ベッド足元までのスペースが60cmほど。
ベッドのヘッドボードから炊事場の流しまでも、間60cmほど。
ベッドのすぐ横に置いた食卓と棚の間の30cmほどが通路になる。

室内は伝い歩きのAさんは、この空間ならば、
どこにつかまっても、寄りかかってでも歩けるので、時間をかけてだけれど、
日に何回もトイレ(流し台の横が扉、ベッドからは1mほど先)は一人で行きはる。

夜寝る時だけは、奥さんは2階に上がるとのこと。
どうかすると、ベッド足元の60cmのスペースに横になっていることもあるそう。

この部屋に居たら全て間に合うし、なにより安心だから・・・とおっしゃる。
ずっと顔突き合わせているから、もちろん腹立つこともあるけど、
たいていは、奥さん一人が怒って、ぶつぶつ言うのを、
Aさんは、半分聞こえないふりをして、聞き流しているそう。
腹立っても用事があるときは解るから手伝うし、すぐチャラになる・・・と笑ってはった。

間取りやスペースなど 物理的な問題が、阻むのではない・・・ということ。
逆に言うと、本当に阻んでいる原因・・・というのは、
すぐには目に見えないだけに、難しいしコワイ・・・ともいえる。

Aさんと奥さんの生活の場は、とても居心地がよかったです。

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