聞き入れる魔法
数年前に、ご主人のご両親と同居することになり、
ニュータウンの新築二世帯住宅に住んでいるAさん。
風邪をこじらせて肺炎になり入院していたお舅さんが、この度退院することになったそう。
3か月足らずで、すっかり足腰が弱り、家の中でどうやって生活できるか・・・と
相談があった。(要介護1と認定されている)
お家拝見。
広い。
空間が広すぎる。
家を探している人からしたら、どう聞いても利点にきこえるだろう、
この“空間が広すぎる”というのが、最大の難点。
前にも(おそらく何度も)書いているが、
将来もし車いすになっても対応できるような広々廊下・・・というのが、
伝い歩きのレベルであれば、一番役に立たないことになる。
手すりをつけても両サイドが離れすぎ。
廊下だけでなく、室内の無駄(失礼)に広いこの空間が、
なんの手がかりもなく移動する場となってしまう。
福祉用具レンタルの“歩行器”が使えれば・・・この広い空間も生きるか・・・?と
思ったけれど、
実際、歩行器がうまく使える歩行能力・・・というのは、ある程度限られる。
さらに、浴室。
住宅メーカーの広告には、必ず載ってあるようなゆったり寝そべって浸かれるバスタブ。
高齢者の住宅内事故の「浴槽での溺死」、場面が浮かぶ・・・
縁起でもないけれど。
なんというか、私の目には「住みにくい家」と映った。
日頃ここらあたりの、いうなれば下町で、
狭い家の中、家具を動かしたり、この山ほどのモノ達、ちょっとは減らんか~と思いながら
あっちのタンス、こっちの食卓持って・・・トイレのここは手すりつけて・・・と
家の人と一緒にあれこれ工夫しながら進める「暮らしの改善」とは、
根本的にちがってくる。
う~ん、しかし、なんかうまく動けるように考えな・・・
使う用具の数が増える・・・というのが、あんまり自分が望まないことなので
どうしてもプランが貧乏くさくなるのですが・・・・
いやいや、「適材適所」という、シンプルな理念で、
この“空間が広い”ハイカラな新築住宅で、Aさんのお舅さんの暮らしに適した動きが
かなうように、なんとか、考えていこう。