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お風呂で立てない

坂部智子

坂部智子

テーマ:母の介護

昨晩、母が浴槽で立てなくなった。
足腰や身体機能の問題ではない。
「立つ」ということが、突然、全く分からなくなったのだ。

住宅改修で、浴槽まわりに手すりをつけてはいるが、
本人に「立つ」意識が無ければ、何の役にも立たなかった。
ほっといたら、またそのうち突然立てるかな・・・とも思ったけど、
血圧高めな母なので、のぼせると大変。

焦った。
いくら湯船の中で浮力があると言っても、
膝は曲げたままの体育座りで、
「立つよ」、「膝伸ばして~」、「ハイッツ」
いくら声をかけても、「ぽかん???」としたまま。
湯船に入って、前傾姿勢をとらせて、お尻を持とうとすると、
「やめて」「やめて」の大騒ぎ。

最終的に、足を伸ばして湯船に座らせ、
浴槽縁を持つ母の手を父が押さえ、
私がお尻を持ち上げ、テコの原理で立たせて、二人がかりで浴槽縁に座らせて
なんとか上がってこれた・・・・

疲れた。
腰、痛い。
手にあちこちひっかき傷。
時計を見ると、まあ15分ほどしか掛かってはいなかったけれど
すごい長い時間がたったように感じた。
どっと疲れた。

そして、「わからなくなる」ということの怖さを、
しばらく忘れていたその怖さを、改めて実感した。

機嫌がよかったら、和やかに笑って過ごせていたら
少しずつの、ゆるやかな進行はあっても、
なんだか、ほんわりとこのまま、ずっと過ごせるような
そんな甘い錯覚にとらわれていたのだ・・・

突きつけられる現実。
体が不自由ではなくても、意思と動きが結びつかなければ
全く動かないことと、ほとんど変わりはない。
さらに、予想外の動きをするので、危険度はより高いともいえる。

その観点からの、対応策が必要になってきたということ。

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