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つながり

坂部智子

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テーマ:母の介護

仕事を終えて家に帰ると、玄関を開けながら父が、「帰ってきたよ」と母を呼ぶ。
「誰きたん?」と奥で聞いている声がする日があれば、
いそいそというふうに出てきて、「帰ってきたん、よかったね~」と
べっちゃりくっついてくるような日もある。

帰ると、まずトイレに連れて行く。
やっぱりなかなか昼間は父がトイレ誘導はできなくて、
たいがい紙パンツ(吸収量300cc)は、びっちゃんこ。

しかし、私が帰る → 一緒にトイレに行く → 着替える → そして晩ごはん・・・
というのを、ずっと繰り返しているので、ひとつひとつが、しぜんに流れるようになってきた。
・・・気がする。

私が言うセリフが基本同じ。
トイレでパンツを替えて、履き替え用を取りに行く間、
「パンツとってくるから待っててね」
「すぐよ~すぐやからね~」と叫びながら走ってとってくる。
(トイレの棚に置いているが、母が座ると取れないので。)
(先にとっておくのをいつも忘れて、そのまま座らせてしまう・・・)

お尻を出したままで、開けっ放しのトイレから出てきてしまう日もあるけど
「わかってる」と言う日もある。

この、「わかってる」や、「しってるよ」というセリフが最近 増えた。
ちょっと下から上目づかいで、こころなしか、“にやり”という感じで。

「わかってるん~ すごいね~」と、おだてる。

「すごいね~」と「えらいね~」と「よかったね~」が母の今好きな言葉。
「一緒にいこ」というのも これは、前から大好き。

長い文章の会話が続くことは、もちろんもうずいぶん前からないけれど
こんなふうに、短い言葉でも、ちゃんと気持ちが乗っかって
やりとりができる。

母の症状が進む中で、もう「できない」コトと、諦めていたことのあれこれが、
意外にそうでもない・・・ことは、多い。多少形はかわっても。

また、母も新しいことをたくさん覚えている。

繰り返すことで“なじむ”ということ。
いつも同じで“安心”すること。
なんかそこで“うれしい”があること。(ほめられたり、調子に乗れるようななにか)

私もそう。
なじみで、安心できて、うれしかったら、とても心は落ち着く。

何も特別なことじゃない。
介護の知識や技術や そんなんでなくて、
ただ、一緒にいる時間を居心地よく過ごす。
時間の長い短いもそんなに関係なく。
それだけで、こんなに穏やかな時間が持てること。

母に教えてもらっている。
(もちろん、それでも、何日かごとに夜中寝ずに起きだすのがひどい時は、
キ~~となって、勘弁してくれと思う・・・ヒドイ娘ですが・・・)


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