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おっくう

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

本日訪問したAさん(60代女性、要介護2)、
室内移動用に4点杖(足部分が4脚に分かれている杖)をレンタルされている。
廊下や、台所、居間の壁には、住宅改修工事で手すりが取り付けられている。
和室の寝室内のみ、手すりを取り付ける箇所がなく、4点杖を頼りに移動している。

その寝室内で杖をついてみると、あちこちで突然杖が傾く。
足元も、そこかしこで、ふわんふわんする・・・・・
「畳がもうフカフカやねん~~」と、Aさん。
「危ないですね~」と言うと、「どこがフカフカか、だいたい場所わかってる」・・・とのこと。

「畳を替えなアカンけど、部屋の荷物やら全部片づけて、のけて・・・いうたらえらいことや。」
「息子には、もうお母ちゃんが死んだらあとキレイにし~って、言うてるねん」と笑いはる。
(同居の独身の息子さんあり)

環境を整えるということ。
在宅で、安全に安心して暮らせるために、環境を整える手段や方法はたくさんある。
もちろん、いくら介護保険を使っても、神戸市の助成制度などが使える場合でも
お金はかかる。
そのことがネックになる場合・・・というのは、多い。
しかし、それ以上に、二の足を踏む原因というのは、
上述の、「~部屋の荷物やら全部片づけて、のけて・・・いうたらえらいことや・・・・」
ということ。
”おっくう”なのである。

某番組「~~アフター」で、住み慣れた家を 何から何まですっからかんにして、
美しく、暮らしやすく整えられていく様を見るたび、
二の足を踏んでいる方々の顔が浮かぶ。
“すっからかん”にすることの、ハードルの高さ、道のりの遠さを思う。

そして、今流行りの「終活」・・・というのも、いまいちぴんとこない。
部分的には、「そう、そこを考えるのは大事」とも思うけど、
なんというか、もっと今 生きている間の、ゆるやかな(あるいは急な)下り坂を
どう下っていくか・・・
そこに至るまで、その道中にもぶちあたる、様々な葛藤や、いろんな問題を
どう掘り下げて、どう向き合って、どう折り合いをつけていくか・・・・
その人にとって、大事にしたいこと、ゆずれないこと、優先順位をつけていくこと。
建前と本音、自分自身の本当の“想い”を見つけること。伝えること。
そのサポートが本当に大事やと、必要やと思う。

Aさんが、フカフカ畳で転ばないように、安心して歩けるようになる・・・というのは、
簡単なことではない。
このままでは。

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