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うれしいトイレ

坂部智子

坂部智子

テーマ:母の介護

最近の母の一番の変化。
トイレにいこか~と、手を引いてトイレに向かうと
イソイソといった足取りで付いて来て
トイレに入ると、にっこり笑う。

びっくりした。
なんで~???と思った。

気づいたこと。
トイレに座った母の目の前に ひざをついて私が座ると
ホントにすぐ顔の前に私の顔がくる。
日常のどの瞬間よりも、近い距離。

ウォシュレットをする時、いつも腰を浮かせてしまい、
背中がびちゃびちゃになったり、便座のふたが濡れたりするので
「きゅ~っ」と言いながら 体を密着させて 母の体を押さえている。
この「きゅ~っ」が、けっこうお気に入りになっている。

トイレは、お尻ふいたり、いろいろ脱いだり穿いたりするややこしいイヤなとこ
だったのが、
すぐ目の前で笑ってたり、きゅ~っとくっついてきたりする
なんか うれしはずかしな、居心地のいいとこ
という感じになってきたのかも。

私自身の気持ちというか、
関わる時の想いが 変わったかな。

もちろん お尻がぐちゃぐちゃで、どうしようもない時は、
「げ~っ また うんこまみれ・・・」と 一瞬は思う。

けれど、なんというか、
笑って言える。
「ばっちいから、早くきれいにしよな~」
「さあっ トイレ行くよ~」
で、文頭の状態になる。

何を言っているか よりも
こっちがどんな状態で、言っているか。

そのまま素直に、鏡のように、母の態度が決まる。

本には、そう書いてある。
頭では、わかっていた。
それでも、イラついて暴れる母を、“私のせい”とは思えなくて
「くそばばぁ~」と言い返したり いっぱいしてきた。

勝手な解釈だけど、
イイトコどりで、
母がごきげんな時だけ、“鏡”の意識を持つようにした。
それが増えると、素直にうれしいから。

決して、心の底からの天使にはなれないけれど、
「笑わせたら勝ち」という、妙な芸人魂(?)には、火がついて
最近、父も競って、笑いを取りに走る。

怒らせても、「ちっ、すべったか・・・」という感じ。
とにかく、まじめに、全力で笑いに持っていく。

なんかの視聴者と一緒で、求めるレベルがどんどん上がるので
昨日上手くいった手が またうけるとは 限らない。

これは、なかなか やる気にさせる。

こんな毎日。
最近の母は、トイレがお気に入り。

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