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心の声

坂部智子

坂部智子

テーマ:母の介護


夜中、母が今度は「救急車が・・救急車が・・・」と騒ぎ出した。
がばっと起きだして すごい勢いでふすまを次々開けて ずんずん部屋の中を歩き回る。
何度目かの大きな声で呼んだ「お母さんっっ!」の声で立ち止まる。
「まだ夜中やから寝とこ・・」、「トイレ行っとく?」と声をかけながら
一緒に部屋まで戻った。
「救急車におねーちゃんが乗って・・呼んでくれたん・・・そうなん・・・」
「・・・・」ずっとぶつぶつ言いっぱなし。

「ここで、寝ころんで・・・はい、枕はここ・・・寒い?・・・暑い?・・・」
と聞いて布団をかけた。

突然パッと目を見開いた。
「私かって 自分のことは自分でしたいねんっ!!!」と
しっかりした声で叫んだ。

「えっ・・・」と固まった。
次の瞬間は、もう目が泳いで また「救急車の音でおねーちゃんが・・・」と、えんえん・・・・

心臓がドキドキした。
隣に横になって 布団を頭からかぶった。
今の声、今の言葉が 刺さる・・・

100の言葉が意味不明でも、その中の一つが真実な心の声。

最近、感情的に落ち着いていると思える時がわりと多かった。
(この前の担当者会議でもそう伝えた。)
「ありがとう」「ごめんね」という言葉を よく口にするようになって、
父も笑って、うれしそうにしていた。

感情が落ち着くことで 残っている機能がちゃんと働いている・・・と
思いこんだ妙な安心感と、
“感謝してもらっている”と思いこめた自分の傲慢・・・

本当に悪くなっている。
心が動いて、つながっての「ありがとう」や「ごめんね」とは
やっぱりちがうんやと なんか思えた。

極論かもしれないけれど、
人として育って、生きてきた中での本能として出る言葉。
今、一人デ出来ナイコトヲ オギナッテイルノデアロウ誰カニ言ウベキ言葉 として
本能から出ている・・・と なんか思えた。

冷めているのではなくて、
ひねくれているのともちがう。
「ありがとう」がうれしいのはそのままで、
それでも、
100の言葉と 1つの言葉を ちゃんと見極められるように。
100の言葉にもちゃんと意味があるんやろう 
その意味は、悲しいけれどほとんどわからない。
だからせめて 1つの言葉を ちゃんと聴きたい。

これから先、いくつ心の声を聴けるのか、あるのかは、
全くわからないけれど。

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