医の力
早いもので、3週間が経ちました。
担当していた患者様が亡くなって3週間です。
12月初旬に天国へ旅立ちになられました。
つじがみクリニック・私との関係は約4か月という短い時間の共有でした。
進行した食道がんのため、有効な治療方法がなく自宅での療養生活を選択されました。
天気のいい日には、朝から布引の滝まで散歩に行かれており、趣味の山歩きも続けて
おられました。食事が全く喉を通らないため、毎晩点滴で栄養と水分をとるような
生活になっていました。少なくとも日中だけは、お好きなように過ごしてもらうように
準備するのが私の役目でした。
『今日は滝まで行ってきたよ。明日はどうかなあ。天気よければなあ。』と昼間の
活動を話されて、私はお聞きするのがとても楽しみでした。夜に点滴の準備ができて、
お休みになるときにはベッドから片手を挙げて、『また来てな』という合図がうれし
かったものです。もうあの姿、あの片手を挙げた合図の姿は見られません。
決して、最期まで弱音を吐かず、家族にも心配かけまいと振る舞っておられました。
呼吸が苦しくなってきており、今晩はきついだろうなと思って、私は自宅に帰らずに
クリニックで過ごすことにしました。『今晩は帰らずに、クリニックにいるので何か
あったらすぐに連絡をくださいね。すぐに駆けつけますので』と伝えてクリニックへ
もどりました。片手を挙げる力もなく、私を見て頷いてくれましたね。
あの一言で伝わっていたんですね。分かっておられたんですね、最期になるだろうって。
翌朝に永眠されているのを確認しました。
私自身、いろいろと勉強になりました。人の死にざまは、本当、生きざまです。
うまく書けませんが、患者様からはいろいろと教えていただきました。人生の先輩から教わりました。
ありがとうございました。安らかにお眠りください。
辻上周治