命を守る家

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:住宅

自然災害の多い日本ですから、生活する家が安全安心な空間でないと困ります。

今回は「命を守る家」というテーマで書いていきます。

過去に書いたコラムと重複する部分もありますが、大事なことですから、是非、家を建てるときの参考にしてください。


自然災害というと・・・まず地震でしょうか


自然災害と建築物、というとまず最初に考えるのは地震に対する「耐震性」でしょうか。

地震に対する備えという意味では、2025年の建築法改正によって2階建以上の建築物すべて構造計算が義務付けられました。

これによって新築住宅の耐震性については、ほぼ安心できる状況になったのではないかと思います。

・・・ただ新築住宅は安全といっても、木造住宅の場合は柱や梁の劣化によって安全性が損なわれる場合がありますので、その点注意して下さい。

木造腐食
特に今の木造住宅は柱や梁が隠れていますので、いつの間にか致命的な劣化が起こっている可能性もあります。

築年数の経過した木造住宅にお住まいの方は、特に御注意ください。

自然災害は地震だけじゃありません


ハウスメーカーのカタログやホームページをみると、「耐震性が高い」「地震にも安心」のような言葉ばかりが目につきます。

しかし、命を脅かす自然災害は地震だけではありません。

日本の自然災害には台風、洪水、土石流、竜巻、津波などいろいろあります。

台風の暴風雨で不安な夜を過ごしたことがある、大雨が降るたびに洪水による土石流が心配になる、こういう人も多いでしょう。

強風、突風できしみ音のする家、「安全な場所に避難してください」という報道、地震と違ってじわじわとくるこのような自然災害は、家の中にいても不安感でいっぱいになります。

こういう災害時にも安心できる家を作りたい。そういう人は多いではないでしょうか。

自然災害から命を守る家=外部からの衝撃に強い建物


地震に対する備えだけでなくこれらの自然災害から命を守る家とは、どのような家になるのでしょうか。

地震と、台風・洪水・土石流・竜巻・津波などの自然災害との大きな違い、それは外部からの衝撃への備えです。

基本的に住宅設計における構造安全性での想定では「外部からの衝撃」は考慮されていません。

たとえば住宅の構造計算において通常の強風については計算していますが、竜巻のような突風は想定外です。

もちろん強風でモノが飛んでくることも想定していませんので、モノがぶつかれば外壁には大穴があくでしょう。

土石流がきたら外壁はあっという間に破壊され、家の中に流れ込みます。

家の中に土砂が流れ込めば命の危険に直面しますが、「耐震性」ではそのような備えにはなりません。

土石流
地震に対する備えだけでなくこれらの自然災害から命を守る家とは、どのような家になるのか。

このような自然災害に対して命を守るためには、柱や梁が丈夫なだけでなく全体が強固な外壁で作られている家が必要になってくると思います。


「安全な建物に避難してください」安全な建物って?


下の図は、神戸市の「がけ条令」のものです。

がけ条令
基本的に神戸市では崖の近くに家を建てることはできません。

例外は鉄筋コンクリート構造で家を建てることです。

万が一、家の近くのガケが崩れた場合、普通の住宅では流れ込む土石流で壁が破壊され、場合によっては家全体が崩壊します。

しかし鉄筋コンクリートで家を建てた場合、ほとんどの土石流は外壁で食い止められますし、家が破壊する可能性もほぼ、ありません。

このようなことがわかっているからこそ、神戸市のがけ条令から「鉄筋コンクリート構造」が例外的に除外されているのです。

土石流に強い建物
写真は大成建設ハウジング、平成30年7月豪雨のものです。

これくらいの土砂崩れでも、鉄筋コンクリート住宅はしっかりと残っています。

これが普通の木造住宅だったら・・・家が壊れるだけでなく、命が危ないでしょう。


よく災害報道では「安全な建物に避難してください」という呼びかけがありますが、鉄筋コンクリートの住宅はこの「安全な建物」というのに該当すると思います。

鉄筋コンクリートでしっかりした家を建てれば、避難所ではなくても、住んでいる家が「安全な建物」になるのです。


台風の夜を不安な気持ちで過ごさないために


台風のとき、突風で軋む家に不安な夜を過ごした人もいるかもしれません。
最近は「家の中でも安全な場所に避難してください」という呼びかけもありますので、自宅でも2階に避難したという人もいるでしょう。

家を建てるのであれば、是非、台風、豪雨のときもそういう不安のない家をつくって欲しいと思います。

自然災害の多い日本だからこそ、住宅は命を守る場所であることが一番重要になるのではないでしょうか。

RC住宅

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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士、コンクリート診断士、マンション管理士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

浅井知彦プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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