バルコニーを使いこなすための設計手法

浅井知彦

浅井知彦

テーマ:住宅

マンションの場合、超高層でない限り、2階以上の部屋のほぼすべてにバルコニーが付いています。

このバルコニーは、何のためにあるのでしょうか?

設計上の主たる目的は避難路の確保のため。更にエアコンの室外機確保のためかもしれません。

住んで居る人の目線で考えれば、洗濯物や布団を干す場所ですね。

人によっては、物置きとして普段使わないものを置いておくスペースにしているかもしれません。


バルコニーは陽当たりも風通しも良い場所であり、立地によっては眺望も良い、魅力的なスペースです。

ホームセンターでウッドデッキや人工芝を買ってきて、リビングの延長として使おうとしている人もいるでしょう。

しかし、マンションのバルコニーは通常幅2m程度です。

このスペースに、避難路とエアコン室外機置き場という機能を持たせるのですから、あとは洗濯物を干すくらい。長時間、人が過ごす場所ではありません。

ルーフバルコニーでもない限り、ここを積極的に利用するのは難しいのが現状です。


マンションと違って、戸建て住宅の場合、バルコニーの配置は比較的自由です。

この場所を避難路にする必要もありません。

しかし、配置が自由であるからこそ、何のために使うバルコニーなのか、その目的をはっきりさせる必要があるのではないかと思います。


バルコニーは、エアコンの室外機を置く場所として使うこともあるでしょう。

2階あるいは3階にお風呂がある場合、給湯器を付けるためのスペースになることもあるかもしれません。

こういった「設備機器設置用に必要なバルコニー」であれば、普段人が出入りする必要もないのですから、幅は50cmくらいでも充分。手すりも必要ないでしょう。

陽当たりや隣地からの視線を気にする必要もありませんので、設置する場所も方位も選びません。

室外機置き場

反対に、住んで居る人が使いたいバルコニーであれば、陽当たりや視線、方位などを重視します。

積極的に使いたいバルコニーであれば、使用時の動線にも配慮します。

リビングと一体的に利用出来るスペースなら、利用頻度も高くなるでしょう。


住宅の立地が道路からの視線が気になるところなら、2階あるいは3階のバルコニーは1階の庭よりも使いやすいスペースになるかもしれません。

鉄筋コンクリート構造でしたら、水を使ってもほとんど問題ないので、ここでガーデニングを楽しむことも出来ます。

バルコニー

主な用途が「洗濯物干し場」なら、インナーバルコニーという選択肢もあるかもしれません。

これなら雨の日、夜間でも安心です。

洗濯物が外から見えることが嫌な場合にも、おすすめです。


建て売り住宅やハウスメーカーの規格プランなどの多くは、「なんとなく」バルコニーが付けられています。

「住む人が決まっていない」住宅では、どうしても「だれにでも、何にでも使えそう」な設計になってしまいます。


しかし自分が住むための住宅を建てるのでしたら、是非、積極的に目的や機能を考えてバルコニーを設置してください。

「何のために使うスペースなのか」ということを考えて設計すれば、バルコニーは「使える空間」になってくれると思います。

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浅井知彦
専門家

浅井知彦(一級建築士、コンクリート診断士、マンション管理士)

レヴォントリ株式会社 一級建築士事務所

素材メーカーで研究してきた技術者としての経験を生かし、鉄筋コンクリート造の住宅を提案。快適な住空間に仕上げるため、デザインありきではなく機能性重視の家づくりを行っています。

浅井知彦プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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