パパに子育ての世界観を知ってもらおう!
ママの心は限界。生きる気力が湧いてこない...。
子どもがいろんなところで怒られる。失敗する。それは子どもの自尊心を傷つけるだけでなく、ママの心を傷つけることにもなります。
私の育児が失敗したせいだろうか。私は良い母親になれなかった…。周りのママたちはあんなにキラキラ輝いているのに…。発達障害児のママは子どもの失敗経験を通してママとしての挫折体験を積み、親としての自信を大きく失っていきます。
発達障害の原因は先天的なもので、母親の養育のせいではありません。しかし発達障害児の問題行動は母の育児のせいにされることが多く、そのために心を壊してしまう母親が少なくありません。ではなぜ発達障害児の問題行動は母親のせいになるのでしょうか?
発達障害児の問題行動が母親のせいになる理由3つ
一つは目「育児=母親の仕事」という考えがまだまだ深く根ざしていることがあります。母性神話があるぐらい母には子どもへの無条件の愛があると信じられています。そのために母親の愛が足りない→子どもの問題行動と短絡的に結び付けられてしまいがちです。
二つ目は発達障害の概念自体が日本では新しく、やっと言葉が浸透してきたところで本当のことを理解している人は少ないということです。発達障害のことを正確に理解していれば子どもの困った行動は母親のせいではないことを理解できます。しかし今は「発達障害=多動、人の気持ちがわからない、勉強ができない」など、限定的な情報だけが独り歩きしているような気がします。発達障害を知らない人は恐らく発達障害たるものに触れる機会はほとんどないと思います。多くの人が見えている部分だけで物事を捉えてしまうのは色々な場面で見られることです。
三つ目は、何か問題が起きたときに人はその原因探しをやめられないことです。ひとは原因がわかるとスッキリするので問題の原因探しをやめられません。そもそも発達障害のメカニズムはわかっていないので問題行動のなぜ?の根本は誰にもわかりません。しかし原因がわからないままではモヤモヤするので、子どもの問題行動の原因を母親に求めることで周囲が"なるほど"と思いたいのです。そしてその手っ取り速い方法で誰もがその問題から目を背けることができます。母親に責任を負わせることで自分はその責任から逃れられるのですね。だから家族でさえ母親を非難するという悲しいことが起きてしまうのです。
「子どもの問題行動を母親のせいにしたい大人の心理」とそのうえでママに知っておいてほしいこと
もう少し詳しくみていきましょう。
①大人も逃れられない母性神話
実は大人もお母さんが大好きです。40歳になっても50歳になってもお母さんが大好き。経済的に自立していてもです。そしてお母さんには未来永劫無償の愛を自分に注いでほしいと大人が思っている。だから大人自身が母性神話から逃れられないのです。母親からの愛がなくなって困るのは大人。だから母性神話はなくせないのです。
無償の愛がほしいのはもらう側
ただ、自分が無償の愛を与える側になると話が変わります。特に育てにくい子どもを育てている場合、無償の愛があるはずだ、なければならないと思っているのに、子どもを愛せないとなると母親は自分自身をひどく責めてしまいます。愛は双方向に生まれるもので片思いでは成立しません。例えば暴力をふるう、暴言を吐く、親切心が一切ないなど、多くの人はそのような人を無条件に愛するのは非常に難しいと思います。そしてそれは相手が子どもの場合でも同じです。何をやっても意思疎通が難しい、暴力行為などの問題行動があればたとえ子どもあっても離れたくなるのが自然な反応ではないでしょうか。
ところが子どもの場合、問題行動をとる子どもこそ親の愛情を必要としています。本当は見捨てられるのが怖い、外の世界に出るのは不安だと思っているところに親から見放されるというのは子どもにとって最悪の事態です。だから私は非常に困難ではあるけれど、親は専門家の力を借りて子どもの困難な状態を少しでも改善できるよう今起きている問題に向き合ってほしいと思っています。家庭で困りごとがある場合は、ぜひスクールカウンセラー、家族問題専門の心理士、行政などに相談してほしいと思います。行き場がない方はまちるどにお越しください。私たちは学習専門教室ですができる限りのサポートをしていきます。
②発達障害という未知のもの
先ほど発達障害の概念はまだ新しいというお話をしました。40代、50代の親にとっては、自分が子どものころはクラスにこんな子いたよなぁ程度の発達の子どもでも今は排除、異分子化される時代です。少しでもクラスを乱す子→親のしつけがなっていない、宿題をやってこない→親が面倒を見ていない、と子どものちょっとした問題行動も親の子育てのせいとされてしまいます。いやいや、本当は親も困っているんですけどね、家で。言うことを聞かない、癇癪ばかり起こす、宿題なんてもってのほか。だから実は親もお手上げなのです。前回夫と妻の行き違いの話をしましたが、(参照:発達障害児を育てるママの悲痛な叫びー誰も助けてくれない!ーhttps://mbp-japan.com/hyogo/machild/column/5120783/)ここでは学校と親の間で同じ構図が出来上がっています。どちらも困っているのでボールがあっちに行ったりこっちに行ったりするだけで何も解決できないのです。
学校の先生は発達障害児教育の専門家ではない
学校の先生は健常児の教育の専門家であって、発達障害児の教育の専門家ではありません。もちろんたくさん勉強をしてこられて障害児教育にとても精通している先生もたくさんいらっしゃいますが、まだ一般的ではありません。親が求めているレベルは実は小児神経科医や児童精神科医、言語聴覚士や臨床心理士などのとても高度な知識と経験を有する方たちのアドバイスです。ただここに一つ落とし穴があり、親はある程度勉強や知識の蓄えがないと誰がどんな情報を持っているのかがわかりません。そのため見当違いの専門家に自分の欲しい答えを求めることがあります。そして当然ながら学校の先生は医師ではありません。なので親がほしいものは学校の外にあると思っていただけたらいいと思います。学校外の専門家から集めた知識、情報を学校に還元し、先生たちと協力しながら子どもの成長を見守っていけたらベストです。そのときも学校の先生に高圧的な態度を取るのではなく、お願いすることに申し訳なさを感じるということでもなく、対等な関係の上で協力しあい、子どもの発達を信じて待つという姿勢を取ってほしいと思います。
③原因がどこにもないイラ立ち
家庭の問題は誰も悪くないのに起こるというのが悲しい現実です。みんな一生懸命頑張っているのに歯車が噛み合わない。ママは言うまでもなく一生懸命頑張っています。ただそんなママを擁護してくれる人は少ないです。
子どもの問題行動の責任を親が全部取ってくれれば、教育機関も療育機関もそれにこしたことはありません。街行く人にとっても自分に被害がなければ他の家庭がどうであれ関係ありません。家庭の問題は家庭内だけにとどめておいてほしいというのが大方の本音でしょう。そのため周囲を巻き込みやすい幼少期のADHD児、小学校高学年以降のASD児は周囲から批判を受けやすく、母親はその矢面に立たされることになります。本当は関わっている大人全員で子どもをより良い方向に導いていければいいのですが、実際は発達障害のことをよく知らない大人が関わると物事があまり良い方向に進みません。そうなると事情をよく把握できない人たちは自分の心を軽くするためにすべての責任を母親におしつけたくなる心理が働きます。「母親の愛情が足りない」「もっとそばにいてあげて」「小さい時から保育所に預けるから」などの言葉が典型例です。愛着の問題にすると母子関係以外のところから口をはさめなくなります。それで周囲の大人は責任を逃れられ、事件は一件落着といったところでしょうか。
ママのことを本当に理解してくれる人
しかしながら、本当に状況をしっかり見てくれている教員や支援者に出会うと「お母さん、子どもとの距離が近い、もっと離れて」と言われることがあります。これが本当のところです。母親も子どものことが心配なあまり子どものすべてが気になって、あれやこれやと世話をやいてしまう。問題が起きる前に先手を打とうとしてすべてを監視してしまう。これを見抜いてくれる支援者に出会われた方はとても幸運だと思います。そして、本当に支援してくれる方に子どもを安心して預けられると、親の心は安らぎ、子どもも親元を離れて少しずつ成長していきます。この道に乗れるまでが一つの大きな山です。ここまでたどり着けたらひとまず安心できる状況になるでしょう。
さて、ここまで母親が責められる理由とママに知っておいてほしいことについて書いてきましたが、最後にママの心を回復させる方法についてです。
ママの心の回復に一番効く薬は子どもが成功体験を積んでいくことです。子どもの成功体験がママの成功体験につながり、ママの自信を回復させます。良い成績を取る、運動神経を伸ばす、クラスのリーダーになる、そういったことではありません。今日は朝登校時刻に起きられた、校長先生の話を最後まで聞けた、すべての給食を一口ずつ食べられた、そんな親からすると些細なことでも、子どもにとっては誇らしく素晴らしい成功体験です。子どもは全力で頑張っています。学校から帰ってきたらその日の話をぜひゆっくり聞いてあげてほしいと思います。夜寝る前の10分でもいいです。子どもは話を聞いてもらうことで自分の気持ちを整理し安心するので、批判をせずに話を聞いてあげてください。その中で子どものできた!という話を聞くこと、日常の中でできることが増えていくことを目の当たりにすることで、親も自信を取り戻していくことができます。
子どもの成長が親の心を回復させる鍵です。