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似ているようで違う素麺と冷や麦

2018年9月16日

テーマ:素麺の豆知識

コラムカテゴリ:くらし

見た目はよく似ている素麺と冷や麦。どちらも夏に食べたい冷たい食べ物ですね。どちらもよく似ていますが、素麺と冷や麦の違いをご存じですか? 

素麺と冷や麦は似ているようで、実はまったく違う由来をもっています。

素麺と冷や麦は太さの違いで区別できる

素麺と冷や麦の大きな違いは太さです。日本農林規格のJASでは乾麺の分類の基準があるのですが、機械製麺の場合に直径が1.3mm未満のものを「素麺」、直径1.3mm~1.7mm未満のものを「冷や麦」としています。ちなみに、直径1.7mm以上の麺は「うどん」、麺の幅が4.5mm以上で厚さが2mm未満のものは「きしめん」としています。

つまり、機械製麺のそうめんと冷や麦は1.3mmを境にそれよりも細い場合は素麺、それよりも太い場合は冷や麦、冷や麦より太いものはうどんと分けられるのです。

手延べ麺の場合は太さだけが基準ではありません。日本農林規格では、手延べ素麺の基準は「小麦粉を原料に、食塩と水等を加えて練り合わせた後に、食用の植物油を塗り、よりをかけながら引き延ばして丸棒状の麺として乾燥させたもの。製麺の工程で熟成が行われているもの」です。

しかし、以前の基準では手延べ素麺は直径1.3mm未満の丸棒状のもの、手延べ冷や麦は直径1.3mm以上1.7mm未満の丸棒状のもの、手延べうどんは直径1.7mm以上の丸棒状のものと分類されていましたが、2004年に手延べそうめん類という項目がなくなり「手延べ干しめん」となりました。

それからは直径1.7mm未満に関しては、「手延べ素麺」とも「手延べひやむぎ」ともどちらの記載を行ってもよいとされました。手延べの麺については、そうめんと冷や麦の区別があいまいになったのです。

その理由は「半田そうめん」にありました。「半田そうめん」は徳島県産で200年もの歴史があるのですが、ほかのそうめんよりも太めだったからです。機械製麺と同じように太さで分類すると「半田そうめん」は冷や麦になってしまいますが、歴史ある半田そうめんを冷や麦にはできないとして、このような分類になったのです。

素麺と冷や麦の製法の違いとは

素麺と冷や麦の原料はどちらも小麦粉と塩と水です。原料を練って作ることは同じなのですが、製法は違います。

素麺は一部機械を使うこともありますが、手延べで作られることがほとんどです。生地を練ってから植物性の油を塗ってよりをかけて引き延ばし、乾燥と熟成を行います。

一方、冷や麦は手打ち麺でうどんと同じ製法です。素麺の手延べとは違って生地を練った後に薄く伸ばして包丁で切ります。手で切ることから冷や麦は「切り麦」とも呼ばれます。温かくして食べる場合は「熱麦(あつむぎ)」と呼びました。

素麺と冷や麦の特徴の違いとは

素麺はのど越しのよさやコシの強さが好まれます。ゆでる時間が短いため、暑い夏にさっと調理してすぐに食べられることから、夏の代表的な食べ物になりました。

冷や麦は薄くのばして切るので断面が四角く、丸棒状の素麺とは違った食感で、コシが強くなめらかです。

そして、麺の中にピンクや緑などの色付きの麺が入っています。それは素麺と冷や麦の太さの基準が決められていなかった頃に、製造者が違いをわかりやすくするために冷や麦にのみ色付きの麺を入れて区別していた説があります。最近は、素麺にも色付き麺が入って販売されているところもあります。

素麺と冷や麦のそれぞれの歴史について

素麺の歴史は、7世紀頃に中国から伝わった「索餅」が起源と言われています。小麦と米粉を練り、縄のようにねじったもので、鎌倉時代から室町時代に中国から麺を手延べする方法が伝来し、「索麺(そうめん)」になりました。

冷や麦は、素麺と同様に「索餅」が起源のようです。元々は中国の切り麺の製法と同じで、室町時代に練り上げられた小麦を切断して作られたうどんを細く切ったものを「切り麦」と呼んでいました。

切り麦を冷やして食べる際に「冷や麦」と呼んでいたことが由来で、季節的に夏に食べられていました。

室町時代の学者・一条兼良が書いた往復書簡の形式にまとめた往来物「尺素往来(せきそおうらい)」には、「索麺は熱蒸(あつむし)、截麺(きりむぎ)は冷濯(ひやしあらい)」と記されています。
この意味は、当時素麺は熱いものを食べる場合が多かった一方、截麺は冷やして食べていたということです。

日記には截麺以外に、切麦、切麺、冷麺、冷麦、切冷麺などが書かれていました。冷や麦と同じ時期に登場したうどんとは別に形の違う切り麺で、素麺とは別に書かれていることから、「素麺に近い細切り麺は冷や麦」という区別があったようです。うどんは冬場に温めて食べていたようです。

冷や麦は冷たくのど越しを楽しむためにだんだんと細くなり、うどんは温かさを保つためにどんどん太くなっていったという話も伝わっています。

このように室町時代の人も素麺と冷や麦をそれぞれに楽しんでいたのです。

この記事を書いたプロ

安藤康典

そうめん作りのプロ

安藤康典(株式会社安藤商店)

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