66【持ち家か賃貸か】動画15分「インフレ時の賃貸のリスク」
家を探す前に知っておく不動産業界のルール
みなさんは「家を買おうかな」と思ったらどうやって探されますか?
一般的には
①ネットで物件を探す
②気になる物件を見つけたら掲載している不動産会社に問い合わせる
③現地を案内してもらう
④気に入ったら購入申込書(買い付け)を提出
⑤重要事項説明を受ける
⑥売買契約を交わす
⑦引き渡し
の流れでしょう。
何の問題も発生しなければこれで構いません。しかし、少し問題が発生するとイヤな気持ちを抱えたまま、本意ではないのにその契約を進めなくてはいけなくなることすらあります。
不動産業界のルールをあらかじめ知っておくことで楽しく主体的に家探しができるようにしておきましょう。交渉すべきポイントもご紹介しておきます。
1.ファーストコンタクトが大事
ネットで物件を見つけてもその不動産業者への連絡は慎重に考えましょう。何らかの連絡を取った時点であなたは「その物件に関してはその不動産会社の見込み客」になります。業界の暗黙のルールです。例えば、その業者が不誠実だったり、頼りなかったとしても他の業者に切り替えがしにくくなります。
対処方法としては、“物件でなく不動産会社から物件を探す”こともあらかじめ検討してみましょう。信頼できる取引先や知人などから紹介してもらうか、別のやり取りの中で信頼できる業者を決めておくことです。
2.不動産業界の仕組み
(1)仲介業者か売主か
当然ですが、物件は売主から買います。売主には「その物件所有不動産業者以外かその物件所有不動産業者か」の2種類です。所有不動産業者以外が売主の場合は別の不動産会社が「仲介」となり、所有不動産業者が売主の場合を「売主」と呼びます。
例えば、不動産会社Aが所有している物件を不動産会社Bを介して買うと「仲介」、直接Aに連絡して買うと「売主」となります。違いは仲介手数料の有無です。同じ物件を買うのにBを介すると仲介手数料が発生しますが、直接Aから買うと仲介手数料はゼロです。
ケースバイケースになりますがどちらのメリットが大きいか考えましょう。
敢えてBを介するメリットは次の通りです。
①Bが信頼できる業者で、Aと直接交渉するのがイヤだ、怖い
②Bを介したほうが仲介手数料よりも大きく値引き交渉ができそう
(2)仲介手数料「両手と片手」
仲介手数料は買主と売主の両方が支払います。
一般的なケースでは売主と買主のそれぞれに仲介業者がついています。成約するとそれぞれから仲介手数料を受け取ります。これが「片手」と呼ばれるカタチです。
それに対して、仲介業者は1社だけで売主と買主の両方の面倒をみるケースがあります。この場合は両方から仲介手数料を受領し、「両手」と呼ばれるおいしい取引です。特に大手は自社以外からの購入の問い合わせは取り合わない「囲い込み」を当然だと考えています。大手S社で勤務した大学の友人も新卒でそう教育されて当然だと思っていたそうです。売主にとっても機会損失になります。他社からの問い合わせにきちんと対応しているかチェックすることも大事でしょう。
では、(1)の①の所有不動産業者のケースだとどうなるでしょうか?
Aから直接買うと買主もAも仲介手数料はゼロです。しかし、Bが介在するとBは買主からも売主からも仲介手数料を受領することになります。
仮に3,000万円の物件だと仲介手数料は1,056,000円【(3,000万円x3%+6万円)x消費税】)。それが売主と買主合わせて2,112,000円が入ることになります。
少しは買主に還元してほしいと考えるのは当然ではないでしょうか。
また、最近では「ローン手数料無料!!」をうたう業者もいますが他の手数料が高額になっているケースがありますので注意が必要です。
(3)値段交渉できるもの
①物件価格
不動産は値段交渉可能です。物件価格はある程度の相場感に売主の事情や気分をプラスして決まります。値引き交渉が全くできない物件もありますが、まずは値引き交渉が可能か確認しましょう。
②仲介手数料
あくまで上限が決まっているだけです。そこから値引きするのは各社の任意です。極端に言えば無料でもOKです。しかし、上限額を当然に請求してきます。物件本体で値段交渉ができない場合などはこちらを攻めるのも一手です。
大手不動産会社は融通がききません。この点においては小さな不動産会社のほうが対応してくれるでしょう。
③登記費用
所有権を移転する登記などは司法書士という専門家に依頼します。登記費用は「手数料」と「税金」に分かれています。税金はどの司法書士に頼んでも同じですが手数料は大きく違います。住宅ローンを利用する場合などは金融機関お抱えの司法書士を指定されるケースがほとんどです。この場合はだいたい割高です。登記は誰がやっても結果は同じ仕事です。不動産会社やFPなどに紹介してもらって相見積もりをしてみましょう。どうしても金融機関指定の司法書士を使わなくてはいけない場合はガシガシと値段交渉をしましょう。
3.トラブルの相談先を知っておく
例えば、国の機関だと
不動産適正取引推進機構 0570-021-030
兵庫県なら
市区町村役場の無料市民相談室
兵庫県さわやか県民相談 078-360-8511
兵庫住まいサポートセンター 078-360-2536
こんな感じです。
お住まいの都道府県・市区町村の無料弁護士相談サービスや宅建協会関連などからあらかじめ探しておきましょう。
不動産適正取引推進機構の消費者向けの冊子「不動産売買の手引き」などにも記載がありますので検索してみてください。
4.ケーススタディ
先日、相談に来られた方のケースです。
自宅マンション購入を検討、ネットで物件を見つけて大手不動産会社Mに行きました。2番手だったんですが「1番手が辞退して買えることになったが不安になった」とのこと。内覧はしていますが資料はチラシと新築時のパンフだけで1週間後には重説&契約。
別の不動産業者が売主でMは仲介、値段交渉は不可。しかも、「何度もキャンセル不可」と念押しされている。
あまりにも強引な売り方、進め方です。
そこで
①その物件の詳細資料をもらいホントに欲しいのか再度検討すること
②売主物件なので仲介手数料を含め総額での値段交渉を再度してみること
③新築時のパンフにところどころ「非分譲」の部屋の記載がありました。
地権者だと推測されるので住民の質を確認すること
④まだ買い付けを入れただけでキャンセルは可能、そもそも契約していない
をアドバイス、困ったときの相談窓口も紹介しました。
すると、管理規約で年に一回ペットの写真提出なんてものが出てきたり、実は1番手は50万値段交渉ができていたことなどが発覚。あきれます。
その中で「では、いくらなら買うのか」と迫ってきたので大幅な指値をしました。最終的には「ホントはキャンセルできないんですよ」と捨て台詞を吐かれつつ破談となりました。
一生に一回だけ不動産を買う人も多く、大手不動産会社なら安心と考えてる人も多いです。
しかし、実態は大手ほど自社ルールをすべてだと思い込んでいたり、社内だけを見がちだったりもします。
いろんな注意ポイントが詰まった事例だと思います。