本は端折らずに一気に読む方が良い?

辻村豊

辻村豊

テーマ:研究開発のヒント

皆様方、お世話になっております。日々雑感を綴っております。

技術系の方のバイブル?

とある会社さんの支援をすることに関係して、『技術系の方のバイブル?』を探すことになりました。せっかくなので、いろいろな方々にも助言を求めました。そんな中、とある教授様から『私が技術系の方のバイブルとして勧めたい本は、大変に古い本で恐縮ですが、この『知的生産の技術』です。読まれたことがありましょうか。数年前に第100刷りが出た超ロング&ベストセラーです。1969年の出版ですが、私にとっては、読むたびに何か新しい発見があります。』というコメントをもらいました。

(知的生産の技術)
https://www.iwanami.co.jp/book/b267410.html

(知的生産の技術(立ち読み用))
https://smooooth9-site-one.ssl-link.jp/banyokagakukenkyusho230710/uploads/blog/48/6a5c2c7e0fa8948.pdf

難なく入手

全く持って、お恥ずかしい限りではございますが、そんな超ロング&ベストセラーを知りませんでした。そこで、早速探すことにしました。
まず地元の書店、3軒ほど行きましたが、さすがに岩波新書というお堅い?本は1冊も置いていませんでした。しからば、姫路に行けば何とかなるのでは?と思いました。たまたま、先々週に姫路商工会議所でセミナーがあり、そこへ行く前に姫路駅前の地域最大級のジュンク堂へ寄りました。普通に棚に置いてあり、難なく入手できました。
その後、セミナーを受講したのですが、登壇した姫路商工会議所の齋木会頭から『知的生産の技術』の話が出た時は驚きました。偶然とはいえ、全くのタイムリーなことでした。
(齋木俊治郎氏)
https://www.kobe-np.co.jp/data/saiki_shunjirou/

全く古さを感じなかった。

早速読み始めました。お堅い岩波新書×1969年=化石?という先入観もあったのですが、吹っ飛びました。
いきなり最初の方で、60年程前に既に情報化社会の到来を予見する記述がありました。

P12
情報産業の時代
こういう生産活動を業務とする人たちが、今日ではひじょうにたくさんになってきている。研究者はもちろんのこと、報道関係、出版、教育、設計、経営、一般事務の領域にいたるまで、かんがえることによって生産活動に参加しているひとの数は、おびただしいものである。情報の生産、処理、伝達、返還などの仕事をする産業をすべてまとめて、情報産業とよぶことができるが、その情報産業こそは、工業の時代につづくつぎの時代の、もっとも主要な産業となるだろうと、わたしはかんがえている。そして、その情報産業のなかでは、とくに知的生産による部分が、ひじょうにたいせつであることはいうまでもない。

本は一気によむ?

更に読み進めると、正に目から鱗が落ちるようなことが次から次へと出て来ました。その中で、『本は一気によむ』という箇所がありました。

P118
一気によむ
本というものは、一気によみあげるのがよいか、こつこつと少しずつよんでいくのがよいか。こういうことも、読書の技術としてかんがえなければならないことのひとつであろう。わたしの友人のなかでは、作家の小松左京氏は、おどろくべき精力的な読書家であるが、かれは、なにかをよみだしたら、もうとまらないのだそうだ。あるきながらでも、食事しながらでも、よみつづけて、一気にしまいまでいってしまうという。そうかとおもうと、なかにはすこしずつ、一日数ページずつよみという方式のひともある。
これは本にもよるし、よみ手の時間的条件にもよることだが、ごく一般論としていえば、一気によんだほうが理解という点では確実さがたかい。すこしずつ、こつこつ読んだ本は、しばしばまるで内容の理解ができていないことがある。

P127
読書においてだいじなのは、著者の思想を正確に理解するとともに、それによって自分の思想を開発し、育成することなのだ。わたしは、読書というものは、電流の感応現象のようなものだと思っている。ひとつのコイルに電流をながすと、もうひとつのほうのコイルに、感応電流という、まったく別の電流が発生する。両者は、直接にはどこもつながっていないのである。たいせつなのは、はじめにながす電流ではなくて、あとの感応電流のほうなのだ。これをうまくとりだすことによって、モーターははじめて回転しはじめるのである。

言われてみれば、本も論文もあまり間を空けずに一気に読んだ方が印象に残っているように思いました。
この『知的生産の技術』の中には明記されていませんでしたが、『一気によむ』の中には『最初から最後まで、端折らずに読む』という意味も含まれていると思います。これは非常に重要なことと考えます。そのことについては、下記『AIは人間を殺さない、飼い殺す―全体主義という心地よい檻』という本に上手く書いてありましたので、ご紹介申し上げます。

(AIは人間を殺さない、飼い殺す―全体主義という心地よい檻)
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784584126226

P19
当時、ビデオデッキの上位機種にはすでに倍速再生機能はついていた。ハリウッドの娯楽映画やくだらないアニメなら二倍速で観ようが三倍速で観ようが大差はないが、「名画」を倍速で観るのは正気の沙汰ではない。
当たり前だ。映画には、作り手が意図した「間」がある。タルコフスキーの長回しを倍速で観てもいみがない。タルコフスキーは、映画のリズムとは「時を刻むこと」だと言った・受け手は作り手が意図したリズムに身をゆだねる。芸術は情報の単純な集積ではない。リズムがなければ成立しない。倍速にすれば、リズムは死ぬ。

P24
書店に行けば、『世界文学100冊を新書一冊で読む』『マンガでわかるマルクス』といった類の本がならんでいる。YouTubeを開けば、「10分でわかる世界史」「5分で学ぶ量子力学」といった動画が溢れている。いわゆる「ファスト教養」だ。Flierのような本の要約サービスも会員数を伸ばしている。
手っ取り早く賢くなりたいビジネスマンは、これらの「インスタント食品」を貪り食う。しかし、きちんと本を読んだことがある人なら、要約本は害しかないことを知っている。特に古典と呼ばれるものは漸くできない。要約できないからこそ古典なのだ。それはすぐには「消化」できない。一番大切なのはそこに含まれる表面に出て来ないものである。だからAIは原理的に古典を要約することはできない。
読書とは著者の思考のプロセスを追体験し、その森に迷い込むことである。迷いながら自分の足で歩くことにより、知識は初めて腑に落ちる。「わかった気になること」と「わかること」は違う。

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辻村豊
専門家

辻村豊(技術コンサルタント)

合同会社 播羊化学研究所

原料や素材の研究開発、製造工程、PRなどに関するお困りごとをサポート致します。専用の実験室で実証実験や試作も可能です。技術系社員の育成、技術承継のご相談なども承ります。博士(工学、1997年大阪大学)

辻村豊プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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