意外と古い『情報化社会』

辻村豊

辻村豊

テーマ:研究開発のヒント

皆様方、お世話になっております。日々雑感を綴っております。

知的生産の技術

前回、『知的生産の技術』という書籍のことを申し上げました。
そして、書籍というものは、最初から最後まで『なるべく一気呵成に読む方が良いのでは?』というお話でした。

(本は端折らずに一気に読む方が良い?)
https://mbp-japan.com/hyogo/banyohkagaku/column/5229535/

そこで、今回は『知的生産の技術』から気になる部分を拾い読みして行きます。
もちろん、あくまでも個人の感想であり、上記のように『書籍というものは最初から最後までしっかりと読むことに意義がある』ことに変わりはありません。

情報化社会はいつ出現したのか?

 「知的生産の技術』の最初の方に、『情報』関する記述があります。この『情報』という言葉はいつから普及したのでしょうか?
その前に、広辞苑で『情報』を引いてみます。
【情報】
①あることがらについてのしらせ。「極秘―」
②判断を下したり行動を起したりするために必要な、種々の媒体を介しての知識。「―が不足している」
とあります。現在、私たちが情報と言えば②の方が多いような気がします。
そして、情報化社会について

1968年11月18日付朝刊に「情報化社会への長期計画確立を」と題した社説が掲載された。朝日新聞において情報化社会に関する社説が掲載されたのは、これが最初となる。

という記述があり、既に1960年代後半には『情報化社会』という言葉が出現していたことになります。意外と古いです。
(「情報化社会への視座」の萌芽、伊達康博、白山社会学研究 第15号 2008)
https://toyo.repo.nii.ac.jp/record/3480/files/hakusanshakaigaku15_051-061_OCR.pdf
そして、この『知的生産の技術』でも、書籍自体は1969年の発行ですが、『まえがき』のところに、

1965年の4月から、岩波書店で発行している雑誌『図書』に、「知的生産の技術について」という題で、連載記事をかきはじめた。

とありますので、更に遡り、1960年代の中頃には『情報』という言葉が意識されていたことがわかります。

知的生産とは

ここからは、『知的生産の技術』からの引用です。

P9
ここで知的生産とよんでいるのは、人間の知的活動が、なにかあたらしい情報の生産にむけられているような場合である、とかんがえてよいだろう。この場合、情報というのは、なんでもよい。知恵、思想、かんがえ、報道、叙述、そのほか、じゅうぶんひろく解釈しておいてよい。つまり、かんたんにいえば、知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら―情報―を、ひとにわかるかたちで提出することなのだ、くらいにかんがえておけばよいだろう。この場合、知的生産という概念は、一方では知的活動以外のものによる生産の概念に対立し、他方では知的な消費という概念に対立するものとなる。
人間の生産活動には、いろいろの種類のものがある。たとえば、肉体労働によって物質やエネルギーを生産する。ところが、知的活動というものは、もしなにかを生産しているとすれば、それはいつも情報を生産しているのである。その情報が、物質やエネルギーの生産に役だつものであるにせよ、とにかく第一次的に知的活動の結果として生産されるのは、情報である。

情報産業の時代

P12
こういう生産活動を業務とする人たちが、今日ではひじょうにたくさんになってきている。研究者はもちろんのこと、報道関係、出版、教育、設計、経営、一般事務の領域にいたるまで、かんがえることによって生産活動に参加しているひとの数は、おびただしいものである。情報の生産、処理、伝達、変換などの仕事をする産業をすべてまとめて、情報産業とよぶことができるが、その情報産業こそは、工業の時代につづくつぎの時代の、もっとも主要な産業となるだろうと、わたしはかんがえている。そして、その情報産業のなかでは、とくに知的生産による部分が、ひじょうにたいせつであることはいうまでもない。

情報についての定義は広辞苑以上に具体的であり、『情報産業が最も主要な産業となる』と語る先見の明には、ただただ感心するばかりです。

実は読みやすくてわかりやすい

そして、今や巷ではAPI、RPA、ゼロトラスト、RFI/RFP、IoT、KPI、セグメント、ブランディング、B2B、MA、CX、PPC、リターゲティング、SEOなどなど、正直、どの言葉も意味がわからない、あるいは意味を調べてもスグに忘れてしまいます。展示会のブースでも上記の言葉を連発されたり、セミナーの講師もこのような暗号ばかりを発する人も珍しくありません。しかしながら、実はこれらの『難解な?用語』も一つ一つを見ていけば、『日本語で』簡潔に説明できることがわかりました。例えば、『ブランディング』は『認知度向上』となるだけです。
『知的生産の技術』、元ネタが1965年~ですので、60年ほど前の『情報』です。しかしながら、今尚色あせることなく、読みやすく、わかりやすいです。その理由は上記のような、『わざわざ難解にして混乱を誘う用語が一切ない』というところもあるのだろうと思います。『知的生産』という言葉も、著者の梅棹忠夫先生の造語でありながら、非常にわかりやすく、心に響くものです。超ロングセラー、ベストセラーになっている理由はこのあたりにもあるのだろうと考えます。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

辻村豊
専門家

辻村豊(技術コンサルタント)

合同会社 播羊化学研究所

原料や素材の研究開発、製造工程、PRなどに関するお困りごとをサポート致します。専用の実験室で実証実験や試作も可能です。技術系社員の育成、技術承継のご相談なども承ります。博士(工学、1997年大阪大学)

辻村豊プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

豊富な化学技術知識で研究開発および製造をサポートするプロ

辻村豊プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼