為替ヘッジで意外なマイナスになる可能性があります
お客さまにお伝えしたいこと
- 毎月分配型ファンドの歴史は預金に代わる「利回り」を獲得できる商品を追求してきた歴史
- 投資信託の分配金について以下の特徴が十分に知られていない
- ①分配金として元本の一部が払い戻されることがある
- ②分配金を再投資すると税金がかかるので非効率
毎月分配型ファンドは、現在でも一定割合で保有されており、引き続き人気があります。毎月分配型ファンドは一時期ブームになり、2011年8月時点で株式投資信託に占める割合は67.5%(*1)になっていました。
その後、データがある2013年以降でオレンジの折れ線による残高を見てみると、2014年をピークに減少していますが、2024年末でも純資産総額は22.2兆円あります。
また、緑色の資金増減額の推移を見ても、2022年以降は資金流入に転じています。
毎月分配型ファンドの歴史を紐解いていくと、預金ペイオフが解禁されたことを受けて、2000年代に1000万円を超える預金の受け皿として、銀行主体に販売が拡大されることから始まりました。
2000年代は「グロソブ」と呼ばれたグローバルソブリンオープンや「グロイン」と呼ばれたピクテ・グローバル・インカム株式ファンド、財産3分法ファンドなどのような伝統的な資産である先進国債券、高配当株式、バランスファンドなどが中心でした。それがリーマンショックで主要資産が 大幅に下落すると、値下がりにより資金流出が拡大、債券の金利低下・円高もあってその後は伸び悩むことになりました。
2010年代になると伝統的資産よりも利回りの高いハイイールド債と呼ばれる格付けの低い債券や新興国債券、為替取引によって為替ヘッジプレミアムなどの収益を上乗せさせる通貨選択型などの商品が人気となりました。また、2010年代半ばには利回りの高い米国REITが人気になっています。
それが2017年以降に運用実態より高い分配金を出す毎月分配型ファンドが出現した結果、多くの毎月分配型ファンドが分配金を引き下げ、大量の資金流出を機に毎月分配型ファンドは失速する歴史を歩んでいます。
振り返ってみると、毎月分配型ファンドの歴史とは、2000年代以降、低金利において預金に代わる利回りを獲得できる商品を追求してきた歴史だったと言えます。
毎月分配型ファンドは投資信託を保有している方全体で見ると約3割で保有されています。その魅力について、一般社団法人投資信託協会のアンケートでは、「分配金を受け取ることで安心できる」「毎月利益を確定したい」とする割合が約5割から6割あって、分配金を受け取ることで儲けているというイメージがあるのではないでしょうか?
毎月受け取っている分配金は運用から得られた利益というイメージがあるかと思いますが、実際には投資元本の一部からも支払われていることがあります。
これは日本の投資信託の仕組みが大きく影響しています。日本の投資信託における分配制度の骨格は、1960年代には確立されていました。ポイントは、投資信託の制度が誕生した際に、預金と同様の機能を持てるように設計されて、元本保証でない代わりに預金金利を上回る分配金を安定して出せる仕組みになっていた点です。
つまり、最初から元本部分から分配することが可能な仕組みだったということです。
実は欧米では元本から分配金を出すことはできないのですが、日本では元本からも分配金を出すことができるのです
世間では投資信託の分配金は株式の配当と同様に認識されていると思います。そのため、分配金を受け取ることで儲けているとお考えになるかもしれません。
株式の配当は配当方針に基づいて決定しますが基本は企業の業績に依存しています。そのため、高い配当金を継続して出せる企業は優れた企業であると言えます。
これに対して投資信託の分配金は定められた分配方針に従い、欧米とは異なり決算期で収益がない場合でも分配原資がある限りは元本からでも支払うことが可能な仕組みとなるので、高い分配金を出せる投資信託は必ずしも優れた投資信託であるとは言えません。
そのため、実際に保有している毎月分配型ファンドで分配が継続していても、タコ足配当になっていることがあるので注意が必要です。
次に毎月分配型ファンドで注意しないといけない点は、分配金を再投資すると税金がかかる点です。毎月分配型ファンドを保有されているお客様でも再投資しているので問題ないとお考えになっている方もいらっしゃいますが、控除される税金の分だけ再投資枠が少なくなり、投資の効率が悪くなります。
今回取り上げた分配金に関する特徴はまだ知られていません。先ほどの一般社団法人投資信託協会のアンケートで投資信託の分配金について、先ほど指摘した「分配金として元本の一部が払い戻されることがある」ということを知っている方は約4割弱、分配金が支払われると投資信託の基準価額が下がるのですが、その点を知っていた方は約3割、分配金の取り扱いを再投資としても税金がかかることについては約2割とまだ十分に知られていないのが実情です。
皆さまに投資信託の分配金の特徴について知って頂ければと思います。

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