継続保有で時間と相場を味方につけよう
お客さまにお伝えしたいこと
- 信託財産留保額は「ペナルティなので払わない方が良い」は誤解で、知らず知らずの内に他人の設定解約に伴うコストを負担させられている可能性がある。
- カストディコストは目論見書等ではわかりにくく、新興国や純資産の小さい海外資産の投資信託はカストディーコストの負担に注意が必要
投資信託には詳しい仕組みがあまり知られていないコストがございます。今回は信託財産留保額とカストディーコストの二つについてご紹介したいと思います。
一つ目は信託財産留保額についてです。
信託財産留保額は、一般的に中途解約に対するペナルティー的なものとして認識されている方が多いかと思います。
投資信託に関する金融商品取引法上の自主規制機関である 一般社団法人投資信託協会から出されている「なるほど!投資信託説明書ガイド」にも中途解約のペナルティー的な意味合いで一般的に換金時に負担し、ファンドに留保されますと説明されています。
でも、誤解されている点が二つございます。
解約だけで発生する費用だと思われていますが、実際には 購入したり解約したりすることに伴うファンド内の売買で生じたコストに対する費用です。
そのため、ご購入される場合にも設定されている可能性があるということです。
運用に際しては、コストを考慮して抑えた方が良いので、この信託財産留保額も無い方が良いと思うかもしれません。
但し、信託財産留保額は売買コストを立て替えることが本来の目的です。
お客様が投資信託を購入したり売却したりすると、投資信託の中でそれに伴う売買が生じて売買手数料などのコストが必ず発生します。
ところが、信託財産留保額が無いと売買に伴うコストはファンドから支払われることになります。そのため、知らず知らずに投資信託を持っている途中で余計なコストを負担している可能性があります。
確かに、自分自身で購入したり売却したりする際に支払われないのは、売買のコストを負担しないということでメリットになります。
でも、自分自身にとってメリットがあることは他人でも同様です。他の人が投資信託を購入したり売却したりする場合には、その手数料は自分が保有しているファンドが負担しています。そのため、自分自身は何もしていないのに、結果として売買に対するコストを負担させられているということになっているのです。
信託財産留保額の設定が無いファンドで純資産総額に対して設定額や解約額の割合が高い場合、売買コストの負担が大きく、知らず知らずに他人の購入や売却のコストを負担させられている可能性があります。
二つ目はカストディーコストについてです。
海外の株式や債券などに投資する場合、証券自体は日本国内に持ち込むのではなく、投資した国のカストディアンと呼ばれる金融機関に現地での保管管理をするサービスを依頼します。カストディーコストは、海外のカストディアンに業務を委託することに対する手数料です。
投資信託では目論見書の手続き・手数料欄にファンドにかかる諸費用について記載をされています。購入時の手数料、運用中の運用管理費用、いわゆる信託報酬です。それにファンドにかかる税金等などがあります。
実は、カストディーコストはこれらの説明には含まれていない場合(*)があるのです。運用報告書で詳しく見ないと、カストディーコストの中身は分かりにくく 、隠れているコストであると言えます。
(*)運用報告書(全体版)1万口当たりの費用明細の「その他費用」に含まれます。ファンドによって記載されている場合もありますので、あらかじめ投資信託説明書(交付目論見書)をご確認ください。
カストディーコストには主に①証券を保管するのに対して支払う保管費用と②保管する銘柄の売買に対して支払う取引費用の2種類があります。
保管費用は残高に対する料率でコストを負担します。
一方で、取引費用はその月に売買した銘柄数に対してコストを負担する仕組みです。
カストディーコストでの留意点は以下の三点です。
端的な例では、1件ごとの取引費用は米国などの先進国と新興国とで10倍以上の差がある場合があります
保管費用は残高に対して一定の料率なのでそれほど問題にはならないのですが、取引費用は売買した銘柄数で発生することです。どんなに少額の取引でも1件ごとにコストを負担するので、純資産の小さいファンドで売買銘柄の数が多くなるとボディブローのように効いてきます。
一見すると証券の保管とは関係なさそうな為替取引にも取引費用が発生します。
主に一点目と二点目の影響がポイントとなるので具体的な例で解説をしていきます。
アメリカのS&P500の銘柄をすべて購入した場合と新興国で最もカストディーコストの高い国の一つであるベトナムの株価指数であるMSCIベトナムの全銘柄購入した場合で比較すると、銘柄数は半分未満なのに取引費用は10倍以上かかる可能性があります。
(備考)実際の料率や単価はカストディアンとの契約により異なります。
カストディーコストは目論見書等ではわかりにくい見えないコストです。投資する国で料率や単価が異なり、新興国はコストが割高であることやカストディーコストのうち、取引費用はどんなに少額でも売買1件ごとにコストが発生します。
そのため、海外の株式や債券に投資する投資信託は、純資産が小さいとカストディーコストによる負担に注意する必要があります。
今回は投資信託で皆さまにあまり知られていない信託財産留保額とカストディーコストについて解説しました。
この投資コラムを通じて投資信託の仕組みを少しでも知って頂ければと思います。
【関連動画】投資信託の隠れたコストとは? ~信託財産留保額とカストディーコストについて解説します~