「証明されていない」 ~言葉のトリック~
現在、弁護士会の広報を担当しているので、広報について考える機会が多くなっています。
そんな中で、一つの悩みにぶつかっています。
それは、「わかってもらおう」とすると、わかりやすくするために正確性を欠くことになることです。
法律用語は難しい
ただでさえ、法律関係の問題は難解です。
まず法律用語が分かりにくい。
「瑕疵(かし)」という言葉を聞いても普通は「菓子」としか思えないでしょう。
また、「善意」が「知らないこと」という意味で使われていることなど、普通の人はわからないでしょう。
「被告」とは民事事件の相手方のことで、刑事事件で犯罪を犯したと疑われて裁判にかけられる人は「被告人」と言わなければ不正確なのですが、マスメディアも正しい用語は使ってくれません。
法的な解決は、法的三段論法を使います。
ある事実があったとき、その事実を法律にあてはめれば、法律によってこういう効果が生じるというのが、法的三段論法です。
ですが、これも普通の人には、何を言っているのかあまりピンとこないのではないでしょうか。
伝え方を工夫すると
こうしたわかりにくい問題をわかりやすく伝えるには、法律用語を使わない、説明の仕方を工夫するなどの伝え方の工夫が必要です。
ですが、そうなると、わかりやすさのためにどこかで正確な説明や細かい説明を省略していることになります。
そのため、わかりやすく伝えたつもりが、実は正確に伝えていないことになるのではないかと悩んでしまうわけです。
わかりやすさと正確性のバランス
わかりやすさは大切です。
わかってもらえなければ、伝えていないのと同じだからです。
法律問題を正確に言葉にしたところで、相手に理解されなければ自己満足でしかないからです。
ですが、わかりやすさを追求した結果、元の法律問題の本質から脱線した形で相手に伝わってしまったら本末転倒です。
あくまでも結論部分がきちんと相手に伝わることが、わかりやすさの限界だと思います。
このように、情報を発信する側、伝える側としては、物事の本質から逸脱しない範囲で、相手に理解してもらえるようなわかりやすい伝達方法を行うことが、広報で最も大切なことなのではないかと思います。
自省を込めて、まだまだ弁護士や弁護士会のことは世の中に知られていないと思いますので、今後もわかりやすく、しかし本質からは決して逸脱しないようにしながら、弁護士や弁護士会のことを伝えていけるようにしていきたいと思います。