医療事故調査制度の利用
みなさんは、弁護士が診療録を読めるものだと思いますか?
診療録を読める弁護士はほとんどいない
答えはもちろん「ほとんど読めない」です。
弁護士といっても、医学部に在籍したわけではありませんから、ほとんどの弁護士はそう簡単に診療録を読みとることはできません。
ただ、もちろん例外もあります。医師の資格を持ちつつ、弁護士になった人です。全国にはこういう弁護士が何人かいますので、この人たちはまさに「診療録が読める弁護士」だろうと思います。
医師と同レベルは無理ですが
ただ、医師資格がなければ、診療録の内容が全然わからないかというと、そういうことでもありません。
最近は電子カルテ化が進んでおり、英語表記が少なくなっていますので、英語翻訳の必要がほとんどなければ、最低限の基礎医学の知識を身につけている弁護士であれば、ある程度までは診療録の内容を読み取ることができると思います。
私も、おそらく平均的な弁護士よりは確実に、診療録の内容を読みとることができると思います。
これは、理科系(生物など)の知識を一定水準以上持っていることと、興味があったので基礎医学の知識を学ぶことができたということが大きな理由です。
基本知識や興味を持って、弁護士になってからも医療事件や交通事故事件、その他の事件で医療記録を読むたびに勉強し続けてきたので、医療記録のうちどこをどう着目して見ていくべきかということも、かなりできるようになったと思います。
私が所属している札幌医療事故問題研究会では、定期的に研修を行っており、医師にもアドバイザーとして協力してもらうことがあるので、こうした環境も非常に役に立っています。
診療録を使う事件は多い
実際には、医療事件に限らず、交通事故の事件など、弁護士は診療録を検討しなければならない事件に数多く遭遇します。
例えば、交通事故で大きな後遺症が残ってしまったのに、その後遺症の程度を保険会社に争われてしまっている場合などです。
そういう場合、多くの弁護士は、事件に遭遇した時に、その事件の対応に必要な範囲で都度勉強したり、医師に協力を求めて対応したりしているのが実情だと思います。
もちろん、それで十分に対応できる事件もあります。
ですが、常に医師に協力を求められるような環境にあるわけではありません。
やはり、診療録を読みとることが必要な事件では、診療録が読みとれるに越したことはありません。
医療事件はもちろんのこと、交通事故の事件でも、医学的な部分が大きな争点となっている場合には、少しでも診療録が読めそうな弁護士、医学的な知識がありそうな弁護士を探したほうがよいと思います。