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「年収の壁」とは「働いたのに手取りが減る」「増えない」現象
「年収の壁」とは、一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が急増し、手取り額が逆に減ってしまったり、働きづらくなる状況をいいます。
つまり、ある一定の年収ラインを超えると、・税金(所得税・住民税)がかかり始めたり、・社会保険料(健康保険・年金)を自分で負担しなければならなくなったりして、結果的に「働いたのに手取り額が減る/ほとんど増えない」という現象が起きます。
これが「年収の壁」と呼ばれるものです。
手取り額が大幅に減るのは、税制の壁ではなく社会保険に関する壁です。
◆主な「壁」の一覧とその概要
| 壁の名称 | 金額目安 | 内容 | 関係する制度 |
| 106万円の壁 | 週20時間・月額88,000円以上 | 一定規模の企業で働くと、健康保険・厚生年金に加入し、保険料負担が発生 | 社会保険(勤務先の被用者保険) |
| 110万円の壁 | 年収110万円超 | 多くの自治体で住民税が課税される基準(市町村で差異あり) | 住民税 |
| 123万円の壁 | 年収123万円超 | 扶養親族の適用からはずれる。配偶者控除を満額受けられるのはここまで。 | 所得税 |
| 130万円の壁 | 年収130万円以上 | 社会保険の「扶養」から外れ、自分で健康保険と年金に加入・保険料負担が発生。 | 社会保険(国保・国年 or 社保) |
| 150万円の壁 | 年収150万円超 | 特定親族特別控除が段階的に減額され始める。 | 所得税 |
| 160万円の壁 | 年収160万円超 | 所得税の課税基準。配偶者特別控除が段階的に減額され始める。 | 所得税 |
| 180万円の壁 | 年収180万円以上 | 60歳以上または障害者は、「130万円の壁」が「180万円の壁」に | 社会保険(国保・国年 or 社保) |
| 188万円の壁 | 年収188万円超 | 特定親族特別控除の適用が完全になくなる。 | 所得税 |
| 201万円の壁 | 年収201.6万円以上 | 配偶者特別控除の適用が完全になくなる。 | 所得税 |
◆税制に関する「年収の壁」
◎「年収110万円の壁」
・住民税の課税が始まる基準ライン。
・つまり、「年収が約110万円を超えると、住民税がかかり始める」という目安です。
・正確な非課税限度額は市町村によって異なるため、「年収103万円~110万円の間」がグレーンゾーン。
・扶養親族等で所得税が非課税であっても、住民税の課税が発生する場合があります。
・実際に住民税が非課税になるか否かは、住んでいる市町村のルールや所得内容、家族構成、世帯収入等により判断・算定されます。
◎「年収123万円の壁」
・配偶者控除や扶養控除の適用判定の基準で、これまでの「年収103万円超」から「123万円超」に引き上げられました。
・つまり、税法上の扶養親族か否かは、基礎控除58万円+給与所得控除65万円を合わせた年収123万円を超えるか否かで判定されるということです。
・でも、配偶者については、123万円を超えても「配偶者特別控除」が受けられます。
・また、大学生の年代にあたる19歳以上23歳未満の子についても、特定扶養控除63万円は受けられせんが、代わって「特定親族特別控除」が受けられます。
◎「年収150万円の壁」「年収188万円の壁」
・新設された「特定親族特別控除」は、子等の年収が「123万円超150万円以下」ならば満額の63万円控除ですが、150万円を超えると、年5万円増につき、段階的減額され、188万円超になれば控除額0円・適用なしになります。
◎「年収160万円の壁」「年収201.6万円の壁」
・本人の年収が160万円を超えると、所得税がかかります。
・これまでの「103万円の壁」が、今回の改正により「160万円の壁」になりました。
・「配偶者特別控除」は、配偶者の年収が「123万円超160万円以下」ならば満額ですが、160万円を超えると、段階的減額され、201.6万円になれば適用なしなります。
◆社会保険に関する「年収の壁」
◎「年収106万円の壁」
・主にパートタイム・アルバイトなどの短時間労働者向けの言葉であり、一定規模の会社で所定の要件を満たすと、扶養から外れて自身で社会保険に加入しなければならなくなる年収のボーダーライン。
・加入義務が発生すると、社会保険(健康保険料・厚生年金保険)を負担することになり、以前より手取り額が大幅に減ることになります。
・負担額は、住んでいる都道府県により異なりますが、概ね収入額の15%程度です。
#加入義務が発生する条件
・短時間労働者であっても、「106万円の壁」を超えると、次の条件を満たしていると、社会保険の加入が義務づけられます。
1.企業規模:従業員(厚生年金保険の被保険者数)が51人以上の企業で働く。
2.労働時間:週の所定労働時間が20時間以上。
3.賃金要件:月額が88,000円以上。
4.勤務期間:2ヶ月を超える雇用の見込みがある。
5.非学生要件:学生ではない。
#加入するメリット
・確かに「106万円の壁」を超えて、社会保険に加入すると保険料の支払い義務が生じ、手取り額は減りますので、デメリットを感じますが、メリットもあります。
・社会保険に加入して働くメリット
1.手厚い保障が受けられる
2.老後に受け取る年金が増える
3.病気や怪我の場合に手当がもらえる
・具体的には、老齢厚生年金の受給で年金の受取り額が増えると共に、障害厚生年金や遺族厚生年金の保障も加味され、将来に対する備えとしてもメリットがあります。
・また、ケガや病気で会社を休んだ時に「傷病手当金」、産前産後休業期間中に「出産手当金」を受け取ることができます。
#「106万円の壁」が撤廃へ
・令和7年5月16日に国会において、年金制度の改正法案が可決されました。
・これにより、いわゆる「106万円の壁」が撤廃されることになり、パート等の短時間労働の働き方も大きく変わろうとしております。
・つまり、週20時間以上働けば、社会保険に加入することになります。
・この改正の背景には、今後も深刻になっていく労働力不足と最低賃金の上昇です。
・改正の内容
1.賃金要件 「月額88,000円以上」の賃金要件は撤廃されます。
施行される日:令和7年6月20日から3年以内に政令で定める日。
(全国の最低賃金が1,016円以上なることを見極めて決定)
2.企業規模 働く企業の規模に関わらず加入することになります。
企業規模は10年をかけて段階的に縮小・撤廃されます。
令和9年10月1日 従業員36人以上
11年10月1日 従業員21人以上
14年10月1日 従業員11人以上
17年10月1日 企業規模要件の完全撤廃
#保険料負担の支援策
・この改正により、「週20時間以上」働けば、勤務先の規模に関わらず社会保険に加入することになりますので、従業員にとっては手取り額が減り、事業所にとっては保険料負担が増えることになります。
・そこで政府は、支援策を予定しております。
・従業員:年収156万円未満ならば事業所側が多く保険料の負担可能。
具体的には、労使折半となっている保険料について、年収156万円未満(月収13万円未満)の場合は、事業所側がより多くの保険料を負担できる仕組みを導入する予定。
この支援で保険料が軽減されても、将来の年金額が減ることはありません。
・事業所側が多く支払った保険料については、その全額を支援する予定です。
「キャリアアップ助成金」に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されました。
◎「年収130万円の壁」
・これは、社会保険の扶養から外れるボーラーラインで、年収130万円を超えてしまうと 全ての人(60歳以上および障害者を除く)が自身での社会保険等の加入が義務付けられ、保険料の負担が生じることとなります。
・つまり、年収が130万円(月収10.8万円以上)を超えると、配偶者や親の社会保険の扶養から外れ、自分自身で、勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しない場合は、国民健康保険と国民年金に加入することになり、結果的に手取り額が減る場合があるということです。
・年収130万円未満であれば、会社員の配偶者の被扶養者(第3号被保険者)として、社会保険料を払わなくても健康保険に加入ができ、国民年金にも無料で加入できます(正確には自己負担がないまま国民年金の保険料納付済期間・加入期間が継続します)。
・ですので、年収130万円を超え、扶養から外れ、国民年金に加入した場合は第1号被保険者になり、将来受け取る年金の額は変わらないのに保険料の負担が増えるというデメリットしかなく、「働き止め」「働き控え」が起こり、人手不足につながっております。
#第2号被保険者になれる条件
・第2号被保険者(厚生年金加入者)になれるかどうかは、主に勤務先の状況と従業員本人の労働条件によって決まります。
・具体的な条件は、下記の通り。
1.勤務先が厚生年金の適用事業所であること
原則として。法人事業所(株式会社・合同会社・医療法人等)や、常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所は、厚生年金への加入が「義務」です。
2.本人が厚生年金に加入対象となる働き方をしていること
イ)一般的な加入条件(フルタイム等)
正社員等でフルタイム勤務、あるいは正社員の概ね4分の3以上の勤務。
例えば、週30時間以上の勤務であること。
ロ)短時間労働者(パート・アルバイト)
以下の全てを満たすと加入対象です。
①所定労働時間が週20時間以上
②月収が88,000円以上(年収106万円以上):今後は撤廃の予定
③勤務期間が2ヶ月を超える見込み
④学生でないこと
⑤従業員数が51人以上:この「従業員数要件」は段階的に撤廃予定
#「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の差異
| 項目 | 第1号(国民年金) | 第2号(厚生年金) |
|---|---|---|
| 保 険 料 | 毎月定額(約20,000円弱)を全額自己負担 | 収入額に応じて決まるが、半分は会社負担 |
| 将来の年金額 | 国民年金(基礎年金)のみ | 基礎年金+厚生年金(報酬比例) |
| 健康保険 | 国保(全額自己負担) | 社保(会社と折半) |
| 傷病手当等 | なし | あり(手当金制度等) |
・第2号被保険者になれば、手取り額が減っても将来の保障や手当は充実します。



