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令和7年度 税制改正のポイント【かんたん解説】

岡﨑正毅

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テーマ:税金

年収160万円までなら所得税がかからない!

これまで「年収103万円までは所得税がかからない」と言われてきましたが、令和7年からは、年収160万円まで所得税がかからないように制度が変わります。
令和7年度税制改正による「所得税に関する年収の壁」について、パート・アルバイトなど給与所得者にとってわかりやすく整理します。

◆ 所得税に係る「年収の税額が発生するライン」の改正ポイント

◎従来は「103万円の壁」

・給与所得控除(55万円)+基礎控除(48万円)=103万円までが非課税ライン。
・年収がこれを超えると所得税が発生し、扶養控除から外れる場合もありました 。

◎令和7年度改正では「160万円の壁」へ

・基礎控除が最大95万円(47万円アップ)、給与所得控除の最低保障が65万円(10万円アップ)に引上げられ、合計160万円まで課税されないラインが上昇。
・つまり年収160万円までは所得税がかからない(扶養から外れない) 非課税状態が継続されます。

◎誰でも160万円まで非課税になるのではない

・ただし、「160万円の壁」の対象者は、「年収200万円以下」の人です。
・年収が200万円を超える人については、控除の増加は一部にとどまり、最大でも基礎控除は58万円になります(令和7年・8年は特例あり)。
#基礎控除って何?
・これは、誰にでも認められる「最低限の生活費に対する控除」です。
・これまでは一律48万円でした(合計所得2,400万円以下)。
・今後は、年収200万円相当(合計所得132万円以下)の人は、95万円まで控除されます。
・合計所得金額が132万円を超えると、所得額の区分に応じて控除額が減額されます。
・でも、合計所得金額132万円超2,350万円以下の人は、令和6年分までの基礎控除額と比べて「+10万円~+40万円」(令和7年分・8年分の措置)となっております。
#給与所得控除って何?
・これは、給与から自動的に差し引かれる「必要経費のようなもの」です。
・これまでは、年収162.5万円以下の人は一律で55万円引けました。
・改正後は、年収190万円以下の人は一律で65万円引けるようになります。
・年収が190万円超の人は、収入金額に応じて一定の算式で算出された控除額となります。

◎扶養控除に関わる収入上限の見直し

・「103万円の壁」が扶養控除対象から外れるラインでしたが、これが 123万円 に引き上げられました。
・よって、年収123万円までは配偶者控除・扶養控除の対象となります(所得税上)。
・つまり、扶養になるか否かの壁は「年収123万円」です。

◎「特定親族特別控除」が新しくできました

#誰のための制度?
・19歳以上23歳未満の親族(多くは大学生)を持つ方(親等)が対象です。
・その子等が、扶養親族の所得要件(年収123万円・合計所得58万円)を超えると、「特定扶養控除(63万円)」の適用がなくなるので、これを救済するために創設されました。
・「19歳以上23歳未満」とは、「その年の12月31日」時点での年齢で判定します。
#何が変わるの?
・今までの「特定扶養控除(63万円)」とは別に、
・子等の年収が「123万円超188万円以下」(合計所得58万円超123万円以下)までは、新たに最大63万円までの「特定親族特別控除」が新設・可能になりました!
・特別控除額は子等の年収に増加につれて段階的に縮小します。
#なぜできたの?
・教育費負担が大きい世代への支援強化のためです。
・大学生がアルバイトをしている店舗等の企業の人手不足対策です。
#注意点
・この特別控除を受けるには、年末調整書類(「特定親族特別控除申告書」)が必要です。
・親等の合計所得金額の制限はありませんので、特定親族がいれば適用対象です。
・この「特定親族特別控除」と「特定扶養控除」のダブル適用はありません。

◆ 影響とポイント

1.働き控えの緩和
「103万円の壁」だったラインが拡大し、より多く働いても所得税が生じにくくなります。
世帯全体の手取りを減らさずに労働時間の拡充が可能に。
2.扶養控除の範囲拡大
配偶者控除・扶養控除の所得枠が年収123万円に引きあがったことで、より多くのパート収入者が扶養対象となります。
3.年末調整や源泉徴収への影響大
この令和7年分の改正は、令和7年12月1日に施行されます。
つまり、年末調整(令和7年12月)で対応することになり、会社の年末調整では複雑な計算が必要になるため、早めの準備が大切です。
令和8年からは、新しい「源泉徴収税額表」で給料計算等をすることになります。
4.社会保険の壁との関係
所得税の壁は上がりますが、社会保険の加入要件(106万円/130万円の壁など)は変わりません。
税負担が下がっても、社会保険での負担増が先に来るケースもあります。
「年収の壁」は、税制と社会保険制度の両方に関連しており、改正の時期も異なり、また、事業所の規模や労働時間等によって要件が変わります。
そこで、従業員は「所得税の年収の壁」よりも先に「社会保険の年収の壁」の影響を受けることになる場合があります。

◆ 実務へのアドバイス

◎シフト調整がしやすくなる

・これまで「年収103万円の壁」を意識して就業調整(働き控え)をしていた人も少なくありませんでしたが、「160万円の壁」に変わることで、「もっと働きたい」「収入を得たい」という人が増えることが期待できます。
・事業者側にとっても、従業員の「働き止め」や「働き控え」が減り、クリスマスや年末商戦の時期等を含め、シフト調整等がこれまでよりもしやすくなるといえます。
・今のうちから従業員とコミュニケーションを図り、従業員の意向をヒアリングしていくことが大切です。

◎社会保険料の事業主負担が増える

・「もっと働きたい」という人が増えると、社会保険に加入する人も増える可能性があります。その場合、事業主の社会保険料負担も増加。その原資の確保が必要です。
・従業員の社会保険への加入に伴う会社の負担は、制度改正だけでなく、昇給や勤務時間の変更、本人の意思などによって突然発生します。
・厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」では、事業主が負担する社会保険料がどのくらい変わるか試算できる「社会保険料かんたんシミュレーション」が公開されています。
・従業員は、社会保険に加入することで、結果として手取りが減る場合があります。
 そこで、従業員の負担分を事業主が肩代わりする場合の支援措置が実施の予定です。

◎各種手当の見直しが必要?

・従業員に住宅手当や家族手当を支給している場合、自社の手当等について確認し、支給条件を見直す必要があるか検討しましょう。
・例えば、「配偶者控除・扶養家族の適用対象がどうか」「収入額○○円以下」「所得○○円以下」等を各種手当の支給条件としている場合、支給対象が増える可能性があります。
・そこで、福利厚生制度や給与規定等の見直しが必要となる場合もあります。早めに対応し、従業員に周知することをおすすめします。

◎年末調整事務が煩雑になる

・今回の改正は、令和7年分の所得税については年末調整で対応することとされています。
・基礎控除額や給与所得控除額等が変わるので、年末調整事務は煩雑になる見込みです。
 ○申告書の様式が変わる
 ○所得の計算方法が変わる
 ○令和7年分・令和8年分は基礎控除額が所得によって変わる
 ○「扶養の範囲」の基準となる所得額が変わる
 ○新しい控除(特定親族特別控除)が創設されて記入欄が増える
・したがって、従業員が申告した内容のチェックと訂正の業務負荷は、例年以上に大きくなることが想定されます。
・特に、本人および家族の「見込み年収額」が全てのベースになりますので、曖昧な不正確な金額で処理すると、後日、修正や訂正の申告事務や税務調査のリスクが生じます。
・業務負荷を軽減するため、また、従業員に申告書を正しく記載してもらうため、計算方法や記載方法の丁寧な周知が欠かせません。

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岡﨑正毅
専門家

岡﨑正毅(税理士)

岡﨑正毅税理士事務所 岡﨑麻美社会保険労務士事務所

経営者や個人のさまざまな悩みに応え、社会保険労務士とタッグを組み、手厚いサポートを実現。税金に関することや、経営・経理の悩みのほか人事・労務に関する諸問題や、年金の相談などにも幅広く対応。

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