窓辺のインテリア ネコちゃん編
水琴窟(すいきんくつ)ってどこかで聞いたことがありませんか?札幌の公園のガイドブックをみると、中島公園、豊平公園などに作られてることがわかりますが、なかなかその音が聞こえる状態にはなっていないのが残念です。水琴窟は、土の中に埋まっているものですが、地上でその音を楽しめるようにと「置き型水琴窟」を考えられた方がいて、私の設計したご住宅の和室にその置き型水琴窟を取り寄せて置かしていただきました。お客様が来られたときに、尺で水をその水琴窟の上部にかけると、30分くらいは、不定期ですが、お客様と話をしている間に「キーン」という小さな澄んだ音を楽しめます。料亭で、獅子脅しのコーンという音とはまた違って心が休まり、いい音です。
江戸時代の作庭家であり茶人の小堀遠州の考案した洞水門(どうすいもん)がその発祥と言われている(田村造園 田村氏)そうですが、江戸時代から明治時代にかけてたくさん作られたようです。
音の出るしくみは、土の中に鉢を逆さまにして埋め、底に水が溜まるようにしておいて、
甕(かめ)の中央に3㎝くらいの穴をあけ、その上に小石を敷いておく。そのすぐ近くに手水鉢(ちょうづばち)を置いて、客が手を洗ったときにこぼれ出る水が土に埋めた甕(かめ)の中央の穴に注ぐようになっていて、穴から入った水が甕(かめ)の天井面に伝わり、水滴一つ一つとなって、不定期にポタっと底の溜まった水に落ちる。そのときに「キーン」という小さな音がなって、外に聞こえるという仕組みになっています。いい音がするように甕(かめ)の廻りは、玉石で囲い、多少甕で発生した音が埋め土で消えてしまわないような仕掛けにもなっています。
客が茶室に入っていく前に手水鉢で手を洗い、にじり口の方に歩いていると、ふと聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな「キーン」という音が自分の後ろ方で聞こえます。そして、客は「なんだろう?」って振り返る。そんな光景を狙って、遊び心をもった庭師が作った。という説明を読んだことがあります。
その音を含めて、水琴窟の詳しいことが田村造園の田村光氏(水琴窟師)のホームピージで知ることができます。興味のある方はどうぞご覧ください。
田村造園
田村造園さんが「置き型水琴窟」を納入した記録をみると、札幌の私の設計したご住宅のほか、道東でももう一軒別のタイプを置いて音を楽しんでおられる方もいるようです。
写真は「響」という製品で、9万円ほどで購入してもらいましたが、現在は売られていません。今は、「クロガメくん」という製品名で売っています。
私が最初に水琴窟を知ったのは、公園設計を手掛ける友人が、古い水琴窟の図面を入手したので、どこかで作ってみたいと思うが、どこかいい所がないだろうかと声をかけてもらったのが最初です。私の知り合いで茶庭付の古い民家を改修して「一灯庵」という名前のスープカレーのお店をしている方がおりましたので、店主にお願いして、お庭に水琴窟を作らせていただきました。出来たあと、ラジオの方が取材に来れていましたので、ラジオを通して「水琴窟の音」を聞いた方もいるのではないかと思います。
甕(かめ)の中央に穴をあけるのが大変で、大きな甕は悪戦苦闘のあげく割ってしまい、小さな甕(かめ)でつくっています。廻りの玉石は、豊平川から友人が集めた石を使いました。
そんな感じで手製で水琴窟を作ったわけですが、夜、静かな時にしか聞こえない小さな音なので、道路の近くの家では、自動車の音にかき消されて、まづ、聞こえないな。と住宅での利用に問題点もありました。
そんな時にインターネットで「水琴窟」をランダムに調べていくうちに田村造園さんで「置き型水琴窟」を売っていることをしり、連絡を取って、納入してもらいました。
写真では、茶室の水屋のように、水道の蛇口とか床はステンレスで水桶を作って、その上に煤竹(すすだけ)を敷しましたが、水の供給は、水差しをOK。床も別に特別排水設備もいらないということがわかりました。マンションやどこの住宅にも工事なしでおけます。
田村造園さんの「クロカメくん」は水の循環装置もついています。連続して音を聞きたい方用なのでしょうが、もともと手水鉢から漏れた水で1回か2回、「キーン」という音を出して、客を驚かせる趣向だったわけだから、お客の来る前に少し、柄杓で水をかけておいて、ちょっと楽しむというぐらいが私としてはいいと思うのですが。
また、どこかの家で「水琴窟の音」が楽しめるといいなと思っています。