家づくりの順序2 ~要望の整理の仕方、プラン提案依頼、モデルハウス見学~
居間の床は冷たく感じられるし、ソファに座っているとどこからか風が頭をかすめるんです。脱衣所も浴室の床も冷たくて、どうなっているのでしょうか?温かい家にしたいのですが。そんな相談がありました。同じような現象の家はまだまだあるのではないかと思っています。
確認申請書の書類やら図面を見せてもらって話をさらに聞くと、家はまだ築10年以内で、新しいし、住宅金融公庫の融資も受けているので、断熱材施工等の中間検査受けている。なんだとうと思いながら現地を調査することになりました。寒さ調査ではいつものように目視で断熱材、防湿シート、透湿防水シートなどの施工内容を見るという調査と合わせて各部屋の温度、湿度、気密レベル、換気扇能力等各種の物理測定調査を行いました。
1日がかりの調査でいくつかの原因がわかりました。
●居間、脱衣室、廊下の床が冷たい原因
床下のグラスウール内部に床下換気口から入ってきた冷気が入り、間仕切り壁の空洞へとすり抜けていたことで床面の表面温度が下がっていました。間仕切り壁の表面もその影響で冷たい状況でした。
●ユニットバスの床が冷たい原因
ユニットバス廻りの隙間が煙突状態となっていて床下換気口から入ってきた冷気がその隙間を通り抜けてユニットバス全体を冷やしていました。
●階段床冷たくその近辺が寒い原因
1階に組み込まれた車庫から利用する階段下の物置が外部として扱われていなく、内部として扱われていたため、断熱材の位置が車庫側についていたため、階段の床と物置の隣の便所の壁を冷やされていました。
●2階も含め全体的に寒い原因
外部扱いの1階車庫の天井と住居部分の天井とをグラスウールを縦に立ち上げているだけの断熱区画でした。また、1階の居間、台所の天井上の一部は2階が乗っていない屋根でしたが、その部分と残りの住居部分とが、何も断熱区画されていませんでした。小屋裏換気口から入ってきた冷気が縦横に1階天井と2階床との間をすり抜けて、家全体の保温性能を著しくそこなっていました。
●風が頭の上をかすめていた原因
この建物のロケーションですが、市街地密集地域ではなく、東側前面が大きな公園、北側と西側は隣家なしという状況で、自然風の影響を受けやすいロケーションでした。家自体は、気密測定値は3.5と公庫仕様の家としては普通でしたが、強い風が吹いたときの気密性能はその3倍に落ちてしまう測定結果でしたので、風が強いときには家の中にも風が入り込んでいました。
今まで良くわからなかった原因がわかりましたので改修方法も明確になりました。工務店さんも改修に協力的でしたので、原因と対策を工務店さんにもしっかりと聞いてもらい、改修工事もスムーズに行われました。
床も壁も共通ですが、グラスウールという断熱材を既存の内側防湿フィルと追加施工する外側透湿防水シートでサンドイッチにして冷気がそのグラスウールの中に入り込まないようにしました。同じ方法で、居間、台所天井上と車庫天井上で住居部分と断熱区画をして、冷気が1階天井と2階床との間を通りぬけないようにしました。きっちりと下施工をしてもらうために大工さんには大変でしたが、細い木の桟(胴縁材といいます。)でしっかりと、透湿防水シートを土台やその他の構造材に止めてもらいました。
ユニットバス廻りは、水回りで湿気も多く発生する場所なので、床下の既存のグラスウール断熱材をとって、代わりに周囲の隙間をふさぐことも兼用で現場発泡ウレタンを吹き付けで保温性能を高めました。
これらの対策の結果、家はどのように変わったかを改修前と改修後のデータで比較すると
家全体の気密性能 3.5㎠/㎡が3.0㎠/㎡に向上また、気密特性値は大きな隙間の無い状態
床の表面温度 居間の室温が21.5℃の状態で、
居間17℃→18℃ 、ホール10.5℃→15℃、階段10℃→16℃
トイレ9.5℃→16℃、浴室10℃→13℃、2階の洋室13℃→16℃
以上のような十分な結果を得ることができました。壁の表面温度も向上していますので、体感温度(表面温度+室温)/2がアップしました。
相談者から何より風呂上りに居間のソファで温かく座っていられるようになったのがうれしいと感想をいただき、こちらも改修のお役に立つことができてうれしい気持ちにならせていただきました。