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中島正晴

住む人が笑顔で暮らせる家づくりを提案する建築のプロ

中島正晴(なかじままさはる) / 一級建築士

有限会社 中島建築設計事務所

コラム

リフォーム 耐震改修の費用

2013年2月20日 公開 / 2013年2月23日更新

テーマ:リフォーム 耐震改修

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 耐震補強

木造住宅の耐震診断の依頼された方の多くが質問されることは、ところで実際、この家は耐震改修にどのくらいの費用がかかるのでしょうか?という質問です。

 なかなか難しい質問ですが、耐震改修の診断基準を出している㈳日本建築防災協会で、全国の耐震改修工事の費用データを統計的に分析して、概算工事費を割りだす計算式を公表していますので、それに基づいて計算をして、質問に答えるようにしています。

 その算定式は、耐震診断の一般診断法の総合評点をもとに計算することになるので、依頼者の方に「耐震診断しました結果は総合評点何点でその評点の意味は・・・」とまづ説明します。
 
 耐震診断の結果は総合評点で表現されます。
評点1.5以上        (大地震に対して)「倒壊しない」
評点1.0以上~1.5未満   (大地震に対して)「一応倒壊しない」
評点0.7以上~1.0未満   (大地震に対して)「倒壊する可能性がある」
評点0.7未満        (大地震に対して)「倒壊する可能性が高い」

 ※大地震:建築基準法では明示されていませんが、震度6以上を想定していると言われています。

評点0.5だった場合は、「震度5とかのレベルではなくもっとおおきな大地震が来たときには、倒壊する可能性が高いという結果となりました。評点1.0以上になるように耐震改修をされることをお勧めします。」と話します。実際、私の診断した家はすべて昭和56年5月以前の建物ですが、結果は0.3~0.6程度の間の家がほとんどでした。工事の必要性はわかるけどその改修工事の費用を出すことが難しい方も多いので、説明が難しいところです。大地震の時は、1回揺れが治まったら外になるべく早く逃げるということも対策ですとも話をしています。本来は1.0以上が目標ですが、評点0.3程度の家を評点1.0まで改修するのは相当な費用になることもあり、瞬時にグシャっということにならないように、役所の助成金はもらえませんが工事費をおさえるため評点0.8以上を目標とするということも個人的には考え方の一つと思いますと説明することもあります。それでも耐震診断まではするけれど、耐震設計、耐震改修工事へと進む方はまだまだ少ないのが現状です。


前段の説明が長くなってしまいましたが、耐震改修工事費の概算式を次のようになっています。

耐震改修工事費=27,000円/評点・㎡×(改修後の評点1.0-耐震改修前の評点)×延床面積㎡

例 延床面積120㎡で、耐震改修前の住宅の評点が、0.5の場合
162万円=27,000円×(1.0-0.5)×120㎡
ということになり耐震改修工事費は162万円です。

工事費については、ちょっと分かりにくいところがあって、市町村の助成金を受けながらの耐震改修では、基礎を補強したり、壁に筋違を挿入したりという直接的に耐震性能をアップする部位だけを取り上げた耐震改修工事と耐震壁にする壁のある部屋全体のクロス貼りとか、床仕上げ材の張り替えとかといった耐震性能のアップに直接関わらないリフォーム工事とに分けて見積書を作ります。そうゆう訳で、耐震改修の費用データはこのリフォーム工事を含まないデータなので、実際には耐震改修工事とリフォーム工事の合算の金額が改修費用ということになりますので注意が必要です。

先の例の場合、162万円の耐震工事費と63万円のリフォーム工事がかかり、合計223万円で紹介されています。

私のところでは、延床面積90㎡、評点0.3を評点1.0に上げるのに見積書で、耐震改修工事が279万円、リフォーム工事が75万円、合計354万円で概算費用を算出したものもあります。
概算計算式と比較してみると
改修工事費170万円=27,000円×(1.0-0.3)×90㎡<見積額279万円
全国的な統計と比較して相当高額になってしまっていますが、土台、大引(1階床梁)が腐朽している部分が多くその取替も耐震工事内容として入れましたので、その分、費用を押し上げている要因かと思っています。また、全国的な統計値よりは北海道が少し高いのかもしれません。

多くの方に耐震改修工事を実際してもらうためには、耐震補強設計で耐震改修のローコスト化に知恵を絞っていかなければなりません。まづは全国統計データレベルまで下がられるよういろいろと取り組んでいるところです。

設計でローコスト化で努力できる点は、順不同ですが、
・耐震診断でわかった弱いところから補強を考える
・天井や床をはがさないで耐震工事ができる金物や面材の耐震仕様の採用
・耐震要素の左右バランス改善を図って耐力の低減をなくす
・既存部分の柱と梁(水平構造材)の接合部に金物をつけて耐力アップを図る
・基礎、壁、屋根などにある劣化要素を改善し、耐力の低減を少なくする
・火打ち梁(角に斜めに入れる材)などの挿入で水平耐力アップを図る
・押入など小さな室での耐震壁改修で工事範囲が小さくなる工夫をする

などが考えられるので、設計にあたっては、できる限りいろいろと検討をしながらすすめています。

木造住宅の耐震改修に関わる費用で、設計に関わる費用もありますので、私の事務所の場合の費用
説明します。
 
耐震改修診断  47,250円(税込)但し、昭和56年5月31日以前の建物で札幌市の耐震
                   診断の助成金受ける建物の場合
耐震設計     規模により都度見積によりますが、人件費を計算して23万円程度になります。
耐震改修工事監理 人件費を計算しての見積によります。

耐震改修の補助金については、
札幌市の場合、平成24年度で、耐震診断費用の2/3(3万円限度)、耐震設計費用の2/3(10万円限度)、耐震改修工事(工事監理と工事)費用の23%(40万円限度)が補助される制度があります。
2月20日の市議会では耐震診断を受ける方を増やすため補助金を診断費用の9割に上げると答弁されていましたので、より個人負担が少なくなります。

 耐震改修工事には大きな費用がかかりますが、耐震診断から補助金もありますので、費用負担がかるく是非、活用されることをおすすめいたします。耐震診断をすることで、自分の家のことを漫然と不安に思うのではなく、知ることで次の具体的対策やら行動が得られることも期待できると思います。
 台所や風呂場、トイレなどの水回りのリフォームをする時や外壁を剥がして新しい外壁にするような時は、耐震改修のチャンスです。そういった部分を改修するときはその廻りの壁はどちらにしても剥がしたり貼ったりしますので、耐震壁にすることが容易にできるからです。そう言ったリフォームの時には、耐震改修を是非、行っていただければと思います。

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