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中島正晴

住む人が笑顔で暮らせる家づくりを提案する建築のプロ

中島正晴(なかじままさはる) / 一級建築士

有限会社 中島建築設計事務所

コラム

結露の話 窓、押入の結露対策

2013年2月17日 公開 / 2013年10月22日更新

テーマ:結露対策

コラムカテゴリ:住宅・建物

この時期、窓の結露とか押入内部の結露で悩んでいる方からの相談がよくあります。

一戸建ての住宅でも集合住宅でも、家を建てた建築業者さんや、販売した不動産会社の方から「新築当初はコンクリートから水分が出るので様子をみましょう。」「観葉植物からの水分も影響があるので、観葉植物も減らしてみましょう。」「室内では洗濯ものを干さないようにしてみてください」等々いろいろ言われた経験もある方も多いはずです。

確かに、新築当初は、コンクリートから水分が出てきますし、観葉植物の水やりも影響がないわけではありませんし、室内での洗濯物干しも影響があります。

私が、相談にこられた方にいつも話させていただいているのは、新築時からでも24時間の換気設備を運転している家は窓の結露も押入れの結露も概ねありません。観葉植物に水をやる水の量もせいぜい2リットルのペットボトル1本程度でしょうから結露防止のためにその楽しみをやめるというのはどうか?室内に洗濯物を干すというのも冬場の風邪予防にはかえって適当な湿度を保つという意味で生活にはよい面もありますね。・・と。

窓の結露や押入れの結露で困っている方の話をよく聞くと、居間についている熱交換型の換気扇は夜、音がうるさいので止めている。居間にレジスター(室内換気口)がついているのだけれど冷たい外の空気が入ってきて寒くなるので、閉めている。うちは古い家なので24時間換気をするような換気扇がありません。等々の事情を話されます。

私は、居間についている熱交換型換気扇は確かに夜になると音が気になりますので、それは夜、使わなくても良いですから、便所と浴室の換気扇を24時間回してみてください。家一軒分の換気量には足りませんが、結露の量はぐっと減りますよ。便所と浴室の換気扇を回し続けても1か月500円もかかりません。と話をしたりします。

それと気をつけてもらいたいことは、換気扇のスイッチをONにしても、室内レジスター(給気口として使う)を閉めたままだとだめということがあります。

熱交換型の換気扇は新鮮空気の給気と室内空気の排気がその機械自体で出入りする構造ですが、よくあるタイプのトイレや浴室の個別換気扇は排気だけの機械なので、居間とかにあるレジスター(換気口)を開けておかないと外の乾いた新鮮空気も入ってきません。必ずレジスターは最低1か所で良いので、給気用に開けてください。開けていないと換気扇が作動していても肝心の乾いた外の空気が入ってこないので、いくら運転しても室内湿度は下がりません。レジスターから入ってくる空気が冷たいと言うことがあるので、それは、穴が丸型の換気口だったら既製品(ジェイベック㈱のパスカル7)でレジスターの側とか上からとか外からの空気の方向を変えることができるものも出ているのでそれに交換することも良いでしょうし、既存のレジスターの前に板と布とか完全に密閉しないようなもので細工をして、冷気がまっすぐに入ってくるのを緩和する方法もあります。

普通の室内環境は、室温22℃、湿度60%程度かと思いますが、その状態だと樹脂窓ペアガラス程度だとどうしても団らんの時間帯からも窓ガラスの結露はしてしまいます。なんとか既存の換気扇を常時運転して、寝る前に室温22℃、湿度が40%までには湿度を下げている状態にしている場合ですが、窓の樹脂窓ペアガラスの室内側表面の温度が結露してしまうのは8℃前後です。外気温がー4℃程度の場合で室温とペアガラスの表面温度の差は窓のカーテンの上下が開いている場合で5℃程度と考え、結露するペアガラスの室内側表面温度8℃+温度差5℃=室内温度約13℃でだいたい換気だけでOK。カーテンボックスなどがあってカーテンの上も閉じられて、下も床までの場合だと室内の温度が窓ガラス表面に伝わりにくく室温とガラス表面温度の差が10℃程度あると考えられますので、結露をおこさせないためには表面温度8℃+温度差10℃=18℃が保てるよう朝方まで暖房機を微小燃焼させることになりそうです。窓の断熱性能が次世代省エネルギー基準になっている家は保温性能がよいので、暖房機の微小燃焼も必要なく、結露の問題もまづ起こらないのですが。

市販の「水とり象さん」や「除湿器」などを使ってもなかなか窓の結露や押入れの結露が解消されず、困っている方がおりましたら一度、トイレと浴室の換気扇の使用や暖房機の夜の微小燃焼など試してみてはどうでしょうか?工事はいっさい必要ありません。
押入れのことに触れませんでしたが、換気扇などの利用で湿度を下げる努力をした上で、襖の両サイドを5cm程度開け、布団の下面や側面にスノコを敷いたり、立てたりするとようでしょう。

また、次のような話も付け加えさせていただいています。
最初にも話しましたが、家全体で換気回数(室内の空気が1時間でどれだけ入れ替わるかの回数)が建築基準法で必要とされる0.5回(室内の空気が1時間で0.5回だけ代わる。もしくは2時間で1回代わる)、24時間の常時換気扇があって常時運転している家では、換気回数0.3回程度(室内空気が1時間で0.3回だけ代わるもしくは3時間で1回代わる)の弱運転にしても窓や押入れの結露の悩みの話はあまり聞きません。結露を抑えるためだけを考えると常時換気の目安としては換気回数0.3回ぐらいがよいと私は考えています。

床面積100㎡(約30坪)の家でしたら、室内の空気の容積は天井高2.4mを床面積にかけるとわかりますから100㎡×2.4mで240㎥、建築基準法で必要な0.5回の換気量は、空気容積の240㎥に換気回数0.5回を掛けて120㎥毎時ですし、0.3回の換気量は、240㎥×0.3毎時=80㎥毎時です。
一方で換気扇の能力ですが、便所、浴室それぞれ実質30㎥毎時だとする30㎥毎時×2=60㎥です。80㎥毎時には足りませんが、かなり必要な換気量に近づくわけです。

トイレや浴室の換気扇の実質の換気量をだれでも知ることができる方法があります。だいたいですが、2枚重ねになっているテッシュペーパーを吸い込み口にあてて落ちてこないと30㎥毎時の換気量がとれています。浴室の換気扇は能力の大きいものがついている場合は、その2枚重ねのテッシュペーパーを一枚はがして、2枚重ねのものに重ねてみて落ちてこなかったら30㎥+15㎥=45㎥毎時とれていることになります。便所30㎥毎時+浴室45㎥毎時=75㎥毎時ということで、80㎥にはいたりませんが、かなり近い数字なので、換気扇を使うだけで結露の問題が解消されることも考えられます。

換気扇を使って一日の発生水分を排出するという計算をして現在の換気扇が結露防止として足りるか足りないかをチェックすることもできます。
4人家族の場合ですと一日の発生水分は物干、炊事、風呂場の床や壁の水分、寝汗など人体からの発汗などを合計して10ℓ程度とします。

札幌では2013年2月の平均気温が-4.2℃、平均相対湿度68%でした。その外の乾いた空気には1㎥あたり約2.5gの水分が含まれています。一方、22℃、相対湿度60%の室内の湿った空気には1㎥あたり約11.5gの水分が含まれています。
 換気扇を使って外の乾いた空気と内部の湿った空気とを入れ替えることで一日の発生水分を排出し、室内の湿度を下げます。
 外と内の空気に含まれている水分量の差は重さで11.5g/㎥-2.5g/㎥=9g/㎥です。
現状の換気扇の換気能力が仮に便所と浴室をあわせて60㎥毎時だとすると室内の水分が少なくなっていく量は、換気能力60㎥毎時に外と内の水分量の差9g/㎥を掛け算し、24時間をさらに掛けて、60㎥毎時×9g/㎥×24時間=12,960g、ℓに直すと12.9ℓで発生予想水分10ℓ全部の排出することができる計算になります。毎日、水分は家にたまらず、徐々に水分は減っていく計算ですので、結露の問題は起こらないレベルと考えられます。

 窓のガラスの室内面の温度が5℃になってもガラス表面に結露しないようにする換気量の計算をすることもできます。5℃というのは室温が夜15℃になったとして、カーテンの裏側では窓ガラスが5℃ぐらいかそれ以下になってしまうためそのような設定をします。
 5℃で結露するのは湿度が100%なので、それよりも低い湿度95%の時の水分量は、1㎥あたり約6.5gです。一方、外は-4.2℃、相対湿度68%の湿った空気には1㎥あたり約2.5gの水分が含まれています。
換気扇を使って、乾いた外の空気と湿った室内の空気を入れ替えして、室内湿度を下げます。 
外と内の空気に含まれている水分量の差は重さで6.5g/㎥-2.5g/㎥=4g/㎥です。
 一日の発生水分量が10ℓ(10,000g)を1㎥あたり5gの必要排出能力で割り算すると10,000g÷4g=2,500㎥が一日排出されれば良いことになりますので、1時間あたりでは、24時間でさらに割り算して2,500㎥÷24時間=104㎥毎時となります。換気扇能力が毎時104㎥以上であれば窓ガラスの表面温度が5℃になっても結露しません。 トイレと浴室の換気扇を24時間、回し、毎時60㎥だけでは足りない計算です。
 浴室の換気扇は、通常、毎時50㎥くらいとれる能力のものが設置されていることが多いのですが、換気扇の外についている換気フードを抵抗で、30㎥毎時くらいに実際の能力が落ちてしまっていることがあります。その場合、外フードを空気抵抗の少ないものに換えると毎時15㎥ほど能力がアップするので、そういったことも方法です。
 フードの形状は、上から覆い被さった形状ではなく、防雪板のように上下にオープンになっているようなものが空気抵抗が少なく、よく抜けます。
(訂正のお知らせ:室内のガラスの表面温度が5℃になっても結露しないための計算で、当初の記述に間違いがありましたので、修正いたしまた。)

中島建築設計事務所
http://nakajima-sekkei.com

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