安すぎる日本、あなたはどう生きる?

吉井徹

吉井徹

テーマ:投資・資産形成

「日本は物価が高い」はすでに過去の話


安い

あなたは東京の物価や人件費は世界トップレベルに高いと思っていませんか?
世界の消費者物価指数を見てみると

物価推移
出典:内閣府ホームページ 図表1 主要先進国の消費者物価指数の推移 https://www5.cao.go.jp/keizai3

このように他の先進国と比較して、日本は30年もの間ほとんど物価上昇していません。

「でも物価上昇するより安くものが買えるからいいじゃない?」

他の先進国は物価上昇と同時に賃金も上昇しています。

実質賃金指数推移
出典:全国労働組合総連合ホームページ 実質賃金指数の推移の国際比較

このように日本は30年間、物価も賃金も上昇しませんでした。

日本は島国なので海外の状況変化を感じにくい。
自分たちの生活はあまり変わっていないようでも、海外の人々の生活水準がどんどん上がっています。
30年前は世界から見れば多くの日本人が豊かな生活を送っている人たちでしたが、気がつけば
「あれ?税金も社会保険も上がって使えるお金が減ってきている」
という人が増えています。

世界中でコロナ対策として大規模な金融緩和が行われています。
世の中にお金がジャブジャブになるとお金の価値が減ります、つまり物価上昇が起こりやすくなります。
木材や原油、光熱費、食料など、すでに日本でも物価上昇の気配があります。

物価上昇を上回る賃金上昇があればいいのですが、企業側は人件費コストをあげたくない、給与の高い中堅社員を抱えているとなかなか難しそうです。
(少し前に「45歳定年制」という言葉が話題になりましたね。会社が45歳定年制になったら怖くて家を買えなくなる?

これは経営者側にとって給与に見合った働きをしていない中高年労働者を減らし、若い世代の給与を増やしたいという考えかもしれません。
まぁ45歳定年制は実現しないでしょうけど。

前置きが長くなりました。
今回のテーマは
『物価も賃金も安い日本のままでは、世界からどんどん置いていかれる』
です。
かつてはアジアから多くの人が日本へ働きに来ていましたが、このまま行くと日本人が給与の良いアジアへ出稼ぎに行く時代は近いように思います。

このコラムを読めば、現在の日本が世界から見てどんな状況なのかがわかります。

結論を一言でいうと
『私達が何か行動しなければ日本はもっと貧しい国になってしまう』
です。

安いニッポン?


買い物

「安いニッポン」と聞いてあなたはどう感じますか?
何かちょっと馬鹿にされている感じがしませんか?

最近ネットで「安い日本」をテーマとしたコラムが多く見られます。
先日『安いニッポン』を読みましたが、いかに現在の日本が凋落しているかを思い知らされます。


冒頭でも触れましたが、よく海外に行く人なら日本の物価が安いと感じているはずです。
先進国で外食すると驚くほど高いんです。
とある記事によるとニューヨークではラーメン1杯約1500円~2000円が相場とのこと、、、

というのも人件費が違います。
東京都の最低賃金は令和3年10月1日から1,041円です。
一方、ニューヨーク市では2018年の最低賃金が15ドル(約1650円)です。
時給が約1.6倍も違います。

コロナ前までどんどん外国人旅行者が日本に来ていたのは「日本が安いから」です。
日本人にとって「ちょっと高いな」と感じる高級ホテルは、外国人にとって「質やサービスからすると割安」に感じています。
円安がすすめば彼らにとっては日本は信じられないくらい安い国になります。

物価上昇と聞くと抵抗を感じる人がほとんどでしょう。
日本人は長年のデフレになれてしまい「安いもの」を喜んで買い、高いものを敬遠してきました。
外国人は例えて言うなら毎年収入が3%増え、物価が2%上昇する世界に住んでいます。

私はタイムシェア(リゾートのコンドミニアムスタイルやホテルタイプの1室を1週間単位で購入する、リゾート共有システム)を所有していますが、数十万円する管理費は年々増加しています。
費用の増加に不満を言っているのはおそらくほとんど日本人です。
給料が増えていないのに、管理費の負担が重くなっていくからです。
しかし例えばアメリカ人などは毎年給料が増えているので「これくらいの管理費上昇なら妥当だ」と考えているでしょう。

世界第3位の経済大国?


富士山

私が学生の頃は「日本はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国」と言われていました。
現在は中国に次ぐ世界第3位です。
しかし上でも述べたように、実質賃金は先進国最低レベルで、世界時価総額ランキング (2021年10月末時点)に日本企業は41位のトヨタ自動車のみです。

「いやいや、それでも日本の技術力と品質は世界トップレベルだ」
そういう気持ちもわかりますけど、実際に海外旅行に行ってもホテルに日本製のテレビは置いていません(ほとんど韓国製)。
車やバイクは日本ブランドが健闘していますが。

私世代より上になると
「中国製なんてすぐ壊れる」
とよく言いますけど、それもすでに古い考えです。
彼らは猛烈なスピードで成長しています。
莫大な資金源もあります。

日本は本当に世界で見て豊かな国なのでしょうか。

人口減少社会になり、少子高齢化がすすみます。

ちなみに厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査」によると、2018年の18歳未満の子供の貧困率は15.7%です。
これはG7の中でもっとも高い数字です。

日本はかつての自信を失いつつあるのではないでしょうか。

安くて清潔で快適なニッポン


新幹線

少子高齢化が進む日本は、個人消費が増えることは期待しにくいです。

そこで海外から観光客を誘致して、日本に訪れてお金を使ってもらい経済を支えていく方向へシフトしてきました。

平成19年1月より施行されている観光立国推進基本法
観光立国推進基本法(国土交通省観光庁)

訪日外国人旅行者数推移
出典:国土交通省観光庁 訪日外国人旅行者数・出国日本人数

2019年の訪日外国人旅行者数は3188万人で、2009年の622万人と比較すると約5倍も増えています。

外国人から見た日本は「安くて清潔で快適な国」です。
政府としては観光客を誘致して消費、雇用、産業を増やしたい狙いでしょう。

コロナがなければ東京オリンピックで多くの外国人旅行者が訪れ、現在とは違う状況だったかもしれません。
しかしアフターコロナで再び外国人旅行者はやってきます。
ここのところ円安に推移しているので、コロナが落ち着けば一気に旅行者が訪れる可能性もあります。

海外旅行に行く日本人は減少する?


旅行

安い日本に多くの外国人旅行者が訪れるようになった反面、日本人は海外旅行に行くと物価の高さに驚かされるようになりました。

このままだと、物価上昇している国から日本に来ると豪遊できて、日本人が海外へ行くと物価が高くて何もできない時代になるかもしれません。

しかし先程の「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」を見ると、出国日本人数は微増し続けています。

これは私の推測ですがここ数十年は

  • インターネットで情報が簡単に手に入るようになった
  • LCCなど格安航空券が手に入るようになった
  • 先進国以外の国を楽しむ人が増えた

などがあるからではないでしょうか。

かつてのように海外旅行に行って、圧倒的に円が強くてめちゃくちゃ安く感じることはなくなりました。
それでもまだアジアなどでは日本よりも少し物価が安く楽しめる国もあります。

昔は外国人から見て「日本人はお金持ち」のイメージを持たれていたので、騙されたり襲われたり犯罪に巻き込まれることも多かったです。
現在はそう思われてないかもしれませんが、相変わらず日本人は警戒心薄いと思われているのでくれぐれも犯罪に巻き込まれないように注意です。

まとめ


風景

日本に住んでいると、収入は増えてないけど物価もほとんど上がってこなかったので、特に何も手を打たず過ごしてきた人が多いはずです。
しかしじわじわと物価上昇の気配を感じますし、超低金利での預金はほとんど増えません。

そして世界中で実質賃金が上昇しているなか、日本人はずっと横ばいでした。
つまり相対的に貧乏になってきているのです。

ですから「私達が何か行動しなければ日本はもっと貧しい国になってしまう」のです。

なので実際に海外に行ってみたり、世界から日本がどう見えているのかを知っておくべきです。
テレビだけだと「日本すごい」みたいなものも多いので、ネガティブな要素も見たほうがいいでしょう。
私達が思うほど「日本はあこがれの国」ではなくなっているかもしれません。

まず私達ができるのは「安いことはいいことだ」と決めつけるのをやめることです。
安価な商品やサービスしか売れなければ、企業収益を圧迫し、結果的に従業員の給与が減り、より安価なものを求める悪循環になってしまいます。

また簡単ではないことですが、収入を増やす努力と工夫を怠らないことです。
スキルを身に着けたり、転職を検討したり、副業したり、なにかできることがあるはずです。

そして金融資産を円資産、しかも現預金のみにしておかないことです。
資産の一部でも外貨建資産(海外資産)を持ってリスク分散しておきたいところです。
こちらのコラムを参考にどうぞ。
知らないと損する『資産の分散』

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吉井徹
専門家

吉井徹(ファイナンシャルプランナー)

YOC

会社財務と経営者の個人資産を両輪で考え、企業の発展と理想の人生をかなえるお金の仕組みづくりをサポートする「法人顧問FPサービス」を提供。中小企業オーナー経営者のお金の悩みに寄り添い、解消へと導きます。

吉井徹プロは中国新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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