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自宅購入は不動産投資?資産形成に活かすことができるのか

2021年5月8日 公開 / 2021年5月9日更新

テーマ:投資・資産形成

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 住宅ローン 固定金利投資信託注文住宅

家は資産?ムダ?資産形成での考え方


家

30代〜40代で住宅の購入を考える人が多いですね。
ほとんどの人にとって人生最大の買い物ですから、ポンと気軽に買えるものではありません。

それに将来に向けた資産形成も考えていると
「家は買うべき?借りるべき?」
というのはよくある議論です。

どちらが正解というのはありませんが、私の考えでは
「資産形成を考えるなら住宅の購入はオススメしない」
になります。

なぜなら将来、住宅(不動産)の価値が上昇する期待ができる物件を購入できる人が少ないからです。

一番重視したいのは立地です。
しかし立地が良い物件は高額になります。
「家を買いたい!」
という気持ちが高まってると、外観や広さに目が行ってしまい「買える住宅」を選んでしまいます。

新築の家は、基本的に年月が建つと価値は下落していき最終的には0になります。
もちろんその家に住み続けることは可能ですが、資産価値で考えると果たして購入する意味があるのかを考えなければいけません。

一方で土地の価値は基本的にゆるやかです。
都市部であれば上昇することもありますし、郊外でも数十年で0になることはないでしょう。

憧れのマイホームを持ちたい気持ちはわかります。
しかし、賃貸であれば状況によって住む場所をかえたり、最新の設備がある物件に住み替えることが簡単です。
転職や家族構成や環境の変化など、状況に応じて住居は住み替えたほうが快適なはずです。

「でも家賃を払い続けても何も残らないし、毎月の家賃と同等のローン返済で家が持てるって言うし」
しかし先ほども言いましたように家の価値は減少していきますし、固定資産税などの税金もかかります。
家が傷んでくればリフォームなどのメンテナンス費用もかかります。

住宅販売のうまい宣伝文句に簡単に乗せられず、購入か賃貸かよく考えるべきです。

自宅購入は不動産投資?


不動産

「金持ち父さん貧乏父さん」では、自宅は資産ではないと書かれています。
本の中では資産の定義を
「自分の懐にお金を運んでくれるもの」
としています。

自宅は所有していると、税金やメンテナンス費用がかかるので、資産ではなく負債だと書かれています。

つまり家を購入して貸し出して家賃収入を得ることができれば「その家は資産だ」ということです。

一方で自宅の購入は不動産投資であるとも言えます。
銀行から融資を受けて不動産を購入して、不動産価値が上昇したときに売ることができれば利益を得ることができます。

しかし一般の人が価値の上昇が期待できる不動産を取得するのは簡単ではありません。
できるのは価値が減りにくい物件を探すことでしょう。
まぁこれも難しいのですが。

そうは言ってもやっぱり自宅を購入したいあなた。
将来に向けた資産形成もしたいわけですよね。
1つの方法として
頭金として貯めている現預金や金融資産をすべて投入せず運用を継続する
ことも検討してみてはどうでしょうか。

例えば現預金500万円、金融資産1,000万円あるとすると、現預金300万円ほど残して頭金に1,200万円投入するのが一般的です。
4,000万円の物件購入なら頭金1,200万円、2,800万円の住宅ローンとなります。

借金はできるだけ少なく、毎月の返済額も押さえることができますね。
これは確かに安全策です。

しかし現在は市場最低水準の住宅ローン金利です。
固定金利で1%台ですからね。
こんな条件でお金を借りることができるのは住宅ローンくらいです。
せっかく運用している資金を換金せず、運用を継続して年利5%程度のリターンを目指せば、、、
ローン返済しながら資産を育てていくことも可能です。

ただこれはレバレッジをかけているのと同じです。
間接的に借りたお金で運用しているので、いざというときには繰り上げ返済する余裕がほしいところ。
運用が100%うまくいく保証もありません。
最低限、世の中の動向に目を向けておく必要があります。

本当は賃貸派の私ですけど自宅購入してます


図面

私自身は本当は賃貸派なんです。
もともと持ち家願望がなかったですし、これまで引越歴20数回、好きなときに好きな場所に住むのが好きな性格です。
定期的に引越しすると、ムダなものが減りますし、買わないようになります。

それはさておき、家を建てた理由は
・妻がピアノの先生で教室をやっている
・当時の職場近くに家族名義の土地があった
この2点が大きいですね。
それから、近い将来に起業して自宅で仕事をしたいと考えていたので、快適な書斎を持ちたいとも考えていました。

ピアノ教室は当然ピアノを置く必要があります。
普通の賃貸物件ではまず無理です。
建売住宅も生徒が出入りすることを考えると、理想的なレイアウトはまずありません。
テナントを借りるとなると、我が家周辺だと最低でも月10万円以上は必要です。

注文住宅を建てるためには土地探しからですが、我が家のエリアで土地を購入すると最低でも1,000万円、人気エリアになると2,000〜3,000万円はします。

そんな状況だったので
「土地の取得費用がかからないなら、ピアノ教室を設計した自宅を建ててもいいかな」
ということになりました。

運用資金には手をつけなかった


資金

その当時、7年ほど資産運用してきた資金がありました。
しかし投資しているお金は一切頭金に投入しませんでした。
と言っても頭金0円でローンを組んだのではありません。
親から『住宅資金贈与の特例』を利用して、ありがたく援助を受けました。
おかげで運用資金は現在もぐんぐん成長してくれています。

ちなみに住宅ローンは変動金利を選びました。
変動金利は固定金利よりも金利が低いメリットがありますが、金利が上昇するとローン返済がキツくなります。
つまり、いざというときはある程度の繰り上げ返済で対応することができる人向けと考えたほうがよいでしょう。

預貯金も運用資金も少ない、だけど住宅を購入したいのであれば、変動金利よりは少し金利が高くなりますが固定金利を選んでおくべきです。
たとえ世の中の金利が上昇しても、返済額は変わらないので返済計画が立てやすいです。

住宅ローンを組むと住宅ローン控除が使えます。
たしかに強力な節税効果がありますが、だからといって無理なローンを組むべきではありません。
最大限に借りれる住宅ローンなんてのは無謀です。

あなたのアセット・アロケーションはインフレに対応できますか


インフレ

日本は長年デフレに苦しんできました。
先進国のなかで実質賃金が上昇していないのは日本だけです。
この10〜20年で日本は相対的に貧乏になり続けています。
日本はすでに後進国になっている現実に気がついていますか?

日本銀行は、消費者物価の上昇率(インフレ率)を年2%として随分たちます。
しかし一向に目標に近づいていません。

ただ心配なのは現在のコロナを克服のきざしが見える頃です。
現在は世界中でコロナの景気対策によってお金がジャブジャブになっています。

株価が高騰しているのではなく、お金の価値が少しずつ減っていると考えたほうが自然です。
アメリカではすでに原材料費などが高騰し始めています。
「景気が良くなって給料も増えて物価も上昇する」
ならいいのですが、日本の場合はなかなか景気が良くならないまま物価が上昇してしまうのではないかと心配です(いわゆるスタグフレーション)。

この1年間で投資をしている人としていない人の差が大きくでました。
多くの人がまだ自分のお金の価値が減り始めていることに気づいていません。
今まで100円で買えてたものが、110円になり、150円になり、200円になり、、、
1,000万円の預金がこれまでの半分の価値になったら、、、
インフレリスクに備えていますか?
という質問に「イエス」と答えられないと、厳しい時代がやってくるかもしれません。

もちろん急激なインフレが起こらなければそれが一番です。
社会が混乱して暴動なども起こりますから。
ただあなたはインフレに少しでも備える方法を知り、実践しておくべきです。

①資産の100%が現預金の人
②資産の20%が現預金、80%が金融資産の人
③資産の10%が現預金、30%が金融資産、60%が不動産の人

インフレに負けないのは②と③のアセット・アロケーション(資産配分)の人です。
日本人は資産の50%以上を現預金で持っています。
多くの日本人がインフレによって資産価値を減らしてしまうことになります。

そう考えると自宅を購入することは、リスク分散の1つにもなるので賃貸の方が絶対に有利とは言い切れませんね。

資産の現預金比率が高いあなたは金融資産を積立投資で少しずつ増やしていきましょう。
自宅を購入したい人はあなたは慎重に。
無理なローンは返済が苦しくなることもありますし、安さばかり求めて資産価値の低い物件を買うのも得策ではありません。

すでに金融資産をあるていど持つあなたが、頭金に入れる額を押さえて変動金利で住宅ローンを組むなら、いざというときにはある程度の繰り上げ返済に対応できるようにしておきましょう。

まとめ


家

30〜40代になると家を買うか迷う世代です。
昔であれば不動産価格は上がり続けていましたし、確実な運用方法の1つでした。
それに「家を持って一人前」のようなことも言われていました。

しかし今は違います。
家族構成や転職・起業、環境の変化によって賃貸で住み替える方が時代にあっているように思います。
これから空き家はどんどん増えます。
良い中古物件を見つけてリフォームする方法もあります。

私は検討した結果、家を建てました。
ライフスタイルが賃貸では実現が難しいことと、土地の取得が不要だったからです。

新築に憧れる気持ちもわかります。
しかし多額の住宅ローンを組むわけですから、会社が倒産してしまったりして収入が減ったときに対応できるか。
家は簡単に売れません。
売れるのに時間がかかりますし、希望する価格でなかなか売れません。

資産形成の視点でみれば住宅購入は今の時代は重要ではありません。
しかし
・現預金比率が高い
・それなりの資産がある
のであればリスク分散として不動産を所有するのはありです。

家を買うなとは言いません。
消費と割り切って、理想の人生を送れるなら素敵なことです。
住宅展示場に行くと気持ちが高ぶってしまいますからね。
販売側のトークに乗せられすぎないよう、冷静に自分が実現したい未来をしっかり考えてから購入してください。

この記事を書いたプロ

吉井徹

投資歴10年以上、ファイナンシャル・プランニングのプロ

吉井徹(YOC)

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