円安リスクにどう備える?~1ドル=200円時代の資産防衛戦略~

吉井徹

吉井徹

テーマ:投資・資産形成

最近、為替市場では円安傾向が続いており、「このまま1ドル=200円になるのでは?」という声も聞かれるようになりました。もし急激に円安が進んだ場合、企業の業績や家計に大きな影響を及ぼします。
今回のコラムでは、法人顧問FPの視点から、資産運用・貯蓄対策に焦点を当てたリスクマネジメントについて解説します。



1. なぜ1ドル=200円が問題なのか?




円安のメリットとデメリット

◎ メリット
•輸出企業は利益増加(トヨタ、ソニー、任天堂など)
•訪日外国人観光客が増加(インバウンド需要拡大)
•海外資産を持つ人は資産価値が増大(米国株・外貨預金など)

✗ デメリット
•輸入品の価格が高騰(原油・ガス・食品・日用品)
•インフレ加速で家計の負担増大
•企業の仕入れコスト上昇 → 利益圧迫・賃上げの遅れ
•円建て資産の価値が目減り

企業も個人も、この状況にどう対処するかが問われています。

2. 円安リスクに強い資産運用・貯蓄対策




円安に備えるために、以下のポイントを押さえましょう。

(1) 外貨資産の保有を増やす


日本円だけを持ち続けると、円安時に資産価値が下がる可能性があります。そこで、「円安時に価値が上がる資産」を組み入れることが重要です。

✓ 米国株・米国ETFを活用
•米国株(Apple、Google、Microsoftなど)は、円安時に価値が上がる傾向。
•S&P500やNASDAQ100に連動するインデックスファンド(投資信託)やETF(VOO、QQQ)を活用するのも有効。

先進国株式や全世界株式の投資信託でも、その60%くらいは米国株に投資することになります。

✓ 外貨預金・外貨MMF
•外貨預金はシンプルな円安対策だが、為替手数料が高め。
•**外貨MMF(マネー・マーケット・ファンド)**は、ドル建てで運用しながら金利収入を得られる選択肢。

銀行窓口で外貨預金すると手数料が高いので、ソニー銀行などのネット銀行がオススメ。←私は長年ソニー銀行で外貨預金しています。

✓ 金(ゴールド)投資
•円安+インフレ時に価値が上がりやすい資産として注目。
•投資方法:金ETF(1540, GLD)や純金積立。

すでにある程度の資産を持っている方向けです。
もちろんリスク分散の意味合いで持つのはありです。

(2) 円安に強い日本株を組み込む


円安局面では、輸出比率が高い企業の業績が上向く可能性があります。
✓ 円安メリットを受ける銘柄
•自動車業界:トヨタ、ホンダ
•電子部品:村田製作所、ソニー
•半導体関連:東京エレクトロン、ディスコ
•インバウンド関連:JAL、HIS

✓ 円安でコスト増の影響を受けにくい企業
•国内市場中心で価格転嫁がしやすい業界
•例:電力、通信、医薬品、生活必需品メーカー

(3) 為替リスクヘッジとしての分散投資


円安時の資産防衛には、投資の分散がカギになります。
「円・ドル・金・株」のバランスを考えた資産配分を検討しましょう。

✓ 分散投資の一例


資産割合目的
日本円(預金・国債)30%生活防衛資金
米国株・ETF40%為替リスクヘッジ+成長資産
外貨預金・外貨MMF15%為替リスクヘッジ
金(ゴールド)15%インフレ・リスクヘッジ


あくまでも一例です。このように分散すれば大丈夫というものではありません。
ちなみに私はゴールドを保有しておらず、5%以下の暗号資産を保有しています。

3. 為替は一方向には動かない!バランスの取れた対策を




ここまで円安への備えを中心に解説しましたが、為替は常に変動するため、極端に円安シナリオに偏った資産運用はリスクがあります。
仮に1ドル=120円など、急激な円高に振れた場合、外貨資産の評価額が下がり、逆に円建ての資産が有利になります。

そのため、円安・円高どちらのシナリオにも対応できるバランスの取れたポートフォリオ
を構築することが重要です。
例えば、以下のような対策を取ることで、為替リスクを抑えながら資産を成長させることができます。

✓ 円建て資産も適度に保有
•日本国債や円建ての優良株(食品・医薬品・電力株など)を組み入れる。

✓ 積立投資を活用
•ドルコスト平均法を使い、円安・円高どちらでも買い続けることでリスクを分散。

✓ 短期的な為替変動に振り回されない
•長期目線で資産を分散し、円安・円高どちらの状況でも対応できる運用を心がける。



出典: 三井住友DSアセットマネジメント株式会社ウェブサイト

4. 企業経営者・個人投資家が今できること




(1) 企業経営者向け

✓ 為替リスクの見直し
•仕入れコスト増加に備えて価格転嫁戦略を検討
•海外取引がある企業は、為替予約やヘッジ手段の活用
•外貨建て決済の検討(ドル建て売上の確保)

✓ 資産の分散
•企業の内部留保の一部を外貨資産にシフト
•法人としての外貨預金・海外ETF投資を検討

(2) 個人投資家向け

✓ 今からでも間に合う対策
•円安のリスクを考慮し、外貨建て資産の割合を増やす
•定期的な積立投資(ドルコスト平均法)で円安・円高を気にせず運用
•投資信託やETFで手軽に米国市場にアクセス

5. まとめ


為替相場は常に変動するため、円安だけを見据えた対策ではなく、円高リスクも考慮した**「バランスの取れた資産運用」**が重要です。

✓ 今できるアクション
1.米国株・外貨建て資産の割合を増やすが、円建ても維持
2.円安メリットのある日本企業の株式を組み込む
3.金(ゴールド)をポートフォリオに加え、インフレリスクに備える
4.企業経営者は為替リスクヘッジを検討
5.短期の変動に惑わされず、長期目線で資産を分散する

「リスクを管理し、チャンスを活かす」視点で、今のうちに資産を見直してみてはいかがでしょうか。

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吉井徹
専門家

吉井徹(ファイナンシャルプランナー)

株式会社グッドウェル

会社財務と経営者の個人資産を両輪で考え、企業の発展と理想の人生をかなえるお金の仕組みづくりをサポートする「法人顧問FPサービス」を提供。中小企業オーナー経営者のお金の悩みに寄り添い、解消へと導きます。

吉井徹プロは中国新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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