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神社考 【1】 政教分離規定との関係

2010年12月23日 / 2011年2月11日更新


 前のコラムでも少し書きましたが、弁護士の仕事は、物証と供述証拠から過去の事実関係を推測するという点で、古代史・考古学に共通する性質があります。
 また、いろいろな物事や状況が、いかなる法則に基づいて発生・発展してきたのかを考察するという性質においては、言語学・民俗学などに共通する点もあります。
 弁護士の職を基本にしながら、古代史・考古学・言語学・民俗学などを研究したり書籍を出版している人は、結構多いです。

 今回は、新年の初詣が近づいていることから、神社の成り立ちについて考えてみたいと思います。多くの日本人は、神社に行くのは新年と受験祈願くらいで、クリスマスを祝い、結婚式は教会式もアリで、葬儀と法事は仏教で行う、というような多宗教(無宗教)の人が多いと思いますが、真摯に神道を信仰しておられる方もおられると思いますので、失礼がありましたらまずお詫びします。

 まず弁護士的なことから言いますと、日本国憲法20条3項において、政教分離、つまり政治と宗教を分離しなければならないと規定されています。
 しかし、神道を教条化し、天皇を神格化して軍部が統帥権を掌握して、軍国主義が助長されて敗戦に至った経緯から、実際に政治との分離を問題にされているのは、事実上神道だけです。これは天皇制を象徴天皇制として維持する代わりに政教分離を取り入れた、という経緯もあります。公明党は創価学会を母体としており、連立内閣に参加して政権与党となることもありましたが、政教分離の問題は特に大きく取り上げられていません。他にも、幸福の科学を母体とする幸福実現党なども出てきていますが、政教分離の問題にはなっていません。

 この点、私個人的には、もちろん戦前の軍国主義の増長や大陸・南洋などへの軍事行動など反省すべき点が多々あるのは承知していますが、とにかく「戦前は悪である。戦後は反省に立ち善である」とし、戦前を切り離して、他人事のような批判精神で反省と称し、戦後アイデンティティを統合した結果の、行き過ぎた自虐史観が蔓延し過ぎているからであると思います。

 政教分離の規定は、ほとんどキリスト教の宗教国家と言ってよいアメリカ合衆国からの輸入です。アメリカでは裁判の証言に際し、聖書に手をあてて宣誓をします。証人はたとえ裁判官や陪審員の前では平気で嘘をつけようとも、神の下では嘘はつけないはずである、というコンセンサスがあります。つまりアメリカは、政教一体国とも言えます。しかしあまりにも国家と宗教とが一体化しているがために、プロテスタントとカトリック、聖書原理主義者、ユダヤ教などの摩擦が激しく、特定の宗教が過度に弾圧されるような事態を生じないよう、政教分離規定が設けられたという経緯があります。むしろ、アメリカでは国家と宗教がほとんど一体化しているからこそ、少数者の信教の自由を保護するために、国と宗教の一体化に一定の歯止めをかける意図で、政教分離規定がもうけられたのです。
 もともとまったく系統が異なる、神道と仏教とキリスト教とが共存できた日本とは、土壌が異なります。

 政教分離違反で裁判となった事件には、三重県津市が、市の体育館建設にあたり、神式の地鎮祭を行い公金を支出したことが問題とされた津地鎮祭訴訟(合憲)、箕面市が小学校の増改築のため、遺族会所有の忠魂碑を移転する費用などを支出したことが問題とされた箕面忠魂碑訴訟(合憲)、殉職した自衛官の夫を山口県護国神社に合祀されたキリスト教徒の妻が宗教的人格権を害されたとした自衛官合祀拒否訴訟(合憲)などがありますが、いずれも、目的や効果などを細かく検討して、国家と宗教の過度の結びつけとなるか、そのような印象を国民に与えるものかなどを考慮して、認定しています。

 ほかに、靖国神社に関する訴訟は多数あり、これは国際政治とも関わる特殊な問題があるので、これらについては別の機会にお話します。

 続いて、神社の成り立ちについて民俗学・言語学的な考察をお話します。

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