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金融機関の考え方を理解するコツ

2014年7月2日

テーマ:銀行融資・補助金

コラムカテゴリ:ビジネス

日本政策金融公庫の新創業融資制度の要件が大きく緩和されています。
本日は、新創業融資制度を例にとり、要件の中身から背景にある
金融機関の考え方を読み取る方法を解説します。創業者に限らず、
金融機関の審査ポイントが分からないと感じておられる経営者様は、
是非参考にしてください。

新創業融資とは、創業時から創業後2期未満の方を対象とした
融資制度です。今回下記のとおり要件が緩和されました。
特に自己資金の要件が大きく緩和されています。

・貸付限度額  :1,500万円→3,000万円に拡充
・自己資金の要件:開業資金総額の3分の1を保有→10分の1に緩和
・貸付期間   :設備資金の最長10年→15年に緩和
・据置期間   :6カ月→最大2年に緩和
・業種経験   :6年以上(緩和なし)

融資要件とは、
金融機関が過去の融資実績から導き出した成功の方程式です。
従来の要件から読み取ると、「6年以上の業種経験がある分野で、
開業資金の規模を2,250万円以内に抑え、かつ借入を総事業費
の3分の2以内に収めて開業したケースにおいて、上手く行った例
が多かったのであろう。」という推測ができます。

事実これまでの創業融資は、他に少々の問題があっても、要件さえ
満たしていれば、高い確率で審査に合格していました。事業実績を
持たない独立開業者の審査は大変難解ですので、成功の方程式に
当てはめて審査を行うことは、極めて合理的かつ効率的です。
今回、このような要件を緩和する狙いは何でしょうか。

狙いは開業率の向上です。確かに、要件(成功の方程式)に当てはめ
て審査を行うことは合理的ですが、例外に対応することが出来ません。
極端な仮定ですが、ノーベル賞を取った研究者が自身の研究を事業化
する場合、その事業が成功する確率は高いはずです。しかし、
これまで研究に莫大な資金を費やしてきたため「自己資金が殆ど無い」
となれば、新創業融資制度で対応出来ないという弊害が生じます。

今回の要件緩和は、一見誰でも利用しやすくなった印象を受けます。
しかし、金融機関の本当の考えは、「自己資金が無くても融資しますよ」
ということでは無く、前記のように「突出したものを持っているにも
関わらず、これまで制度に合致しなかった開業予備軍を丁寧に拾い
上げますよ」ということだと思います。

金融機関が求める要件を表面的に捉えるのではなく、
その背景を理解するようにすれば、金融機関の審査結果に対して、
「要件を満たしているのになぜ?」と戸惑うことは少なくなります。

この記事を書いたプロ

石田雄二

会社設立と銀行融資のプロ

石田雄二(石田雄二税理士事務所)

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