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『ぼくたちは戦場で育った』を読んで

古元邦子

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テーマ:思いを綴るページ

 知人に勧められて読んだこの本に出てくる戦場とは、多民族国家ユーゴスラビアにある主要都市サラエボである。政治家の宣伝に翻弄されて、1992年に突然始まったサラエボ包囲戦では、この街が戦場となり多くの一般市民が巻き込まれて殺害された。4年間の戦いが終結して20年後に、この戦場で幼少期を過ごし、世界中に逃れていった彼らが、「あなたにとって、戦時下の子ども時代とは?」という問いに応えて、当時の思い出を綴った文章が集められ、この本にまとめられた。戦時下での究極に制限された生活、家族、友達、学校、空腹、迫ってくる死、別れ、遊び、友情、恋心・・・短いけれど、リアルなことばから、子どもたちの恐怖や不安、絶望、救いなどの思いが切に伝わってくる。私の日常には有り余っているひとかけらのチョコレートを夢に描いて、空腹に耐えながら生きている子どもたちがいるということ。その日その日、限りある食べ物を分け合うということ。その絆の強さ。

 彼らのことばを借りれば、戦場で育つということは、突然「子どもではいられなくなった(大人になった)」「子ども時代を失った」経験だということだ。「子ども時代を失う」とはどういうことなのか、そのエピソードや体験はひとりひとり違っているが、戦争を経験していない私に、重要なことが問われているように感じる。

 少なくとも衣食住に不自由のない生活をしているが、毎日のようにテレビのニュースから、爆撃・銃撃によって失った命の数が伝えられる。この本を読んで、そこで生きている人が居るのだということを、リアルなこととして感じられるようになった。





 日本で戦争を経験しているのは、今では80代以降の超後期高齢者の世代であり、戦時下で育った方たちである。「子ども時代を失う」という経験を、私たちはどのくらい聞いているだろう。親族の戦争体験について、とてもわずかであるが「できごと」として、その断片を聞いたことがある。そこで何を失ったのかについて、おそらくその当事者も考えたことがないのではないだろうか。
 語られないこと、理解されないこと、受け取られないことは、何かしら大きな努力と工夫がなければ、形を与えられないまま、意味がわからないまま、何かしら個人に影響を与え続けるのかもしれない。

 普段目にしていることを、注意して見てみようとすること、既に知っていることだけど、もう一度考えてみようとすること、小さなことから始めることで、自分自身が住んでいるこの世界について、自分自身の成り立ちについて、少しでも気づきが得られればと思う。

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古元邦子(公認心理師)

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完全予約制で秘密が守られる場所です。他では口にできないけれど、カウンセリングの場だから話せること、ご自身の考えや気持ちに触れながら、大切なことについてじっくりと話し合っていきます。

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