これから就職先として製造業を選ぶ場合、特にどのような経験やスキルが必要か?<世界に誇る日本の製造業:その3>

濱田金男

濱田金男

テーマ:若手人材の育成

就職先として製造業を選ぶ場合、特にどのような経験やスキルが必要なのか、特に中小
企業に再就職する場合を想定して考えてみます。

製造業に就職を考える場合、特に中小企業においては、幅広いスキルや柔軟な対応力が
求められることが多いです。中小企業では大企業に比べて専門部署が分かれていない
ことが多く、一人の従業員が複数の役割を担うことが多いため、経験やスキルが多岐に
わたると有利です。

以下に、特に中小企業の製造業に再就職する際に役立つ経験やスキルを解説します。

1. 製造現場での実務経験
製造業に再就職する際に、最も評価されるのは現場での実務経験です。中小企業では
即戦力としてのスキルが求められるため、以下のような経験があると特に有利です。

(1)生産ラインの管理経験
製造工程の効率化やトラブル対応など、生産ラインの運営や改善に携わった経験。

(2)機械操作や設備メンテナンスの経験
生産設備や機械の操作に熟練していること。また、簡単なメンテナンスや修理が
できるスキルも求められます。

(3)品質管理の経験
製品の品質を維持・向上させるための管理手法や、品質トラブルに対する対応経験。

2. 技術系のスキル
技術者として製造業に再就職する場合、以下のような技術系のスキルが求められます。

(1)機械・電気・電子工学の基礎知識
機械や電気設備の知識は、多くの中小製造業で重宝されます。特に、機械の設計や
改善、設備の保全に関わるスキルが重要です。

(2)CAD/CAMスキル
機械設計や製品開発に携わる場合、CAD(コンピュータ支援設計)やCAM(コンピュ
ータ支援製造)のスキルが求められます。設計図を作成し、それを基に製造工程を考
える能力が必要です。

(3)プログラミング・制御技術
工場の自動化が進む中で、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やロボット
制御のプログラムを組めるスキルがあると、特に優遇されます。

3. 生産管理や在庫管理のスキル
生産管理や在庫管理のスキルは、特に中小企業で重要視されます。中小企業では、製造
業務だけでなく、材料の調達、在庫の管理、製品の納期管理など、幅広い業務に携わる
ことが一般的です。

(1)生産計画の立案・管理
需要に応じた生産計画を立て、それに基づいて生産を進めるスキル。納期管理や効率的
な生産工程の構築が求められます。

(2)在庫管理・資材管理
部品や原材料の調達、在庫の適切な管理、コスト削減に向けた工夫ができる人材は、非
常に重宝されます。特に中小企業では、資材のムダを減らすことが経営の安定に直結し
ます。

4. コミュニケーション能力とチームワーク
中小企業ではコミュニケーション能力が非常に重要です。従業員数が少ないため、現場
の作業員、技術者、管理職、さらには営業部門や経営陣との密な連携が求められます。

(1)部門間の調整能力
生産計画や品質管理において、営業部や資材部門との調整が必要となる場面が多くあり
ます。部門間の円滑なコミュニケーションが生産性に直結します。

(2)現場との密な連携
製造現場の作業員とコミュニケーションを取りながら、現場の問題点を把握し、改善
する力が求められます。

5. 問題解決能力
製造業では、予期せぬトラブルや課題が発生することがよくあります。特に中小企業
では、柔軟な問題解決能力が重要です。限られたリソースの中で、迅速かつ効果的に
問題を解決できるスキルは高く評価されます。

(1)トラブルシューティング
生産ラインや設備の不具合に対して、迅速に原因を特定し、修正策を講じるスキル。

(2)改善活動(カイゼン)
現場の効率化や不良品の削減を目指す改善活動の経験があると、企業にとって大きな
メリットとなります。

6. コスト管理とコスト削減の経験
中小企業では、限られた資源を最大限に活用するため、コスト管理やコスト削減に関
する知識と経験が重要です。

(1)コスト意識
生産活動におけるコスト削減や効率化を常に意識して業務に取り組む姿勢が求められ
ます。例えば、材料費や製造コストの見直し、工程の無駄を省く取り組みなど。

(2)VE(バリューエンジニアリング)の知識
製品やプロセスのコスト削減を目的とした手法に関する知識も評価されることがあり
ます。

7. 多能工としてのスキル
中小企業では、一つの役割に特化するよりも、複数の業務をこなす「多能工」として
のスキルが求められることが多いです。

(1)製造から物流、品質管理まで対応可能
製造現場だけでなく、品質管理や物流、さらには簡単な営業サポートなど、多岐に
わたる業務に対応できる柔軟さが重要です。

(2)現場改善の提案力
現場の効率化や作業の改善提案を積極的に行える人材は、企業内での評価が高まり
ます。

8. パソコンスキルと業務効率化ツールの使用経験
製造業の現場では、近年デジタル化が進んでおり、基本的なパソコンスキルや業務
効率化ツールを使いこなせることが重要です。

(1)Excelなどのスプレッドシート
生産計画、在庫管理、データ分析などに使用されるため、Excelを活用したデータ
整理や集計能力が必要です。

(2)ERP(企業資源計画)やMES(製造実行システム)
企業の生産管理や在庫管理に使われるシステムの操作経験があると、非常に有利
です。

9. 資格や免許の取得
製造業では、特定の資格や免許を持っていると再就職時に有利です。中小企業では
資格を持っていることで即戦力として期待されることが多いです。

(1)フォークリフト免許
物流部門や倉庫業務を兼務することが多い中小企業では、フォークリフトの免許が
あると重宝されます。

(2)QC検定(品質管理検定)
品質管理に関する知識があることを示す資格で、品質保証や生産管理の職種で評価
されます。

(3)危険物取扱者
危険物を取り扱う業界(化学工業など)では、この資格が必要となる場合があります。

(4)電気工事士や機械保全技能士
設備の保全や修理に関わる場合、これらの資格があると優遇されます。
________________________________________
まとめ
中小企業の製造業で再就職を目指す場合には、即戦力として広範な経験と柔軟なスキル
が特に求められます。技術的な専門知識や製造現場での実務経験に加え、幅広い役割
をこなせる多能工としてのスキルが重要です。

また、製造業でのデジタル化の進展に伴い、基本的なパソコンスキルやデジタルツール
の活用能力も高く評価されます。以下、再度要点をまとめます。

中小企業の製造業において重視されるスキルと経験
 1.現場での実務経験(生産管理、品質管理、機械操作など)
 2.技術系のスキル(機械、電気、電子工学、CAD/CAM、プログラミング)
 3.生産管理・在庫管理スキル(生産計画の立案、在庫管理、資材調達)
 4.コミュニケーション能力とチームワーク(部門間調整、現場との連携)
 5.問題解決能力(トラブルシューティング、カイゼン活動)
 6.コスト管理・コスト削減の経験(VE、コスト意識)
 7.多能工としてのスキル(複数業務の柔軟な対応)
 8.デジタルスキル(Excel、ERP、MESなどの業務ツール)
 9.資格や免許の取得(フォークリフト、QC検定、危険物取扱者、電気工事士など)
________________________________________
中小企業は大企業に比べて組織のフラットさや役割の多様性が特徴であるため、自分の
スキルを柔軟に活かしながら、常に学び成長する姿勢が求められます。
再就職を目指す際には、自身のこれまでの経験を活かしつつ、不足している部分を補う
ために新しい資格やスキルの取得にも挑戦すると、さらに有利に働くでしょう。

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Mybestpro Members

濱田金男
専門家

濱田金男(企業経営コンサルタント)

合同会社高崎ものづくり技術研究所

大手電機メーカーで設計、製造、品質管理に長く携わり、中国工場立ち上げ、韓国での生産ライン効率化など海外支援実績も多数。新しい時代を見据えた工場改革、付加価値向上と人材育成で、ものづくりの現場をサポート

濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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