中小製造業は「多品種少量生産」で利益を上げるノウハウを蓄積すること。(2)加工工程の改善ステップはこう進める!

濱田金男

濱田金男

テーマ:DX化で製造業は変わる!

中小製造業は「多品種少量生産」で利益を上げるノウハウを蓄積(1)では
製造現場において、多品種少量生産におけるQCDの悩みをどのように解決していったら
よいかを解説しました。

では、具体的に、個別受注生産において、発注者から入手した3Dデータを加工してCAM
データ作成、および2D図面の作成、加工の段取り作業、加工、検査に至る工程で、手始
めにどこから効率化を図っていけば良いのかを考えてみます。

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(加工工程の作業効率化をどのように行って行けば良いか?)

個別受注生産において、効率化を図るためには、全体のプロセスを把握し、最も効果が
高く、かつ導入のハードルが低い部分から着手することが重要です。具体的には、以下
の工程において効率化を検討できますが、まずは次の順番でアプローチすることが推奨
されます。

1. 3DデータからCAMデータ作成までの効率化
この工程は、デジタル化の恩恵が大きく、効率化の効果がすぐに現れる部分です。発注
者から提供された3Dデータを元に、加工機械で使用するCAMデータを作成する工程は、
自動化やシステム化に適しています。

CAMソフトウェアの自動化機能の活用 多くのCAMソフトウェアには、3Dデータから自
動的に加工パスを生成する機能があります。まずはこの機能をフルに活用し、手作業で
の加工パス設定を最小限に抑えることを目指します。特に、同様の形状や繰り返しの加
工が多い場合は、テンプレートやマクロを作成することでさらに効率を上げることがで
きます。

CAD/CAM統合システムの導入 CADデータからCAMデータを生成する過程を一元化する
ことで、データの変換や入力ミスを防ぎ、作業時間を短縮できます。CADからCAMへの
シームレスな連携が可能なソフトウェアを導入すれば、3Dモデルの変更があっても迅速
に対応可能です。

2. 2D図面作成の自動化
次に取り組むべきは、2D図面作成の効率化です。特に、航空宇宙産業など高精度な分野
では、2D図面が必要な場合が多いですが、3Dデータから2D図面を自動生成するツール
を活用することで、手作業で図面を作成する時間を大幅に削減できます。

CADソフトの図面自動生成機能の活用;3D CADソフトには、3Dモデルから2D図面を自
動生成する機能が搭載されています。この機能を活用することで、わざわざ手動で図面を
作成する時間を短縮し、設計ミスも減らすことができます。また、部品リスト(BOM)
も同時に自動生成できるため、部材調達にも効率化が見込めます。

標準化した図面フォーマットの採用;図面のフォーマットを標準化することで、作業のば
らつきを減らし、統一された品質の図面を作成することが可能になります。これにより、
レビューや修正作業の時間も削減されます。

3. 加工の段取り作業の効率化
加工の段取りは、製造現場での大きな時間ロスとなりがちです。段取り時間を短縮する
ためのツールや方法を導入することが、次に効率化を図る重要なポイントです。

段取りの標準化;加工準備(段取り)作業は標準化できる部分が多いです。例えば、工具
や治具の配置や機械のセットアップ方法を標準化することで、誰が作業しても一定の品質
とスピードで段取りができるようにします。これにより、段取り時間を短縮し、生産性が
向上します。

段取り交換の迅速化(SMED);シングル段取り交換(SMED: Single-Minute Exchange
of Die)を導入し、できる限り10分以内で段取りを終えることを目指します。機械が停
止している時間を最小限にすることで、稼働時間を増やし、生産能力を高めることがで
きます。

4. 加工工程の効率化
加工工程自体の効率化も、時間短縮や品質向上に大きく影響します。

自動化技術の導入;加工機械の自動化(CNCマシンなど)を進め、手作業を減らすこと
で、精度を向上させながら作業時間を短縮します。さらに、IoT技術を利用して、機械
の稼働状態をリアルタイムでモニタリングし、稼働効率の向上を図ります。

プログラムの最適化;加工プログラムを最適化し、無駄な加工時間を削減します。最適
化の一環として、加工速度や工具の選定を見直し、生産性を高めることも可能です。
これには、CAMソフトウェアの最適化機能を活用すると効果的です。

5. 検査工程の効率化
製品の品質を保証するための検査工程も重要ですが、効率化の余地があります。

自動検査装置の導入;三次元測定機(CMM)などの自動検査装置を導入することで、
検査時間を短縮しつつ精度を保つことができます。特に、高精度が要求される航空宇
宙や医療分野では、手作業による検査よりも一貫した品質を維持できるメリットがあ
ります。

検査データのデジタル化と統合;検査結果をデジタル化し、設計データや製造データ
と統合することで、トレーサビリティを確保し、迅速なフィードバックが可能となり
ます。これにより、不具合の早期発見や工程改善の機会が増えます。

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(加工工程の作業効率化をどのように行って行けば良いか?)

まとめ
個別受注生産における効率化のステップは、3DデータからCAMデータ作成の自動化・
デジタル化から始めるのが最も効果的です。次に、2D図面の自動生成、段取り作業
の効率化、加工工程の最適化、そして検査工程の自動化と進めていくことで、全体の
プロセスがスムーズに流れ、短納期や高品質を実現しやすくなります。

最終的には、これらの改善を段階的に進め、各工程の効率を最大限に高めることが、
企業の競争力向上と顧客満足の向上につながります。

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濱田金男
専門家

濱田金男(企業経営コンサルタント)

合同会社高崎ものづくり技術研究所

大手電機メーカーで設計、製造、品質管理に長く携わり、中国工場立ち上げ、韓国での生産ライン効率化など海外支援実績も多数。新しい時代を見据えた工場改革、付加価値向上と人材育成で、ものづくりの現場をサポート

濱田金男プロは上毛新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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