日本企業におけるDXは、欧米とは異なり独自の発展形態がある、伝統を重んじながら、その上でデシタル化を推進すべき!
不沈の船と呼ばれていた豪華船タイタニック号がイギリスからアメリカ
のニューヨークへ向かう途中、氷山に衝突し、船体が2つに割れて沈没
しました。船内には、救命ボートも不足しており救助の知らせを発する
のも遅れたために、多くの犠牲者が出ました。
★参考記事
https://monozukuri-japan.seesaa.net/article/503472293.html
1.事故はどのようにして起きたのだろうか?
(事故までの経緯)
1912年4月10日にタイタニック号は処女航海に出発しました。2度
氷山の警告を受けたにも拘わらず、深刻に受け止めず、危険海域にも
関わらず減速もしないままに航海を続行、14日、午後11時ごろに
なって氷山を450m手前で発見したが間に合いませんでした。
(沈没の直接原因)
減速しながら舵を切ったが避け切れず、船腹が氷山に当たり、多数
区画が損傷、大量の浸水が始まって、船体は傾き始めました。
0:14に初めて救難無線を発し、その信号を56海里離れたカルパチア
号が受信し、救助に向いました。また0:44信号灯を打ち上げたが、
近くにいたカリフォルニア号は救難信号とは受け取らず、救助にも
向かわなかった。そして2:20沈没。カルパチア号は沈没後4:10頃
到着しました。
(背景)
タイタニック号は処女航海で大西洋横断の最短記録を目指していた為、
警告を受けても減速できないプレッシャーがあった。また、不沈の船
として、過大に安心感が与えられていており、沈没するとは、誰も想像
できなかった。
また、この時代は鉄の強度強化に関する技術開発が未熟であり、衝突
時の損傷も大きく天気予報やレーダーもない時代、夜間に高速航海
していたので、氷山の発見が遅れてしまいました。
(対策)
この事故を教訓に、数々の安全対策が取られ、氷山の警告を深刻に
捉え、アメリカ沿岸警備隊では氷山のデータや情報を航行安全のため
に提供するようになった。
海事法規について、救命ボート訓練が適切に行われること、乗客の
いる船の無線機には24時間スタッフをつけることなどが盛り込まれ、
また国際海氷パトロールが北大
西洋の氷山の有無をモニターする組織の新設、海事安全規則は国際
条約によって統一され今日に至っています。
2.タイタニック号の教訓
この事故の発生から対応、対策までの一連の流れは、現在でも形を
変えて同じような事故が再発する可能性を示唆しています。なぜなら
技術の発展が進んでも「人はミスを犯す」という前提は変わらない
ためです。
「教育訓練」「情報提供」「組織」「法規・規則」など、現代にも
通じる対策が講じられていますが、「プレッシャー」「思い込み」
「過大な自信」「技術的未熟」などヒューマンエラーに起因する事故
は後を絶ちません。
(では失敗を起こさせないようにするためにはどうすればいいか?)
最も一般的な例が失敗事例集、不具合事例集などを作ることです。
しかし、この失敗事例集も十分に生かされているとは言い難い事実
があります。それらが生かされず同じ失敗が繰り返されるのはなぜか
というと、原因の1つは"失敗知識の伝達"がうまくいっていないこと
にたどり着きます。
多くの失敗事例は、ばらばらに集められており、最新情報の追加など、
メンテナンスのしくみも十分ではありません。情報の質にも問題が
あり、予防策を講じようと考える人に過去に起こった失敗の内容が
知識として正しく伝達されていないと考えられます。
その理由は
・不具合情報の記述が不十分で、設計で使えるほどのものでない。
・他設計に再利用できる不具合情報ではなく固有の不具合情報として
整理している。
・不具合情報があちこちに存在していて、体系的に引き出せない。
・不具合情報は膨大にあるため、設計実務で使えるようにうまく検索
できない。
それでは失敗知識の伝達に必要なものはなにか?それは失敗を生かそう
としている人が必要な失敗知識を検索でき、それを予防対策に生かせる
ような一定の規則を持った「分類」と「定型化された構造」を持たせる
ことです。
例えば、当研究所が推奨する「故障モード抽出表」です。
部品の使用環境、使われ方によって大きな事故につながる恐れがあります。
設計時にはその部品の市場での使われ方を想定し、採用する必要があり
ます。そのヒントを与えてくれるのが「故障モード抽出表」なのです。
故障事故に至る「環境条件」「使われ方」「故障モード発生」「故障」
の内容とその「分類・キーワード」から構成されています。
★故障モード抽出表の詳しい説明は
http://factorysupport-takasaki.com/article/473126330.html
3.そこで、IT技術は生かせないのか?
しかし、失敗事例集、故障モード抽出表などを人の手によって作成し、
管理することは、多くの労力と時間を必要とします。
製品評価技術基盤機構(NITE)では、1996年度以降に収集し、調査が
終了した事故情報をネットで公開しています。製品名などのキーワード
を入力すると、事故内容とその調査結果を検索することができます。
★NITEの製品事故情報・リコール情報検索
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/index.html
これも多くの情報が公開されていますが、必ずしも検索しやすいとは
言えず、また事故内容についても、それを予防するための知識が必ず
しも得られるとは言い難い面があります。
(戸田建設の事例)
戸田建設は2020年7月30日、開発した建設工事現場向け災害情報管理
システム「安全ポータル」のソフトウェアライセンス販売を開始しました。
https://www.toda.co.jp/news/2020/20200730_002775.html
安全ポータルは、電話やメールで報告していた建設工事現場の事故
報告をWeb上で行え、所定の項目に必要事項を入力すると、報告用
ページが自動生成され、事前登録している関係者全員へ瞬時にメールで
伝える機能を持っています。
戸田建設では2018年6月から安全ポータルを現場で運用しており、安全
ポータルで災害情報をデータベース化し、災害事例を会社全体で共有
して、同種災害の防止に役立てている他、報告書作成の所要時間が
大幅に短縮し、作業所・安全管理部門の働き方改革につなげています。
(構造化知識研究所のトラブル未然防止支援システム)
SSM(Stress-Strength Model:ストレス-ストレングスモデル)は、
製品や工程に起こりうる故障・不具合・不安全の発生メカニズム(因果
連鎖)の知識を設計・計画時のトラブル予測・未然防止に活用できる
ように構造的に表現するためのモデルです。
SSMによる構造化知識の構築・運用の導入例を下記にて紹介しています。
http://www.ssm.co.jp/ssm/index05.html
①不具合事例のSSM化による再発防止チェックリスト運用
・自動車部品メーカで実施
・市場や開発段階の再発防止事例など約1000件を対象に、SSM
知識ベースを構築
・複数部署で再利用可能な知識を各部署に水平展開し、全社的に
不具合再発防止
・するチェックリストを運用
・設計者における不具合再発防止力、問題点気付き力が向上
②FMEAデータのSSM化による効率的な故障モード予測・原因影響解析
・空調機器メーカで実施
・過去のFMEAシート資産をSSM知識ベースにし、FMEAシート内
の知識の再利用性を向上
・設計変更点から半自動的にFMEAシートを作成
・FMEAの質・作成効率ともに格段に向上
★参考記事
https://monozukuri-japan.seesaa.net/article/503472293.html