EVシフトで懸念される中小製造業の受注減対策は?EVビジネスをモノにする方法とは?
今、周りを見渡せば、日本人の生活を取り巻く商品の大半が「メイド・イン
・チャイナ」です。
雑貨にとどまらず、野菜や冷凍食品などの食材、医療品、家電製品など生活
に欠かせない、ありとあらゆるものが中国からの輸入品となっています。
1.コロナ禍の中小製造業
しかし、今回のコロナ禍では、ひとたび非常事態に陥れば、中国からの供給
はすべて途絶えてしまうリスクを伴っていることを目の当たりにしたのです。
日本は、電子部品やパソコン部品、自動車部品なども多く輸入しており、
特に感染拡大の発端となった中国武漢市は自動車産業の集積地で、操業停止
により中国からの部品輸入が途絶えた自動車メーカーは生産停止に追い込ま
れました。
2.生産拠点の国内回帰や多元化を政府が支援
サプライチェーン強靱化へ生産拠点が集中する中国などから日本への国内
回帰や第三国への移転を支援するための緊急経済対策の一環として政府は
総額2435億円を2020年度補正予算案に盛り込みました。
その後も、それほど多い金額ではありませんが、2024年度の「事業再構築
補助金」のサプライチェーン強靭化枠として、最大5億円の補助金が支給
される予定です。
★https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo_sc.pdf
今回の補助金では、⽇本企業が特定の国に過度に依存しない強靱なサプラ
イチェーンを構築するため、特定国に依存する製品や部素材の生産拠点を
国内に整備する場合、建物や設備導⼊費用の一部を補助する、または第三
国への生産拠点の多元化も後押しするものです。
このような政府の思惑にも拘らず、国内に拠点を戻す企業は一部あるもの
の、国内回帰が潮流になるほどでもないのが現状です。自動車産業や家電
IT関連産業にみられるように、サプライチェーンを組み替えるには、それ
なりの大きな力と時間が必要ということで、一朝一夕にはいかないのが
現状です。
かつて、円高に伴って、コスト削減を目的に日本から出ていった企業が、
中国で、強固なサプライチェーンを組み、日本企業の国内回帰や拠点分散
化を阻んでいます。
「国民の健康に関わる重要な物資の生産、サプライチェーンは国内で確保
することが重要だ」という意見はたしかにもっともですが、企業の理屈と
国家の理屈は違います。
サプライチェーンの再編は、深刻化する米中貿易戦争で重要な検討課題と
なっていますが、それでも日本企業の動きは鈍く、しばらく様子を見よう
とする企業が多く見られるようです。
3.なぜ国内回帰が難しいのか
低価格化の流れに乗って日本、韓国、台湾企業が好んで進出した広東省の
深圳では、電子機器製造業に必要な全てが、車で1時間圏内に集まり、設計
、部品加工、組立、金型、物流まで全ての機能の集積地となっています。
こうなるとあまりにも利便性が高いため、少々人件費が高騰しても他地域に
移ることは難しくなっています。
また競争が激しく、低価格での材料調達などで、個々の企業が必死に生存
競争を繰り広げることで、全体としては製造業に最適な環境が整ってしま
っているのです。
東洋のシリコンバレーの牙城は強固であり、日本政府が多少の補助金を
投じてもサプライチェーンはそう安々、戻っては来れないのです。
また、自動車産業については中国の国内マーケットをターゲットとして
いるため「部品メーカーが帰ってくることはほとんど期待薄であり、自動
車業界全体から見ると非常に小さな動きでしかないというのが大方の見方
のようです。
中国に在住する日本人は2012年の15万人をピークに減少傾向にあります
が、現在でも10万人が在住しています。
4.日本サプライチェーン復活の鍵とは
国内には高い技術力と信頼できる取引関係が可能な中小企業が多数存在
します。これらの中小企業が地域企業や大企業が手を結び、技術力に裏付
けされた製品でありサービスを作り上げていくという、オール関東なり
「All Japan」といった経済圏を作り上げサプライチェーンの国内回帰を
促す以外、方法はないと考えられます。
このような取り組みは、やがて中国を中心とするサプライチェーンとは
差別化され、今後の日本経済にとっても大きな強みとなっていくと考え
られます。
国や自治体においては、国内メーカー同士の技術を結集し、モノづくり
における強みを発揮できるような対策を期待したいものです。