中小企業経営者はなぜ損益分岐点分析を行うのか?
1.新規開拓を困難にしている背景
単に営業だけを強化しても根本的な課題は解決されません。
その新規開拓を困難にしている背景は3つあります。
(1)セールスアピール段階での差別化が困難であること。
売り手側でのセールス・アピールは「短納期」「高品質」「小ロット生産または
大量生産」など、競合他社との“違い”を明確に打ち出すことが必要ですが、これ
がなかなかできません。
カタチが見えないのですから、ある意味当然です。「我が社は他社が3日かかる
ところを、ウチは1日で出来ます!」と言ったところで、買い手にとってみれば
「実際に作ってみないと分からない」つまりお金を払わなければわかりません。
(2)仕様、品質要求事項はオープンにしない
その素材は、どのような利用用途なのか?その部品は何に使われているのか?
と質問しても大半の社長は、それが分からないのです。と答えます。
これは、受注品をどのような観点で、何を重要管理項目として作るのかが全く
分かっていないということになります。要求事項の真の理由が分からなければ
付加価値のある提案もできません。
「見積もり」も、どのような価値があるから、いくらならできるのか?などと
根拠を持って算出されたものではなく、言い値で決められてしまうのです。
(3)既存業者への発注は暗黙知が通じる
既存業者への発注は暗黙知が通じるので、発注側はなにもしなくとも済みます。
新しい業者に依頼をしようとすると、一から「自社の要求」を説明しなくては
ならず、そんな余計な仕事は、できるだけ避けたいのが、担当者の本音です。
多少コストが高かろうが、納期に不満があろうが、大きな不満がない限り、業者
を変えようとは思わないのが普通です。
2.しっかりした会社になるためには
既存業者から、わが社に切り替え、新規発注を行ってもらうためには、他社との
明確な違いを示し、付加価値ある提案を行わなければならない、つまり「しっかり
した会社」であることを示す必要があるのです。
そこで、まず、社長以下組織をあげて受け身の「下請け体質」の考え方、行動を
改める必要があります。
それには、既存の取引先との関係を改めて見直してみることが必要になります。
既存の取引先に徹底的に密着して、技術力で取引先の片腕になり、切られにく
くすることです。
そのことによって、一度取引関係を結べば長期にわたって取引を継続させること
が可能となり、そこで技術力・提案力を身に付け、受け身体質から脱することに
注力します。
・納品時の声掛け、情報収集
・受注ロットの予測ととりまとめ
・見積り根拠と価格交渉
・製法、工法の改善提案
・品質基準の見直し提案
など、具体的な項目を、積極的におこなっていくことです。
つまり、新たな顧客や市場を開拓するには、まず既存の顧客を大事にし、営業
や技術の面で、実力を磨き「しっかりした会社」に成長させるところから始め
るべきだと思います。