最後の挑戦開始/二つの脱獄(2026/10/16)
ホメオスタシス
給料という麻薬によって、飼いならされ、
その状況が安心・安全であれば、
脳はそこに留まろうとする。
これをホメオスタシス(恒常性=静的平衡)という。
その状況が正しい、自分は間違っていない、
常識もそうだし、周囲も自分を羨む。
実際その通りだった。
この状態の脳は、とにかくそこに居れば安全なんだから、
絶対にそこを離れるな!と私に命令する。
私はその命令に背く理由がないので、
喜んで同意し、従う。
RAS
そうなると、脳は、自分が正しい理由を探し、
どんどん自分に見せる。
これをRASという。
赤いフェラーリを買おうと決めた瞬間に、
急に赤いフェラーリばかり目に付くのと同じだ。
(別に赤い車やフェラーリが増えたわけではない)
その代わり、他の国産車や、他の色の車はすべて同じに見える。
というか見えなくなる。
これをスコトーマ(盲点)という。
脳科学的な説明
RAS(網様体賦活系:もうようたいふかつけい)をめちゃくちゃ簡単に言うと、
「脳の強力な検索フィルター(自動アンテナ)」だ。
人間の五感には毎日膨大な量の情報が入ってくる。
脳がそれをすべて処理していたらパンクする。
そのためRASは、
「今の自分にとって大事なもの、関心のあるもの」だけを
強烈に拾い上げ、どうでもいい情報はすべてカット
(スコトーマ=盲点に)するという働きをする。
なので、私もあなたも、
自分が見たいものだけを見て、
自分が見たくないもの、不要だと思っているもの、
は、見えない。
スコトーマのなかで生きる人々
長瀬産業にいた頃の私も、まさにこのスコトーマの中にいた。
「抜群の待遇、やりがいのある仕事、世間が羨むホワイト企業」
その安全な枠組みこそが世界のすべてであり、
そこから外れる人間は「脱落者」なのだと、
脳が勝手に思い込ませていた。
周囲を見渡せば、同じように会社にしがみつき、
日々のストレスを夜の酒や休日の消費で
紛らわせている仲間ばかりが目に入る。
「みんなこうやって生きているんだから、これが正しいんだ」
RASは、自分が選んだその道が「正解である証拠」ばかりをかき集め、
それ以外の生き方や、
本当の自分の内側から聞こえる違和感を
完全にスコトーマ(盲点)の闇へと追いやってしまう。
ホメオスタシスの罠
人間を現状に縛り付ける
このホメオスタシスとRASのコンビネーションは、
実によくできている。
変化を恐れさせ、波風を立てさせず、
ただシステム(政府や企業)にとって「扱いやすいパーツ」として
一生を全うさせるための完璧な防衛機構だ。
世間も、常識も、親も、学校も、会社も、
そして私でさえも、異口同音に、
良い会社、良い待遇のもとで給料をもらう人生が
最高であり、成功者であると唱える。
違和感
しかし、どれほどスコトーマが視界を覆い隠そうとも、
どれほどホメオスタシスが「このままで安全だ」と
甘い囁きを続けようとも、
生命の根底にある感覚はごまかせない。
脳の奥底で、サリエンシー・ネットワークが小さく、
しかし確実に警告音を鳴らし始める。
その小さな違和感が次第に成長し、
やがて既存の安定を突き崩し、
最初の脱獄を引き起こすことになる。
脳科学的説明
サリエンシー・ネットワーク(Salience Network)とは、
「脳の緊急アラーム(異常・違和感の察知レーダー)」だ。
膨大な情報のなかから、
「自分にとって放っておけない異物、危険、
あるいは『なんかこの状況はおかしいぞ』というズレ」
を瞬時に嗅ぎ取り、
脳の意識の真ん中に引きずり出す司令塔の役割をする。
そのころの私
当然、このような脳科学的な知識はないが、
とにかく異常な怒り、意味不明な衝動欲求がたびたび訪れていた。
つまらない日常を楽しくしようとする
BBQなどのイベント、宝くじの共同大量購入など、
周囲の人々の行動に同化できなかった。
これはなんだ?
私はこんなことをするために、ここにいるのか?
と。。。
脳よ、お前は誰だ?


