視点を広げる
子どもの幸せを願わない親はいないと思いますが、ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度ランキングによると、精神的幸福度は37位という最下位に近い結果です。
社会的自立をしていない子どもたちにとって、大人と比べると、圧倒的に環境の影響を受けます。
生活の大半の時間は、家庭と学校になりますから、家庭や学校での環境が、そのまま子どもの幸せに影響を与えます。
マズローの欲求の5段階説で考えると、
第1段階:生理的欲求
「食欲」「排泄欲」「睡眠欲」など
第2段階:安全欲求
安心・安全な暮らしへの欲求
(病気や不慮の事故などに対するセーフティ・ネットも)
第3段階:社会的欲求
友人や家庭、会社から受け入れられたい欲求
(集団への帰属や愛情を求める欲求であり、「愛情と所属の欲求」あるいは「帰属の欲求」とも表現されることも)
第4段階:承認欲求(尊重欲求)
他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求を指します。
(名声や地位を求める「出世欲」もこの欲求の1つ)
(なお、承認欲求における尊重には「低いレベルの尊重欲求」と「高いレベルの尊重欲求」があり、低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、名声、注目などを得ることによって満たされるのです。高いレベルの尊重欲求は、自己尊重の意識付け、技術や能力の習得、自立性などを得ることで満たされ、他人からの評価より自分自身の評価を重視する傾向に)
第5段階:自己実現欲求
自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う欲求
(潜在的な自分の可能性の探求、自己啓発行動、創造性の発揮などを含み、自己実現の欲求に突き動かされている状態)
これらの欲求の満足感から幸福度が探れるように思います。
物が豊かで、治安のよい日本では、多くの子どもたちにとって、第1段階と第2段階については、満たされていると考えられます。
第5段階は社会的自立をしていない子どもにとっては、かなり難しいと考える事ができます。
このことから考えると、第3段階と第4段階の欲求が満たされる事が精神的幸福度につながると考えられます。
つまり、子どもが生活する環境の中で、「受け入れられ、尊敬される存在」となれば、充実感を味わう事ができ、幸福度が上がる事が期待できます。
これには、親子関係、友人関係を充実させる取り組みが必要になります。
近年、盛んになってきたボランティア活動は、第3段階や第4段階を満たす上でかなり有効です。相手のために働くことから、受け入れられ、感謝されることで、相手から承認される存在になります。
家庭で考えると、家族の一員として認められる「お手伝い」は、このボランティアにつながるよい取り組みになります。
親から、「ありがとう。助かったわ。」と感謝される存在になれば、第3段階、第4段階の欲求は、満たされます。
特に、共働きの多い時代ですから、家庭生活を支える担い手として、活躍している子どもも多いと思います。
この時、「当たり前」ではなく、子どもに助けてもらい、感謝する姿勢で「ありがとう。助かったわ。」と声をかけることで、第3段階、第4段階の欲求を満たすことができます。
子どもの大事な生活時間を奪ってしまい申し訳ないという気持ちがあれば、自然と子どもへの感謝が生まれてきます。
子どもにとって、遊びは、人間関係を築く上でとてもよい体験になります。ゲームなどの一人遊びではなく、集団遊びが、第3段階や第4段階の欲求を満たす機会になります。
家族での団欒の時間も子どもにとっては、人間関係を学ぶよい機会になります。子どもの欲求を満たす機会であり、親の生き方を示す機会であり、親が生きる見本になります。
仕事が忙しい事に理由をつけて、子供との関係を蔑ろにしていると、そのツケは、子どもの幸福度に現れてきます。
時間がなければ、質で勝負するしかありません。
それには、子どもが愛情を感じ、受け入れられ、存在感を感じる関わりを作る事だと思います。
例えば
・ハグする。抱っこする。頭を撫でる。手をつなぐ。
・一緒に(食事、入浴、仕事、活動)する。
・子どもへ文字で気持ちを伝える。(手紙、メモなどで)
・共通で利用する。(共有の机、場、物など) など
子どもに目を向ければ、必ず出来る事が、見えてきます。
ただ、この前提として、
「あなたと一緒に生活できて、幸せだよ。」
と、伝えたいと思います。
(言葉で伝えないと、子どもにはなかなか伝わりません。)