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「なぜ子どもを怒鳴ったり叩いたりする親を支援するんですか?」への答え

2020年11月4日 公開 / 2020年11月6日更新

テーマ:子育て

コラムカテゴリ:出産・子育て・教育

コラムキーワード: 子育て悩み相談夫婦問題 相談メンタルヘルス 対策


ごくたまにですが、標記の質問を受けることがあります。

子ども時代に虐待を受けて大人になった方たち(アダルトチルドレン当事者)を支援しているのに、それをしている親を支援するのは本末転倒ではないか、、、という意味であろうと思います。

今回改めてそのことに触れてみます。


犯罪被害と虐待の違い

先日、熱心に子どもへの虐待防止活動をされている方(団体?)のサイトにたどり着き、活動の会合の様子を拝見しました。

その会合に参加していたある方が「子どもを虐待する親を支援したい」と申し出た際、その団体の方か他の参加者の方かはわかりませんが、いずれかの方が虐待をレイプに例え、「あなたはレイプの被害者ではなく加害者を支援したいのですか?」といった旨の返答をなさったようです。

確かに子どもへの虐待も、他者からのレイプも、いずれも本人の心身を深く傷つける外傷体験には違いありません。そんなことはないに越したことはないのは当然です。

しかし、虐待とレイプ被害を同一線上で例える発言に猛烈な違和感を覚えました。

その二者は同じ次元では語れない圧倒的な違いがあるからです。

その違いとは、幼い子どもはたとえ親から傷つけられたとしても、
【その親、特に母を強烈に求めている】
ということ。

犯罪被害を受けた方が、加害者を求めるなんてことは特殊な事情でもない限りはほぼあり得ないことです。憎んで当然、恨んで当然の事象ではないでしょうか。

しかし虐待はこれとは異なります。

年齢を経れば親が為した行為に怒りと嫌悪を覚えることもできますが、まだ年端もいかな子どもたちは、例え傷つけられたとしても、その親からの愛、抱擁、保護、理解、共感といった【情緒的な交流】を深く、強く求めます。

愛着の対象であるべき親からの虐げであるからこそ、子どもたちは深く深く傷つくのです。

虐待と犯罪被害を同じ地平では語れない理由がここにあると感じています。

外傷体験だけが傷ではない

虐待という言葉から連鎖されがちなものは、子どもの体や心を傷つける外傷体験ではないでしょうか。

例えば暴力、人格否定を伴う暴言や貶め、性的搾取といった外傷体験です。

「傷つき」という言葉をここ一点に集約すれば、確かに犯罪被害と同じと言えることでしょう。

先の「レイプの加害者を支援するのですか?」という問いも、おそらくここに焦点が当たっての問いではないかと推察します。

しかし、子どもが心に深く傷を負うものは外傷体験だけではありません。

子どもを傷つけた親も、周りの人間も、下手をすると傷つけられた子ども自身も気づいていない「傷つき」があるのです。

それは
【喪失体験】
です。

ウォンツより遥かに大切なニーズ

子どもが生きていくには決して欠かすことのできない「ニーズ」というものがあります。

衣食住や医療は生きていくためには必須ですが、人の子はこれだけでは生きていけません。

*安全な環境を提供されること
*愛され、保護され、尊重され、ケアされること
*感情表現を許されること
*勇気づけられること
*自律性の育ちをサポートしてもらうこと

こういったものが環境に備わって初めて、子どもが子どもらしく、その子らしく、ありのままを花開かせ、生きていけるようになるのです。

しかしこういったものが元から家庭になかったなら、それが本来「あって然るべきもの」と誰も気づくことができません。

でもこれらはいずれも子どもの育ちに
【欠かせないニーズ】
なのです。

欲求と言えば「欲しい」を意味する「ウォンツ」が一般的ですが、ここで言う「ニーズ」とは『必要』であり『欠かせない』を意味しています。

その大切なものがないなら、それは外傷体験ではなくても、それは紛れもなく
【喪失体験】
なのです。

私たち人間は大切なものを失ったとき、深く傷つきます。

ウォンツがなくても子どもは生きていけますが、大切なニーズが失われてしまうと、命を保つことはできても、人として大切な情緒は育まれないのです。

虐待は、時に「外傷体験」と「喪失体験」という2つの傷つきに脅かされる行為。
だからこそダメージは計り知れないのです。

親を支援する理由

私はもとより幼い子どもが大好きで、彼/彼女たちが傷つくことを決して望みません。わが子が生まれ、日々子どもの笑顔を見れば見るほど、その想いは強まるばかりです。

一人でも多くの子どもが子どもらしく生きていける世界を切に願っています。

だからこそ子どもたちの命が危険にさらされているなら、命を守ることは何よりも優先されるべきことには1ミリも異論はありません。

しかしながら子どもは、親という存在に傷つけられながらも、その親を強く求める生き物という視点も外せないと思います。

子どもたちが本質的に救われるには、他ならぬ「わが親」に愛され、尊重されることではないかと思うのです。

だからこそ、今はまだわが子に健康的に関わることができないとしても、
「そんな自分を変えたい」
「子どもには自分と同じような思いをさせたくない」
「虐待の連鎖は自分の代で断ち切りたい」
と願って支援の門を叩く親御さんを全力で支援したいのです。

それによって一番幸せになるのは誰か?

それはその親御さんではありません。

その親御さんの心の内に住んでいる「子ども時代のその方」であり、その親に育てられている「子ども」であり、さらにその子が親になったときにその家に生まれた「子ども」でもあり、さらにその子が親になったときに、、、。

親育ちを通じて、その親の内なる子ども、今ここに生きるその親の子ども、その次世代の子ども、、、のように、全ての子どもたちに幸せになってほしいんです。

それは、「愛着対象であるべき親から傷つけられ、恐れと深い悲しみに「今、ここ」で苦しんでいる子どもの目線に徹底的に立ち、

「彼/彼女たちが一番大事なものってなんだろう?」
「真の幸せを手に入れるにはどうなるといいんだろう?」

と考えあぐねてたどり着いた視点です。

これが、子どもたちのことを大切に思うからこそ親を支援する理由であり、
「なぜ加害者を支援するのか?」
に対する答えです。

子どもという尊い命を大切に思うからこそ、外傷体験を防ぐだけでなく、喪失体験をも防ぐためにも、「変わりたい!」と腹を括った親御さんの支援にこれからも力を入れていきます。

 

この記事を書いたプロ

高澤信也

「子育て力」をはぐくむカウンセリングのプロ

高澤信也(カウンセリングオフィス トリフォリ)

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