わが子に蒔きおく種

中光雅紀

中光雅紀

テーマ:解決のための視点

わが子に伝え遺すものとは

臨済宗中興の祖と称される江戸中期の禅僧白隠慧鶴の

『施行歌』というものがあります。

一節をご紹介しましょう。



今生富貴する人は  前生に蒔きおく種がある

利口で富貴がなるならば  鈍なる人はみな貧か

利口で貧乏するを見よ  この世は前生の種次第

多くの宝を譲るとも  持つ子が持たねば持たぬもの

少しも田畑譲らねど 持つ子はあっぱれ持つものぞ



ほんの一部の抜粋ですが、私はかねての支援活動の中で

特に考えさせられる箇所があります。

それは、

多くの宝を譲るとも  持つ子が持たねば持たぬもの

少しも田畑譲らねど 持つ子はあっぱれ持つものぞ

という部分です。



白隠禅師は、経済的なことで表現していますが、

人並みはずれた能力があったからとて、

必ず幸福になれるかというとそうではない。



親がわが子に財産を残したからとて、

それに相応しい器の者でないと身上つぶしてしまう。

お金など残さなくても、持つべき子は

自力でしっかり財を成す。

わが子の繁昌祈るなら  人を倒さず施行せよ

と、わが子にはをのこすべきことを諭しています。

遺しておきたい「徳」と〇〇〇

私が考えさせられるというのは、

「徳」をのこすことはもとよりですが、

わが子にのこす(植える)ものは、

自尊心自己信頼感であるべきだと思うのです。



自尊心と自己信頼感が健全に育っていなければ、

学歴をつけてあげようと親が努力して(それこそお金をかけて)

も、不登校になったり、高学歴でも就職面接すら行けない。



また、せっかく大きな会社に就職できても、

仕事のミスや上司からの叱責ひとつで、

ひきこもりになってしまうことだってあるのです。



逆に自尊心や自己信頼感が育っていれば、

どんなトラブルやアクシデントに見舞われても、

なんとか解決してしまいます。

親身になってくれる協力者もいるからです。

生き方の大前提を決めてしまうもの

私たちは人生早期の発達段階で、自身の人生の“前提”

決定されてしまっているようです。

しかもそれは、養育者に完全にゆだねられているのです。



前提とは何か?

自分が生きていく環境は、信頼できる人たちと

安全に暮らせる環境であり、

自分は周囲の人たちから、愛され、求められると

自分を信頼していける人生か、



常に裏切られ、傷つけられることに怯え、

自分が生きていっていい理由、意義を

見いだせない人生かということです。



どちらの前提で人生をスタートするのかが、

養育者の関わり方によって決められてしまうのです。

そして、この前提をプログラムされたことには、

本人は気づけず、特に否定的前提は、成人してのちも

あらゆる場面で手を出し、口を出し、本人を脅かします。



ストレスに対しての脆弱性や、

常に印象、憶測、気分で物事を判断し、

否定的結論から前向きな行動をとらない癖が

身についてしまうのはこの前提のせいなのです。



自分を信頼できれば、親から自立することができます。

家族だけとの人間関係に依りすがり、

自分の世界に閉じこもる行動は、

自分を信頼できずにいるからです。

天晴れな人生を送れるために

誤った前提を与えてしまったわけは、養育者(親たち)が、

自身の人生の初期に満たされなかった欲求

子育てにおいて無意識の内に

満たそうとしてしまったためです。



それは、不適切で不健全なわが子への関わりとなり、

存在に対してのダメージを与えてしまうのです。



自尊心自己信頼感という種さえしっかり植えていれば、

少しも田畑譲らねど 持つ子はあっぱれ持つものぞ

で、親に与えられなくても必要なものはすべて

自分で手にしていける人生を送ることが

できるようになるのです。

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中光雅紀
専門家

中光雅紀(不登校・ひきこもり支援者(家族心理教育コンサルタント))

NPO法人地球家族エコロジー協会

トラウマの視点からひきこもりの原因を見える化していくアプローチを行い、そのもがきのプロセスから人間としての成長を果たし、ひきこもりから脱却。新しい自分に生まれ変わるような変化をサポートしていきます。

中光雅紀プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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