購入店様やメーカー様に断られた家具修理にもチャレンジしています!
「もう30年以上も使っている椅子なんですよ・・・。」
「とっても楽に座れる椅子なんですが、座面は汚れてしまい、フレームはぐらぐらなんですが、ちゃんと直りますか?」
と、四国中央市・Y様が椅子を持ってご来店くださいました。
この椅子は、1955年に豊口克平さんがデザインされた昭和時代を代表する安楽椅子 “トヨさんの椅子” です。
私が大好きで集めている椅子の本「美しい椅子2」にも、“トヨさんの椅子” が紹介されていました。
修理作業前/30年以上使われた “トヨさんの椅子” です。
私も大好きな椅子の一つで、ありがたくご依頼をお受けいたしました。
こういう名作椅子を分解 →組み立てなどの作業をさせていただくと、構造面や仕上げ面を観察することもできるチャンスでもあるためです。
仕口(接合部)のいたるところが、抜けかかってしまってました。
汚れや傷みが出ていた座面を取り外した状態です。フレームの主材料は硬いナラ材を使っているため、まだまだ十二分にご愛用できる椅子です。
修理作業中①/フレームの分解~研磨作業
30年以上も前の椅子ですので、より慎重にフレームの分解作業を進めました。
各部材を、電動工具のサンダーや手作業にて細かく研磨していきました。
部材同士の抜けなかった仕口(接合部)は、アイロン型サンダーにて隅際まで研磨していきました。
フレーム全体の各部材が研磨できた状態です。4枚目の写真と比べますと、各部材のナラ材の生地が出て白っぽくなったと想います。
各仕口(接合部)には、組み立て時に間違いがないように、ナンバー打ちをしています。
このナンバー打ち作業は、地味な作業ですが、椅子を分解する時でも、収納家具を分解する時でも必ず書くようにしています。
修理作業中②/圧着作業
愛用のソマックス製T型クランプを使って、“トヨさんの椅子” の背もたれ部と前脚部を分けて、それぞれを圧着作業をしました。
約12時間後、完全乾燥しますのでそれまでは養生しておきます。
接着剤が完全乾燥しますと続いて、“トヨさんの椅子” の全体を圧着していきます。
TOKI家具館メンテナンスの圧着作業は、十分な接着剤を各仕口(接合部)の両面に入れて行います。
そのためクランプで締め付けますと、写真のように接着剤が湧き出てきます。
この湧き出た接着剤は、濡れたウエスにて拭き取り作業をします。
湧き出た接着剤を、濡れたウエスやブラシを使って拭き取った状態です。
修理作業中③/植物性オイル仕上げ
“トヨさんの椅子” の仕上げ方法を確認しますと、作り始めた60年も前から植物性オイル仕上げを採用しているようでした。(もちろんY様の椅子も同じ仕上げです)
TOKI家具館メンテナンスで愛用している植物性オイルは、オスモ&エーデルさんのオスモカラーです。
研磨作業ができた “トヨさんの椅子” の前に置いているのが、今回使う#1101(エクストラクリア)と#3101(ノーマルクリア)です。
塗装作業の基本は、塗りにくい部分から始めて塗りやすい部分へ進めていくことです。
椅子の場合ですと、ウラ側や内側の木と木の仕口(接合部)が入り組んだ部分から始めます。
植物性オイル仕上げが仕上がった状態です。30年以上も使われて「良い感じの飴色」に仕上がりました。
修理作業中④/仕上げ作業
Y様からお預かりしている “トヨさんの椅子” は、やぶれてしまった座面なども張り替え作業をご依頼いただきました。
木工専門の私では、この椅子張り作業はむつかしいと判断し、技能士会でお世話になっている先輩椅子張り職人さんにお願いして張り替えができました。
この張り生地は、リバコトレーディングさんのトラッドという、ウール素材も入っているとっても上品な生地になります。
“トヨさんの椅子” の背もたれは、専用ネジで固定したのちに、ネジ穴に栓をして仕上げていきます。
修理作業後/ “トヨさんの椅子” ができあがりました。
ネジ穴に差し込んだ栓は、切り取ったのちに目地(段差)払いをして、同様の植物性オイル仕上げを施しました。
こうした工程を経て、ようやく “トヨさんの椅子” が完成しました。Y様、ご依頼いただきありがとうございました。
「家具の想談館は、TOKI家具館メンテナンスの商標登録です」
「買い物を大まかに分けると、二通りあると思います。」
①必要な商品やサービスがわかっていて、相談が不要な買い物
この買い物には、ネット販売店様や大型量販店様が便利で向いていると想います。
私も、使ったことがある商品のリピートなどには、ネット販売店様や大型量販店様を利用させていただいています。
②必要な商品やサービスがわからないため、有資格者や専門家との相談が必要な買い物
TOKI家具館メンテナンスは、家族中心に営んでいる小規模事業者です。
ネット販売店様や大型量販店様のような豊富な品揃えと最安値を追及することなど到底できません。
TOKI家具館メンテナンスの専門分野は、家具の修理・リノベーション家具製作(二次加工)・特注家具製作などなど、わかりにくいサービスが多いです。
そのため、わかりにくい商品やサービスに関する相談に心を込めて対応したいと、家具の想談館という商標登録をしたのです。
これからも、専門技能の向上や設備投資など力を入れていきます。どうかご指導いただけますようお願いします。ありがとうございました。土岐泰弘