「自分で割れた座面を直したのですが、ズレ(目地)が出たんです・・・!」
「飲み物をこぼすと、染みてしまうんです・・・。」
「買ったお店でオイルはもらってるんですが、一枚板テーブルのメンテナンスをしたことないんです・・・。」
「使い始めてもう20年以上は経つと思います・・・。」
と、新居浜市・O様からお問い合わせをいただきました。
修理作業前/お預かりした欅一枚板天板です。
この写真は、O様よりお預かりした、欅一枚板で長さが3.3mもある立派な天板です。
搬出作業は、当店のスタッフ4人とO様にも手伝っていただき6人でトラックに積み込みし工場まで持って帰りました。
O様、手伝っていただきありがとうございました。
これだけ長い天板ですと、毎日食事をしたり、趣味やリモートワークなど自由自在にどんなことにも使えるため、輪染みや染みが入りかなり退色していました。
ウラ面と表面の色合いがだいぶ違いますね・・・。ウラ面は、直射日光やお部屋の明かりもほとんど当たりませんので退色しにくいものです。
修理作業中①/天板の研磨作業
TOKI家具館メンテナンスの天板研磨用の動力機械のレベルサンダーは、天板の長さが2.5mまででないとセットできません。
そのため、今回の研磨作業は、電動工具のハンドサンダーにて、定規を当てながら平面精度を気にしながら作業を始めました。
私が持っているのが、当店が持っている一番大きいハンドサンダーです。
このハンドサンダーは、もう30年以上も愛用しているものです。
ハンドサンダーを掛けて生地が出たヶ所(写真奥)と掛かってないヶ所(写真手前)でかなり色合いが違ってきました。
蝶型の契り付近は、契りと天板とで、1.5mmくらいの目地(段差)が出ていましたので、マキタ製アイロン型サンダーにて慎重に研磨していきました。
天板全体の研磨ができました。
欅一枚板の生地が出て、とってもきれいになったと想います。
O様には、このまま自然な透明仕上げにするか、ウラ面のように着色仕上げにするかを、研磨した状態を見ていただき相談の時間を取らせていただきました。
契り付近もきれいに研磨できました。
修理作業中②/天板の植物性オイル仕上げ作業
O様と相談した結果、濃色仕上げとすることになりました。
TOKI家具館メンテナンスで永年愛用している植物性オイルは、オスモ&エーデルさんのオスモカラーです。今回は、欅色とエボニー(黒色)色を1:1に調合してかなり濃色の植物性オイルとして塗り始めました。
欅一枚板天板両端の白太ヶ所もできるだけ濃色仕上げとするために、まずは白太部分だけを塗り、改めて全体を塗りました。
1回目の植物性オイル仕上げができた状態です。欅らしい色合いにて仕上げることができたと想います。
同様に2回目の植物性オイル仕上げ → 透明の植物性オイル仕上げ×2回 → ワックスクリーナー仕上げができた状態です。一枚板天板に色合いの深みが増し、艶も増しました。
これだけ念入りに仕上げますと、当分の間、飲み物が染みてしまうことは無いと思います。
(ウラ面にも同様の植物性オイル仕上げをさせていただきました。)
修理作業中③/脚フレームのぐらつき修理+研磨作業
6人で搬出した重たい天板を支える脚フレームにぐらつきが出てしまっていました。100㎏以上はあると思う天板に何かがあって転倒してしまったら大ごとになります・・・。
そのため、脚フレームにも本格的な作業を加えました。この写真は、お預かりした時の脚フレームです。この材料は、ニレでした。
まず始めに、脚フレームを可能な限り分解していきました。分解する時は、元通りに組み立てするため、各接合部に墨付けをしておくことが基本です。
分解した脚フレームを研磨した状態です。天板同様、かなり白くなりました。
脚フレームの圧着作業は、2回に分けて行いました。1回目は、愛用のソマックス製T型クランプを使い長手方向の圧着を行いました。
2回目の圧着作業は、愛用のソマックス製Fクランプを使い短手方向の圧着を行いました。
修理作業中④/脚フレームの植物性オイル仕上げ作業
ぐらつき修理ができた脚フレームに、植物性オイル仕上げをする準備をしました。
もちろん、脚フレームにも、オスモ&エーデルさんの植物性オイルを使います。脚フレームには、透明の植物性オイルを2回塗りしましす。
塗装作業の基本は、塗りにくい部分(内部の木組み部分)から塗り始めて、塗りやすい部分(側面部)へ進めることです。
塗り終わったのちに、ウエスで拭き取ると、桟木の上に置いて、約12時間後の完全乾燥まで養生しておきます。
写真左に置いているのは、天板ウラ面に取り付けする反り止め用桟木です。
修理作業後/完成後納品させていただきました。
欅材一枚板テーブルの全面修理ができたのちに、O様のダイニングスペースに納品させていただきました。
O様、ご依頼いただき、搬入時にもお手伝いいただき本当にありがとうございました。土岐泰弘
21世紀は、メンテナンスの時代
O様に納品させていただいたのちに、欅一枚板天板のメンテナンス方法についてお伝えしました。
植物性オイル仕上げの長所は、素材感が際立ち自然な雰囲気に仕上がることです。この長所を持続させるために大切なことが、一年に数回のメンテナンスなんです。
オスモ&エーデルさんからは、メンテナンス用に “ワックス&クリーナー” が発売されていて、これを3ヶ月に一回程度掛けられることをお勧めさせていただきました。
また近年、SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を、テレビやラジオでよく見聞きするようになりました。
20世紀は、大量生産 → 大量消費 → 大量廃棄 の時代でした。
お客様からは「家具って使い捨てでしょ・・・。」という言葉もたくさん聞きます。
でも、使い捨てを続けてますと、SDGs(持続可能な開発目標)になりません。
コロナ渦の現在・・・永く使える家具を注文に応じて必要な数だけ作り、絶えずメンテナンスを繰り返し永く使っていく・・・。
メンテナンスを繰り返すたびに、家具への愛着も増していくと想われます・・・。
最後までお読みいただきありがとうございました。土岐泰弘