「使ってない座卓を、高めのテーブルに作り変えてほしいです。」・・・座卓がLD(リビングダイニング)テーブルに大変身
「およそ20年前に、土岐さんで買った椅子なんですが・・・。」
「歳をとって重く感じてきたので、肘の部分だけを切り取ってほしいのです。」
「肘だけを切ることってできますか・・・?」
と、新居浜市・H様が肘付きダイニングチェアをご持参くださいました。
「令和の時代に、土岐泰弘が必要だと想う家具の仕事」・・・リノベーション家具の製作
令和の時代に入り、家具に限らず、「ものを買い足し増やしたい」という よりも「ものを断捨離して少なくしたい」という話をよく聞きます。
また家具においては、家族構成の変化や生活スタイルの変化、引越し、歳をとったことなどで、
「永年使ってきて愛着はあるけれど、現在は使いにくくなった。」
「家族が少なくなって、大きすぎる・・・。」
「歳をとって、重すぎる・・・。」
「膝が悪くなって、床に座れなくなった・・・。」
などなど、このような話をよく聞くようにもなりました。
そこで、TOKI家具館メンテナンスが、令和に時代に必要だと想う仕事は、
永年使って愛着があるという家具に・・・
①加工を加えて、より使いやすくする!
②無垢材ヶ所を再資源化して、一度材料の状態に戻し、今必要とされている家具に作り変える!
という、リノベーション家具の仕事なんです。
この仕事をすることにより、ご不便を感じていた家具が、少しでも便利に使いやすく変身させることができると想います。
大量生産 → 大量消費 → 大量廃棄 の時代は、もう終わりだと想います。
令和に時代は、明治・大正・昭和・平成の時代に作られた愛着ある家具たちに、リノベーションという加工を加えて、より永く使っていくことが大切なことのように想っています。
リノベーション作業前①/H様からお預かりした肘付き椅子です。
この椅子は、飛騨高山・シラカワ様の和魂アームチェアです。
肘付き椅子は、左右に伸びた肘が、立ち座り時の支えにもなりますし、座っている時には腕が預けられてとっても楽なのですが、その分重量は重くなってしまいます。
リノベーション作業前②/切断予定ヶ所です。
背もたれと肘の取り付け部です。この部分を切るとなると、大変緊張作業になります。
前脚が伸びて、肘の支えになっています。この部分を切るには、デザイン性も考えなければなりません。
リノベーション作業中①/椅子の養生
初めに、座面を取り外して、背もたれの布張りヶ所を養生しました。
この作業は、単純に肘を切るだけでなく、切ったヶ所の塗装作業が必要になります。
塗装時に、布張りヶ所を汚さない工夫をしました。
リノベーション作業中②/肘部の切断作業
切り取るヶ所に墨付けして、慎重に切っていきました。
このように組み上がっている椅子に作業を加える時は、動力機械の定盤に乗せることができないため、ほとんどが手加工作業です。
そのため、TOKI家具館メンテナンスでは、手加工作業の向上に力を入れています。
2脚共に、肘部を切った状態です。切った肘の部材は、作業台に置いています。
近年、このような「椅子の肘を切ってほしい。」というご依頼が1年間に2~3件くらい入りますが、最初の肘を切る作業が、もっとも緊張するんです。
両刃のこぎりの横切りで切った、切断面です。
リノベーション作業中③/研磨作業
リノベーション作業中④/下地着色作業
研磨して生地出ししたヶ所に、下地着色していきました。
こういう小さな面積を塗る時は、タンポか刷毛で作業をしています。
下地着色が塗りあがった状態です。
背もたれの取り付け部も、接ぎのダボ跡は残るものの、比較的きれいに仕上がりました。
リノベーション作業中⑤/ウレタン樹脂塗装作業
椅子2脚を、塗装室に移動させて、サンディングシーラー → 補色調色 → ウレタンフラット の各工程を、3~4回拭きつけていきました。
切断した前脚部も、比較的きれいに仕上がりました。
リノベーション作業後/H様の椅子が完成しました。
塗装作業ができたのちに、木工作業場に戻し、座面の取り付けやフレーム全体のバランス調整作業を経て、完成しました。
背もたれと肘の取り付け部は、この通りきれいに仕上げることができました。
下の写真は、切断した2脚分の肘ですが、これを取り除くと、椅子自体もかなり軽くなったと思います。
切断した前脚部も、この通りきれいに仕上げることができました。
恐縮ですが、この椅子を見ると、最初から肘が無かった椅子に見えると思います。
少し時間はかかったものの、きれいに仕上がり感無量です。
H様、ご依頼いただきありがとうございました。土岐泰弘
人と人との関係性の大切さを感じた仕事でした。
今回の作業では、取引先のシラカワ様から、下地着色と上塗り用の純正塗料を供給していただきました。
シラカワ様の家具には、この写真のように検査証が貼られています。
しかも、塗装色や張り生地も明記していますので、今回のようなリノベーション作業や修理作業をする時に、この検査証がとっても役に立つんです。
H様のご依頼内容を、営業担当者のI様に伝えたところ、ペットボトルに入れて、純正塗料(SH色)を送ってくれました。
こういう心遣いがとってもうれしいですし、「どんなことでも相談しあえる」日ごろの人と人との関係性の大切さを感じました。
シラカワ様、ご協力いただきありがとうございました。土岐泰弘