ウィーンフィルハーモニー金貨
さて、第30回のコラムですが、「景気の行方 後編」についてお話したいと思います。前回の「プラチナの買取価格の行方 前編」をまだお読みでない方は、この「プラチナの買取価格の行方 後編」を読む前に、「プラチナの買取価格の行方 前編」をお読み下さい。
前回のコラムの続きですが、前回述べたように、日本と同じ様なバブル崩壊の過程を中国は辿らないのではないか、と思ってしまいます。では、中国のバブルが崩壊するとしたら、いったいどのようなきっかけなのでしょうか。
私が思う崩壊のきっかけはこれらです。
・過剰な設備投資の頭打ち
・好調な経済とは裏腹な為替
・政治体制の不安
まず、過剰な設備投資の頭打ちですが、中国が巨大な後進国とは言え、実体にそぐわない公共投資が大変目立ってきています。テレビなどでも、「このマンション誰が住むの?この道路誰が通るの?」と疑問に思う様なインフラ投資が非常に多くあるようです。もちろん、このまま中国が発展を続ければ、いずれ日の目を見るインフラ達なのでしょうけれども、世界から資本を集め、中国のインフラに一大投資をしてきた中国版高度経済成長は、内需に比べ、輸出とインフラ投資に過剰に依存しており、このインフラ投資が止まってしまえば、中国の経済には大きな打撃を与えてしまうきっかけになりかねません。先にも述べた様に、身の丈以上の実体にそぐわない設備投資は、不安要素のひとつだと思います。
次に、好調な経済とは裏腹な為替ですが、例えばギリシャの経済危機を例に取りますと、本来はあのような経済危機にはならないはずだったのです。というのは、景気がよくなれば、他国に比べ自国の通貨は上がり、景気が悪くなれば、他国に比べ自国の通貨は下がります。いわゆる「神の見えざる手」はこのような為替にも出てくるのですが、この「神の見えざる手」がギリシャには効かなかったのです。というのは、ギリシャはEUに加盟しており、自国の通貨ではなくユーロを導入していました。そのため、自国の財政状態や経済状態が為替に反映されず、「神の見えざる手」が出てこなかったのです。
と、このように具体的な内容は全く違えど、財政状態や経済状態とリンクしない為替というのは、不健全な状態であることは間違いありません。中国はあれほど好調な輸出を背景にしていながら、いまだに過小評価された人民元の為替レートで取引を行っています。これは一見すると中国が有利な状態に見えますが、不健康なルールでの取引ですので、これも不安要素のひとつだと思います。
最後に、政治体制の不安ですが、中国での日本バッシングにみられるように、なにやら騒がしい政治環境になってきていると思います。これは中国-日本だけの関係だけではなく、中国-フィリピン、中国-ベトナムなどの関係悪化に見られる様に、中国の覇権主義による周辺諸国との関係悪化が大変目立ってきています。また、政治=共産主義、経済=資本主義、という組み合わせが今後もこのまま維持出来るとはなかなか思えません。加えて、中国の覇権主義は、本来の共産主義の姿から離れつつあるのではないかと思ってしまいます。
もし、中国でバブルがはじけるとすれば、それはこれらのようなきっかけで終わりの始まりが始まるのではないかと思います。
有限会社池田質舗