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AI特許の環境
特許庁がAI関連発明の出願状況調査結果を更新・公表しました。
特許庁 AI関連発明の出願状況調査 *2021年4月までの公開データに基づく
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/ai/ai_shutsugan_chosa.html
調査結果によれば、日本国内のAI関連特許出願は、堅調な増加傾向にあるとしています。
世界的には中国、及び、米国が圧倒している状況です。日本の10倍以上の出願件数です。
AI特許とは?
「AI」という言葉に対し、類語として「機械学習」、「ディープラーニング」等の言葉があります。
G検定の教科書等でもAIの定義は議論されていますが、現状では様々な定義があり、一本化された定義はまだありません。
特許庁の調査では、AI特許とはIPC(国際分類)で「G06N」が付与された出願(+関連出願)を指すようです。
AI特許の審査基準
特許庁はAI関連出願用に、専用の事例集を公開しております。
AI関連技術に関する特許審査事例について
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/ai_jirei.html
詳しくは直接資料を読んでもらいたいですが、上記事例を見ると、大きくは下記の「サポート要件」と「進歩性」が重要なポイントとされています。
AI特許のサポート要件
当該事例集で紹介されている事例46~51を簡単に解説すると、相関関係の説明が重要となります。
相関関係は、下図に示すように、教師データ―出力の関係です。
つまり、教師データ(実行段階では、未知の入力データです。)を見ると、なぜ予測等ができるか?という理屈の説明です。
ただし、統計データ等でもよいため、「なぜかそうなる」というものでもデータで裏付けがされているのであれば説明になります。
データマイニングの事例で有名な「ビールとおむつ」のような関係でも統計的な裏付けがあれば権利化できるということになります。
AI特許の進歩性
事例33~36が例に記載されています。一言で説明しますと、下記のようなポイントで進歩性が肯定/否定されます。
(進歩性否定例 事例33)人が判断していたもの(公知技術の手法)をAIに置き換える
(進歩性否定例 事例34)公知技術と同じデータ+AI
(進歩性肯定例 事例34)公知技術と同じデータ+新データ+AI→顕著な効果
(進歩性否定例 事例35)公知技術と同じデータの組み合わせ+AI、顕著な効果なし
(進歩性肯定例 事例36)前処理に工夫
上記の事例集をまとめると、進歩性には下記のようなポイントがあります。
1:まず公知技術(≒新規性)の特定/調査が重要
2:公知技術と前処理/入力するデータに違いがあると進歩性が肯定される可能性
事例集では明記がありませんが、出力側/インタフェース(GUI等)に特徴があっても進歩性は肯定される可能性があります。
例えば、AI分野で倫理的に問題となっている出力結果を説明する等の機能/表示はポイントになり得るでしょう。
特許性があるか否かをチェックするとしたら理論上、以下のようなポイントでしょう(画像入力方式の例です。他にも考えられますが代表的なものに絞ります。)
(教師データ・入力データ)
①:公知技術で使っているデータと異なるデータを用いる場合です。
→補助データ等の追加がある場合も該当
→使うデータを限定する場合も該当
(入力側)
②:前処理(≒入力するデータをそのまま学習に用いない。)
(学習モデル)
③:最適化する対象の限定
→学習させるパラメータ/学習対象から外すパラメータ等の限定がある場合+その理由・効果
(出力側)
④:教師データ・入力データとの相関関係が新規(公知技術では想定していない)
⑤:出力の仕方に工夫(例:GUI、補足データの表示等)
ただし、単に限定/違いがあれば間違いなく特許性が認められるわけではありません。
最も警戒すべきは「公知技術が何になるか?」でしょう。
また、上記のポイントは、典型的なディープラーニング・画像データ利用のものです。他のポイント/形態でも可能性はあります。
まずは「どういった点を工夫したか?」を特定するのが肝要です。
上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。