【知財】【補助金】【東京都立川市】シリーズ(第29回)立川産品販路拡大等支援事業
今回は知財戦略についてになります。・・・とは言ったものの知財戦略自体の解説はよくある解説なので、
情報戦略との整合される1つの方法に絞って解説しようと思います。
戦略とは/言葉の定義
国語的・文言的には、「戦略」は広範な計画等を指す言葉です。軍事・政治・スポーツ・経営等の様々な場面で用いられます。
そのため、場面・分野により少しずつ定義が異なりますが、おおむね、まず目標・全体的な成功があり、目標を達成するための論理・手段を言う場合が多いです。
同じような言葉で「戦術」がありますが、「戦術」は「戦略」を実現する上で発生する個々の戦闘での手段を指します。
スポーツ等でいうリーグやトーナメントで優勝するために立案するのが「戦略」ならば、個々の試合に勝つ手段が「戦術」という関係です。
言い方を変えると、どのような「戦術」を行使して、全体的にどの方向に勝ち進んでいけばよいかという全体的な方針・目標が「戦略」でしょう。
ちなみに、戦略を実行する上で阻害となる要因は外部・内部に発生します。そのうち、内部要因の主となるものが「政治」や「組織官僚」等と呼ばれるものです。
参考にした文献
戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方 PHP文庫 松村劭著
https://www.amazon.co.jp/%E6%88%A6%E8%A1%93%E3%81%A8%E6%8C%87%E6%8F%AE%E2%80%95%E5%91%BD%E4%BB%A4%E3%81%AE%E4%B8%8E%E3%81%88%E6%96%B9%E3%83%BB%E9%9B%86%E5%9B%A3%E3%81%AE%E5%8B%95%E3%81%8B%E3%81%97%E6%96%B9-PHP%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%9D%BE%E6%9D%91-%E5%8A%AD/dp/4569665969
https://www.google.co.jp/books/edition/%E6%88%A6%E8%A1%93%E3%81%A8%E6%8C%87%E6%8F%AE/__AZoXgQytMC?hl=ja&gbpv=1&printsec=frontcover
V字回復の経営 2年で会社をかえられますか 日経ビジネス人文庫 三枝匡著
https://www.amazon.co.jp/V%E5%AD%97%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E3%81%AE%E7%B5%8C%E5%96%B6%E2%80%952%E5%B9%B4%E3%81%A7%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%82%92%E5%A4%89%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%8B-%E6%97%A5%E7%B5%8C%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E4%BA%BA%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%B8%89%E6%9E%9D-%E5%8C%A1/dp/4532193427
https://www.google.co.jp/books/edition/%EF%BC%B6%E5%AD%97%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E3%81%AE%E7%B5%8C%E5%96%B6_2%E5%B9%B4%E3%81%A7%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%82%92/6_ebDwAAQBAJ?hl=ja&gbpv=1&printsec=frontcover
知的財産権は、権利ですからツール・手段の一種になります。知財活動は、企業活動の一種ですから、最終的には経営理念を実現することが目標です。
知的財産関連法は、権利者が自ら特許発明等を実施するのを前提とし、独占的に実施できる有利な環境を確保するように制度設計されています。
ただし、 知的財産権自体を売却、又は、ライセンス収入のみで、権利者自身は実施しないで利益を作り出すというビジネスモデルもあります。
知財特有の戦略
上記の「戦略」と「戦術」の関係で言うならば、個々の特許権をどう権利化していくかは「戦術」になり、
複数の権利を組み合わせてポートフォリオを構成し、どう扱っていくかが1つの「戦略」と言えます。
ポートフォリオは、例えば、下図のように、バブルチャート等の形式で表現されます。
主には下記のような点に注目してポートフォリオを描きます。
- 自社で実施する製品/分野
- 激戦区/ニッチ市場
- 製品/サービスを実現する必須構成(≒部品)の組み合わせ
特許権は、製品戦略/マーケット戦略と共通する点もあれば、異なる点もあります。
激戦区/ニッチ市場の考え方は基本的に製品戦略/マーケット戦略と同じです。基本的には激戦区を避ける方が先願が少なく、権利化がしやすいです。
ただし、特許権の場合には、「権利だけ確保しておく」という戦略もありえます。つまり、自社製品を投入するつもりはない市場でも、他社が活発な市場で権利だけを確保するという戦略です。理論上、ライセンス収入等が見込めることになります。
こういった「攻め」の要素を持たせるのも戦略の1つになります。
一方で、自社が製品投入を行っていく市場を着実に権利化していくのが「守り」の要素になります。ここが出願戦略では基本となる場合が多いです。
また、前提になりますが、技術・アイディアがないところには出願ができません。ポートフォリオを考えて、将来的に権利を増やしていきたいところを技術戦略へフィードバックするのも知財戦略の一環になります。
情報戦略との整合
一般的に、開発→テスト→製品化という大きな流れの中で、どのタイミングで出願を検討するかが1つのポイントになります。
例えば、ウォータフォールモデルで開発/テストをする場合には、下図のような流れになります。
技術の内容によりますが、経験上、特許出願が検討できるタイミングは、外部設計~内部設計、システムテストあたりが多いです。
特許権は、発明が完成していないと認められません。
この「完成」は、要求・機能が抽出された時点ではまだ達していない場合が多いです。理論上、「要件定義」あたりになります。
一方で、特許出願書面には、具体性が要求されますが、ソースコードのレベルまでは不要な場合が多いです。つまり、「コーディング」が終わるまで待つ必要はありません。
書面的にいえば、フローチャート/シーケンス図が描ける場合には、特許法上の「完成」に達している場合が多いです。
また、特許書面では、変形例も権利内にできる場合が多く(ただし、単一性等が必要です。)、1つの要望・機能に対し、実現・実装可能な技術は、複数の候補が出る場合があります。
いわゆる「ボツ」となり実装・開発されないアイディアも権利内とし、広い権利を作ることができる場合があります。
実務上、こういった「ボツ」となるネタは以降登場しないので消えてしまうことが多いため、早めに書き留めておき、権利だけは持つということができます。
システムテストは、実際に運用してテストされるため、UIに対する不満や実装しなかった機能の要望が具体的に出てくる段階です。
ウォータフォールモデルの場合、一度テストまで完了すれば開発は終了します。実務上は、このような不満や要望は「二次開発」等の次に回されることが多いです。
その場合でもエンジニアであれば、すぐに実装は難しくとも、当てる技術や改良方法はすぐに思いつくという場合があります。こういったものも、変形例・改良案として出願書面に明記しておけば1つの権利でまとめて権利にできる場合があります。なお、先に出願済みであっても、時期によっては国内優先権主張で追加できる場合があります。
また、ウォータフォールモデル以外に、アジャイル、スパイラルモデル、スパイラルモデルでも、
上記の「外部設計」や「システムテスト」に相当する、仕様がある程度固まった段階や実際にテストしてみた段階というのがあります。
このような段階で権利化を検討するというプロセスを持つのが、1つの戦略になります。
上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。