【知財】【全国共通】特許料等の減免制度(補助金解説シリーズ第7回)
シリーズで色々と解説してきましたが、実際に特許出願をしてみる場合の段取りだけをまとめてに解説してみます。なお、以下の解説は基本的に個人、又は、知財部門がない中小企業の技術者の視点で解説します。
流れ
特許出願をする流れを解説する上で大きく「準備」と「書類作成」の段階に分けます。
「準備」→「書類作成」の流れですが、「準備」に入る前に「前提」の内容は完了している状態であるというのが条件になります。
解説なので明確に段階を分けていますが、実際には理解してもらえる代理人であればもっと簡略に済みます。
発明の完成
前提として出願する内容は代理人・審査官等に説明できるように具体化・資料化していなければなりません。
ただし、特許出願における「具体性」は、外注等に要求される仕様書程度までは要求されない場合が多いです。
従来の技術との違いがはっきりと分かる・特徴にしたい点がはっきりしている・技術的に工夫された点がある等の場合には「完成」している程度に達している場合が多いです。
説明用書類の準備
代理人等に説明するため、発明内容を資料化します。
お薦めとしては「図面」と「公知文献」を意識すると正確で簡単に資料を作ることができます。
説明用書類とは?
「特許出願申請書」、「発明届出書」、「仕様書」等と言われる場合もありますが、法律上、決まった呼び方はありません。企業・大学ごとにフォーマットが用意されている場合もあります。
下記のような内容を求める場合が多いです。
- 発明者名(複数人で開発した場合は全員、フルネーム)
- 共同出願人の情報(権利を複数の企業等で分けて保有する場合)
- 公知技術/関連出願
- 技術分野
- 効果・課題
- 図面
- 実験データ
- スケジュール(特にイベントがある場合)
- 請求項案/キーワード
- 外国出願の希望
- 重要度
(図面について)
機械分野では、設計図(断面図等を含みます。)、及び、外観図があるのが望ましい場合が多いです。
IT分野では、フローチャート、及び、システム図等の形式にする場合が多いです。
明細書・図面は最終的には下記のような形式に作成します。
明細書の記入例
https://faq.inpit.go.jp/industrial/faq/search/result/10971.html
図面の記入例
https://faq.inpit.go.jp/industrial/faq/search/result/10973.html
他にも要約書・願書等の書類が必須です。
各種様式一覧
https://faq.inpit.go.jp/industrial/faq/search/result/10939.html?event=FE0006
最終的な書面は代理人が整えます。特許出願書面は細かくルールがあります(特に外国が関係する場合)。
そのため、この段階で完璧に整える必要はありません。一度代理人に見せてみるのをお薦めします。
あと、公知・一般的な内容は詳しく説明が不要です。特に公知文献等に明記がある場合には詳しい説明は不要です。
ただし、発明と関係が深い部分は審査官が気にする場合があります。このあたりの匙加減は代理人と相談するのをお薦めします。
なお、私の場合ですが、技術が理解できれば十分ですので、他に仕様書やプレゼン資料を作っている場合にはそれの流用で結構です。試作品がある場合には書面不要でも大丈夫な場合が多いです。わざわざ「出願用」に書面を起こす必要はありません。このあたりは知財部門・代理人ごとの理解度・やり方が強く出ますのであくまでも参考程度にして下さい。
公知文献とは?
技術的に近しい製品・技術等を示す書類です。
審査では特許公報形式のものが引用されることが多いです。
特許公報形式の書類は下記URLのサイトで検索することができます。
特許情報プロットフォーム J-Platpat
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)講習会
https://www.inpit.go.jp/j-platpat_info/lecture/index.html
なお、公知文献は特許公報形式の資料に限りません。
図書、論文、解説ホームページ、外国文献等の形式でも該当します。紙媒体・電子のどちらでも該当します。
最終的には明細書に下記URLのような形式で記載します。
先行技術文献情報開示要件(特許法第36条第4項第2号) https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/02_0103bm.pdf
ちなみに公知文献は代理人・調査会社等に依頼することも可能です。
弁理士へ依頼~原稿作成
説明用書類の準備が準備できた後、代理人へ依頼します。
多くの場合、代理人に依頼すると、代理人は打ち合わせを希望します。
打ち合わせでは、発明の内容、権利化を希望する特徴、スケジュール、及び、公知文献の内容等を聞く場合が多いです。
ただし、打ち合わせの内容は代理人のやり方/個別の事情等により異なります。
打ち合わせ後、代理人側で書類を作成することになります。これによって特許出願できる書面が揃います。
また、書類を完璧にするのは難しい場合が多いのですが代理人に相談してみればカバーできることも多いので書類作成の時間が取れない場合には代理人にまず相談してみるというのも手です。
相談が早すぎるということはまずありません。逆に特許は新規性等が問われる関係上、手遅れで権利化が難しくなることはよくありますので特に注意して下さい。
ちなみに出願には費用がかかります。詳しくはシリーズ第3回をご覧ください。
シリーズ第1回で記載しました下記質問に対応するものになります。
質問1:この発明は特許になりますか?
詳しくはシリーズ第2回に記載しておりますが、
代理人は上記の説明用書類があれば技術的な要件と法的・書式的な要件が相談にのれます。
より権利化させる可能性を高くするには等の補強策も提案できる場合があります。
質問5:どういったときに出願が必要ですか?
特許出願をする典型的な場合は、イベントがある前です。
具体的には、ホームページ記載、製品(試作品を含みます。)の開示、開業、学会発表、論文等の書面へ投稿等といったイベントが該当します。
特許は権利化の上で新規性が求められます。そのため、イベントで一度開示すると基本的に公知技術となり、以降の権利化は「新規性なし」で権利化が難しくなります。ただし、例外はあります。
そのため、イベントを考えている場合には、その前の時点でチェック・出願検討をするのがお薦めです。
上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。