【知財】【全国共通】特許料等の減免制度(補助金解説シリーズ第7回)
発明者・出願人でなく、支援側の方向けの内容になります。少し珍しい視点かもしれません。
シリーズ第1回で記載しました下記質問に対応するものになります。
質問1:この発明は特許になりますか?
質問2:特許権を取得・維持する費用は?
まず認識を持つことが第一歩になる。
知的財産全般で最も怖い点は侵害行為の容易さ、無自覚な点にあります。
例えば、製造業において、特定の部品が揃わなければ製品の製造・開発は強制的に中断します。
ところが知的財産権は揃わなくとも、その場は一応続行できてしまう、無形資産特有の特性があります。
そのため、検討がなくともズルズルと進んでいってしまう体制等が怖く、特に認識がない場合にはチェックさえもないといった体制が確立してしまう怖さがあります。
こういった点を外部視点でチェック・指摘するのが外部の経営支援者を利用するメリットにもなります。
前回(知財戦略立案)でも紹介した通り、知財業務を遂行する人材は全体的に不足傾向にあります。
知的財産を扱うには特殊スキルが要求されますが、認識を持つことには特殊スキルは不要です。
知的財産権の侵害は不法行為です。ちなみに刑事罰(侵害罪、例えば、特許法では特許法第196条)まであります。
「知らなかった」が通らない厳しい制度ですので、まずは認識を持たせてあげることが第一歩となります。
近年、スタートアップ企業も知財を重視する傾向がありますから、支援側も認識を高めて接することも重要になりつつあります。
スタートアップ、知財戦略に軸足 競合登場を防止 日本経済新聞記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC144RF0U1A610C2000000/
基本戦術は調査と出願である。
他社の権利侵害を回避する基本戦術は調査することにあります。
すなわち、どこに他社の権利があるかを認識することが肝要になります。
調査は、経験がなくとも調査会社・特許事務所等に依頼可能です。
また、調査は一般的な検索エンジン等でキーワードを入れて出てくることもあります。
ほかにも無料のツールは下記のようにいくつか用意されています。
特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
Google Patents
https://patents.google.com/
Patentfield
https://patentfield.com/
業種別特許ランキング IPForce
https://ipforce.jp/
出願は基本的に自社の実施形態に合う権利を獲得するためのものになります。
知的財産権制度は基本的に先願主義、いわゆる早い者勝ちの制度になっています。
また、原則同一の権利範囲の権利は存在させない制度です(ダブルパテント禁止の原則等と呼びます)。
つまり、自社で権利を確保してしまい、その範囲で実施しているのであれば、原則他社の権利範囲に該当するはずはないという理屈が成立します。
ただし、事実上同じ権利範囲の権利の併存、後発的に無効になる、利用関係、及び、他の法域との抵触等といった例外はあります。
上記のように、自社が実施していく事業に他社の権利がないか、及び、自社の実施を担保する権利を確保していくことが、
知財戦略の基本となる場合がほとんどです。
権利取得ありきになりやすい点に注意が必要である。
上記の通り、知財関連人材は特殊で基本的に人手不足にあります。さらに、これを経営視点で考える人材というとより少ないです。
これは昔から続く難題です。
外部専門人材の不足 知的財産取引検討会(第1回) 配布資料 資料4P.17
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/chizaitorihiki/2020/200722chizaitorihiki04.pdf
両視点を持つ専門家を探せるのが理想ですが、「無いものねだり」対策として少し経営者・支援側でも戦略的な思考を持つのが良いでしょう。
基本的には、従来の経営戦略・マーケット戦略と同じ思想が通用します。
(SWOT視点)
強み(S)、すなわち、得意技術がある、専門技術を持つ人材がいる、市場に明るい等といった分野を特定し、
製品開発等を行います。いわゆる強みを活かすという戦略です。
一方で、1つの技術では成り立たない製品では、自社で技術が確保できないところが弱み(W)になります。
弱み(W)を補うために、他社と連携等が考えられる戦略となります。
(Seed&Needs視点)
中小企業が基本的に取るべき戦略は、基本的に競争回避とニッチ市場への集中になります。
まず、激戦区、及び、ニッチ市場を把握することが戦略立案の前提になります。
次に、他社が参入しない市場であっても、ニーズがないと事業が成り立ちません。ここでマーケット戦略との整合、つまり、マーケット調査情報と合わせる必要が出てきます。
さらに、ニーズがあっても、そこに投入できる技術・アイディアがなければ戦略は成立しません。ここで技術戦略との整合、つまり、技術力が試されることになります。
上記の戦略立案を図にすると、下図のようになります。
SWOT分析等で強みに「品質」や「技術力」が記載されることが多いですが、案外客観的な根拠に乏しい場合が多いです。
その点、知財調査結果を使うと可視化・定量化できるというのが知財情報を用いる1つのメリットになります。
また、知的財産は公の場になるほど厳しくチェックされる傾向にあります。
一方で、近年の補助金制度は大抵の場合には知的財産権の取得費用を対象にしています。例えば、下記のような補助金で対象になっています。
事業再構築補助金 公募要領P.20
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo001.pdf
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領P.14
https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/7th/reiwakoubo_210616.pdf
チェックが厳しくなる一方で取得支援の制度も手厚くなってきています。
今後、知的財産権によるブランド戦略・模倣品対策・参入障壁の構築等の戦略立案が求められるようになる可能性があります。
質問1:この発明は特許になりますか?
いざ特許出願をすると決める場合に、最も技術的に気にされるのがこの点になります。
詳しくは「はじめての出願 特許になるもの、ならないもの(シリーズ第2回)https://mbp-japan.com/chiba/tsuboi/column/5087445/」で記載しております。
これも対策の基本としては調査になります。つまり、自社・他社を含めてどういったものが公知であるかという現状把握になります。
工夫した点があれば出願を検討する価値はあるとは思いますが、そこからは個別の内容によります。
質問2:特許権を取得・維持する費用は?
こちらもいざ特許出願をすると決める場合に、最も財務的に気にされるのがこの点になります。
詳しくは「【知財】【基礎】はじめての出願 特許っておいくら?(シリーズ第3回)https://mbp-japan.com/chiba/tsuboi/column/5088022/」で記載しております。
特許出願は中小企業にとっては安い買い物ではありません。補助金制度等の活用や上記の通り「権利取得ありき」にならないように配慮してあげる点が肝要になります。
上記の内容で不明な点がございましたら、お手数ですがメール等でお問い合わせ下さい。
以上、ご参考まで。