産業保健スタッフを“最後の砦”から“身近な伴走者”へーストレスチェック義務化拡大を「活かす」へ④―

近藤ひろえ

近藤ひろえ

テーマ:メンタルヘルス



シリーズ第4回では、
事業場内保健スタッフによるケアを
取り上げます。

産業医や保健師、衛生管理者と聞くと、
どのような場面を思い浮かべるでしょうか。

健康診断。
ストレスチェック。
休職や復職の面談。

そうした場面で関わる人、
というイメージが強いかもしれません。

けれども本来は、
不調が深刻になってから登場する
「最後の砦」だけではありません。

日頃から職場の健康度を支え、
必要なときに早めにつながる
“伴走者”のような存在です。

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産業保健スタッフの役割は、
個人の不調対応だけに
限られるものではありません。

健康診断やストレスチェックの実施、
高ストレス者への面接指導、
必要に応じた就業上の配慮。

こうした個別支援に関わる一方で、
職場全体を見ていく役割もあります。

たとえば、職場巡視。
衛生委員会での助言。
働き方や職場環境への気づきの共有。

一人ひとりの健康と、
職場全体の環境。


その両方をつなぐところに、
事業場内保健スタッフの
大切な役割があります。

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ただ、実際には
産業医面談や保健師との面談が、
少し怖いものとして
受け止められていることがあります。

「面談に行ったら、
 休職をすすめられるのではないか」

「復職できるかどうかを
 判定される場なのではないか」

そんな印象が強くなると、
本人も管理職も
相談をためらいやすくなります。

本来は、困ったときに
早めに相談できる場所

であるはずです。

そのイメージを
職場の中でどう伝えていくかが、
連携を進めるうえで
とても大切になります。

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不調が疑われるときには、
現場だけで判断しきれないことが
多くあります。

管理職が変化に気づく。
人事に相談する。
必要に応じて産業保健スタッフにつなぐ。

この流れがあらかじめ見えていると、
対応は進めやすくなります。

反対に、
「誰に相談すればよいのか」
「どの段階でつなげばよいのか」
が曖昧だと、

管理職が一人で抱え込んだり、
対応が遅れたりしやすくなります。

産業保健スタッフにつなぐことは、
管理職の責任放棄ではありません。

適切な支援につなぐための、
大切な判断です。

________________________________________

連携するときには、
どの情報を共有するかも
丁寧に考える必要があります。

共有したいのは、
仕事上見えている事実です。

欠勤や遅刻が増えている。
業務の遅れが続いている。
ミスが増えている。
残業が続いている。
本人から負担感の訴えがあった。

こうした情報は、
支援を考えるための手がかりになります。

一方で、本人の私生活や病名の推測、
必要以上に細かな感情の記録は、
慎重に扱いたいところです。

「何となく心配」だけではなく、
見えている事実を整理して伝える。

それだけでも、
専門職との連携は
進めやすくなります。

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本人への伝え方も大切です。

「産業医に行ってください」
とだけ言われると、
受け取る側は不安になります。

「最近の様子を見ていて、
 少し心配している。
 今の状況を整理するために、
 一度、専門の人にも相談してみよう」

「これは、何かを決めつけるための場じゃない。
 仕事を続けやすくするために、
 どんなことができるかを一緒に考える時間だよ」

このように伝えると、
面談の意味が少し変わります。

判定される場ではなく、
今後の働き方を一緒に考える場。

そう受け止められると、
本人もつながりやすくなるのではないでしょうか。

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休職や復職の場面でも、
産業保健スタッフの役割は
とても重要です。

ただし、役割は
「休むか、戻るか」を
決めることだけではありません。

どのような段階で戻るのがよいか。
業務量はどこから始めるか。
勤務時間や担当業務に
どのような配慮が必要か。

こうした点を、
本人、主治医、人事、管理職と
つなぎながら考えていきます。

段階的な復職や、
試し出社のような進め方が
選択肢になることもあります。

大切なのは、
「元の状態に一気に戻す」ことだけを
目標にしないことです。

無理なく働き続けるために、
どのような環境を整えるか


そこに産業保健スタッフの知見が
活きてきます。

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現場への説明には難しさもあります。

本人への配慮が必要な一方で、
周囲のメンバーにも
仕事の負担が生じることがあります。

だからこそ、
どこまで伝えるのか、
どのように業務を調整するのかを、
人事や産業保健スタッフと
相談しながら進めることが大切です。

本人の健康情報を守ること。
チームとして仕事を回すこと。
職場の公平感を保つこと。

この三つのバランスを取るには、
管理職だけで抱え込まない仕組みが
必要
になります。

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産業保健スタッフを活かせている組織には、
いくつかの共通点があります。

相談窓口が分かりやすい。
人事と産業保健スタッフが
定期的に情報交換している。
管理職が相談できる流れを知っている。

そして、困ってから初めて会うのではなく、
日頃から顔の見える関係がある。

この「相談しやすさ」は、
とても大きなポイントです。

反対に、制度はあっても
誰に相談すればよいか分からない。

面談の目的が伝わっていない。
産業医や保健師が、
遠い存在になっている。

そのような状態では、
せっかくの専門性が
活かしきれないこともあります。
________________________________________

今回のまとめです。

事業場内保健スタッフによるケアは、
特別な問題が起きたときだけのものではありません。

日常の予防。
早期の相談。
不調時の支援。
復職後の定着。

そのどの場面にも関わる、
職場の健康づくりの
大切な支えです。

産業医や保健師、衛生管理者を
「最後の手段」として見るのではなく、
早めに相談できる身近な伴走者として
位置づけていく。

その意識が、
職場のメンタルヘルス対応を
一段進めるきっかけになるように思います。

________________________________________
あなたの会社では、
産業医や保健師を
「最後の手段」ではなく、
「早めに相談できる身近な伴走者」として
位置づけられているでしょうか。

次の一年で、
産業保健スタッフとの連携の仕方を
一つだけ変えるとしたら、
どの点を見直したいですか。

*****************************************
次回は、
事業場外資源によるケアと、
企業がとれる現実的な選択について
考えていきます。

社内だけでは抱えきれないとき、
どのような支援につながることができるのか。

外部の力を借りることも、
職場を守るための
大切な選択肢です。

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近藤ひろえ
専門家

近藤ひろえ(人材教育・メンタルヘルス講師)

人材育成研修「リベル」

わかりやすく納得感が高まる体験型の研修で職場の課題解決をサポート。現場ですぐに生かせる具体的な方法を伝え、新入社員から管理職まで、すべての人が働きやすく生産性の高い職場づくりを提案。

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