セルフケアを「本人任せ」から「職場で育てる力」へ ーストレスチェック義務化拡大を「活かす」へ②―

シリーズ第4回では、
事業場内保健スタッフによるケアを
取り上げます。
産業医や保健師、衛生管理者と聞くと、
どのような場面を思い浮かべるでしょうか。
健康診断。
ストレスチェック。
休職や復職の面談。
そうした場面で関わる人、
というイメージが強いかもしれません。
けれども本来は、
不調が深刻になってから登場する
「最後の砦」だけではありません。
日頃から職場の健康度を支え、
必要なときに早めにつながる
“伴走者”のような存在です。
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産業保健スタッフの役割は、
個人の不調対応だけに
限られるものではありません。
健康診断やストレスチェックの実施、
高ストレス者への面接指導、
必要に応じた就業上の配慮。
こうした個別支援に関わる一方で、
職場全体を見ていく役割もあります。
たとえば、職場巡視。
衛生委員会での助言。
働き方や職場環境への気づきの共有。
一人ひとりの健康と、
職場全体の環境。
その両方をつなぐところに、
事業場内保健スタッフの
大切な役割があります。
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ただ、実際には
産業医面談や保健師との面談が、
少し怖いものとして
受け止められていることがあります。
「面談に行ったら、
休職をすすめられるのではないか」
「復職できるかどうかを
判定される場なのではないか」
そんな印象が強くなると、
本人も管理職も
相談をためらいやすくなります。
本来は、困ったときに
早めに相談できる場所
であるはずです。
そのイメージを
職場の中でどう伝えていくかが、
連携を進めるうえで
とても大切になります。
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不調が疑われるときには、
現場だけで判断しきれないことが
多くあります。
管理職が変化に気づく。
人事に相談する。
必要に応じて産業保健スタッフにつなぐ。
この流れがあらかじめ見えていると、
対応は進めやすくなります。
反対に、
「誰に相談すればよいのか」
「どの段階でつなげばよいのか」
が曖昧だと、
管理職が一人で抱え込んだり、
対応が遅れたりしやすくなります。
産業保健スタッフにつなぐことは、
管理職の責任放棄ではありません。
適切な支援につなぐための、
大切な判断です。
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連携するときには、
どの情報を共有するかも
丁寧に考える必要があります。
共有したいのは、
仕事上見えている事実です。
欠勤や遅刻が増えている。
業務の遅れが続いている。
ミスが増えている。
残業が続いている。
本人から負担感の訴えがあった。
こうした情報は、
支援を考えるための手がかりになります。
一方で、本人の私生活や病名の推測、
必要以上に細かな感情の記録は、
慎重に扱いたいところです。
「何となく心配」だけではなく、
見えている事実を整理して伝える。
それだけでも、
専門職との連携は
進めやすくなります。
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本人への伝え方も大切です。
「産業医に行ってください」
とだけ言われると、
受け取る側は不安になります。
「最近の様子を見ていて、
少し心配している。
今の状況を整理するために、
一度、専門の人にも相談してみよう」
「これは、何かを決めつけるための場じゃない。
仕事を続けやすくするために、
どんなことができるかを一緒に考える時間だよ」
このように伝えると、
面談の意味が少し変わります。
判定される場ではなく、
今後の働き方を一緒に考える場。
そう受け止められると、
本人もつながりやすくなるのではないでしょうか。
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休職や復職の場面でも、
産業保健スタッフの役割は
とても重要です。
ただし、役割は
「休むか、戻るか」を
決めることだけではありません。
どのような段階で戻るのがよいか。
業務量はどこから始めるか。
勤務時間や担当業務に
どのような配慮が必要か。
こうした点を、
本人、主治医、人事、管理職と
つなぎながら考えていきます。
段階的な復職や、
試し出社のような進め方が
選択肢になることもあります。
大切なのは、
「元の状態に一気に戻す」ことだけを
目標にしないことです。
無理なく働き続けるために、
どのような環境を整えるか。
そこに産業保健スタッフの知見が
活きてきます。
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現場への説明には難しさもあります。
本人への配慮が必要な一方で、
周囲のメンバーにも
仕事の負担が生じることがあります。
だからこそ、
どこまで伝えるのか、
どのように業務を調整するのかを、
人事や産業保健スタッフと
相談しながら進めることが大切です。
本人の健康情報を守ること。
チームとして仕事を回すこと。
職場の公平感を保つこと。
この三つのバランスを取るには、
管理職だけで抱え込まない仕組みが
必要になります。
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産業保健スタッフを活かせている組織には、
いくつかの共通点があります。
相談窓口が分かりやすい。
人事と産業保健スタッフが
定期的に情報交換している。
管理職が相談できる流れを知っている。
そして、困ってから初めて会うのではなく、
日頃から顔の見える関係がある。
この「相談しやすさ」は、
とても大きなポイントです。
反対に、制度はあっても
誰に相談すればよいか分からない。
面談の目的が伝わっていない。
産業医や保健師が、
遠い存在になっている。
そのような状態では、
せっかくの専門性が
活かしきれないこともあります。
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今回のまとめです。
事業場内保健スタッフによるケアは、
特別な問題が起きたときだけのものではありません。
日常の予防。
早期の相談。
不調時の支援。
復職後の定着。
そのどの場面にも関わる、
職場の健康づくりの
大切な支えです。
産業医や保健師、衛生管理者を
「最後の手段」として見るのではなく、
早めに相談できる身近な伴走者として
位置づけていく。
その意識が、
職場のメンタルヘルス対応を
一段進めるきっかけになるように思います。
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あなたの会社では、
産業医や保健師を
「最後の手段」ではなく、
「早めに相談できる身近な伴走者」として
位置づけられているでしょうか。
次の一年で、
産業保健スタッフとの連携の仕方を
一つだけ変えるとしたら、
どの点を見直したいですか。
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次回は、
事業場外資源によるケアと、
企業がとれる現実的な選択について
考えていきます。
社内だけでは抱えきれないとき、
どのような支援につながることができるのか。
外部の力を借りることも、
職場を守るための
大切な選択肢です。


