産業保健スタッフを“最後の砦”から“身近な伴走者”へーストレスチェック義務化拡大を「活かす」へ④―

今回は、ラインによるケアにおける
管理職の役割を取り上げてみたいと思います。
従業員のメンタル不調に、
最初に違和感を覚えるのは、
産業医やカウンセラーではなく、
日々顔を合わせている管理職であることが
多いのではないでしょうか。
「最近、表情が暗い」
「ミスが増えている」
「メールの文面がいつもと違う」
そんな小さな変化は、
近くにいる人だからこそ
気づけるサインかもしれません。
ただ、管理職からは
戸惑いの声もよく聞かれます。
「どこまで踏み込んでいいのか」
「自分はメンタルの専門家ではない」
「声をかけて、かえって傷つけたらどうしよう」
その不安は、とても自然なものです。
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ここで大切なのは、
管理職はメンタルヘルスの専門家に
なる必要はない、ということです。
ラインによるケアで求められるのは、
治療やカウンセリングをすることではありません。
- 変化に気づくこと。
- 声をかけること。
- 必要に応じて人事や産業保健スタッフにつなぐこと。
そして、職場環境を見直すこと
です。
管理職は、
すべてを一人で解決する人ではなく、
現場と支援をつなぐ
“ハブ”のような役割
だと考えると、
少し肩の力が抜けるかもしれません。
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早期の気づきは、
特別な観察力が必要なわけではありません。
大切なのは、
「いつもとの違い」に目を向けることです。
・出社頻度が変わった。
・遅刻や欠勤が増えた。
・表情が硬くなった。
・会議での発言が減った。
・報告が遅れる。
・小さなミスが続く。
・メールの返信が極端に短くなる。
こうした変化は、
本人の性格ややる気の問題と
決めつける前に、
少し立ち止まって見たいところです。
ただ、気づいても声をかけるのは
簡単ではありません。
「大丈夫?」と聞くと、
相手は反射的に
「大丈夫です」と答えるかもしれません。
そんなときは、
事実をもとにした声かけが役立ちます。
「最近、残業が続いているようだけど、
負担が大きくなっていない?」
「このところ、少し疲れているようにみえるけど、
何かできることはある?」
このように、
見えている事実から入ると、
相手も受け止めやすくなります。
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声かけのあとの面談では、
すぐにアドバイスをしようとしなくても
大丈夫です。
まず必要なのは、
状況を理解することです。
何に困っているのか。
いつ頃から負担が増えているのか。
仕事量なのか、人間関係なのか。
体調面の不安があるのか。
本人の話を聞くときには、
「事実」と「感情」を分けて受け止めると、
整理しやすくなります。
たとえば、
「業務量が増えている」は事実に近い情報です。
「もう無理かもしれない」は、
その人のつらさや不安を表す言葉です。
どちらも大切ですが、
混ぜて受け止めてしまうと、
対応があいまいになりやすくなります。
感情には、まず受け止める。
事実には、確認して整理する。
この順番があると、
面談は少し進めやすくなります。
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また、必要に応じて
記録を残すことも大切です。
ただし、記録は
本人を管理するためではありません。
後から状況を確認し、
人事や産業保健スタッフと連携するための
手がかりです。
いつ、どのような変化があったか。
どんな話をしたか。
どのような業務上の配慮を行ったか。
この程度を、
事実中心に簡潔に残しておくとよいでしょう。
一方で、本人の感情や私生活の情報を
必要以上に書き残すことは、
慎重に扱いたいところです。
個人情報に関わる内容は、
関係者だけで共有することが基本です。
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ラインによるケアで忘れてはいけないのが、
業務調整です。
メンタルヘルス対策というと、
声かけや相談対応に目が向きがちです。
けれども、現場で大きな意味を持つのは、
仕事の量や進め方を
見直すことかもしれません。
業務量を一時的に減らす。
難易度の高い仕事を分担する。
締切を調整する。
役割を明確にする。
こうした対応は、
管理職だからこそできるケアです。
もちろん、本人だけを特別扱いすると、
周囲のメンバーに負担感が生まれることもあります。
そのため、チーム全体への説明や、
公平感のバランスも必要です。
大事なのは、
「本人のがんばり」に頼りすぎないことです。
本人が限界まで耐えるのではなく、
仕事の仕組みとして支えられる形を
考えていくことが、
ラインケアの実践につながります。
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管理職自身のストレスにも、
目を向ける必要があります。
部下の不調に気づく。
声をかける。
業務を調整する。
チーム全体のバランスも見る。
これらを一人で抱え込めば、
管理職自身が疲弊してしまいます。
ラインケアは、
管理職だけが背負うものではありません。
人事、産業保健スタッフ、
必要に応じた外部資源とつながりながら、
進めていくものです。
「自分で何とかしなければ」と思いすぎず、
早めに相談することも、
管理職にとって大切な行動です。
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ラインによるケアとは、
メンタル不調を見つけて
診断することではありません。
日々の変化に気づき、
声をかけ、
必要な支援につなぎ、
仕事の進め方を調整することです。
その意味で、管理職は
メンタルの専門家ではなく、
職場のいちばん近くにいる観察者であり、
支援への入口をつくる人です。
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あなたの組織の管理職は、
「メンタルの専門家」ではなく、
「早期に気づき、つなぐ役割」としての
ラインケアを、
どれだけ安心して実行できているでしょうか。
明日からできる
“ひと言の声かけ”を挙げるとしたら、
どのような言葉になりますか。
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次回は、
事業場内保健スタッフによるケアについて
考えていきます。
管理職が一人で抱え込まないためにも、
どのタイミングで専門職につなぐのか。
この視点は、
ラインケアを安心して進めるうえで
大切なポイントになりそうです。


